攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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エアリアルハイパークッションザムライ!?

 次に見えてきた部屋には、一体だけモンスターがいた。一風変わった出で立ちで、なんだろう梱包材とかでありそうな空気が入って膨らんだ透明な袋が人型を形成してる。

 刀のような軽く反った細身の剣を握り、顔だか緩衝材だか分からないような部分がこっちを見てきている気がするね。

 

 これは……このモンスターの特徴は、どこかで聞いたことがあるような気がする。どこだったっけかなあ。

 訝しむ俺をよそに、あっ! とアンジェさんが声を上げた。

 ちょっと嫌そうだ、なんで?

 

「うわー、めんどくさ。エアリアルハイパークッションザムライじゃん。私は倒せるから良いけどとにかくタフなのよねアイツ」

「え、エアリアルハイパークッション……ザムライ? っていうとたしか、模擬戦とかで使うグローブやプロテクターの」

「素材をドロップするやつね。打撃と斬撃を完全無効するって特性を持つヤツでさ、つまり私やランレイみたいなのにとっては割と天敵なのよ」

「わ、私の斬撃脚なんて特に、全然これっぽっちも通らなくてぇ……出くわしたらく、悔しいけど《念動力》でこう、きゅっ! ってやって片付けますぅ」

「怖ぁ……」

 

 初めて見た、アレがエアリアルハイパークッションザムライかあ。竜虎大学で模擬戦した時に初めて知った、なんだかユニークネーミングなモンスターを見据える。

 なんでもこいつがドロップする素材が現状、あらゆる物質のなかでもっとも価値と性能が高い衝撃吸収材なんだっけか。

 

 それゆえ探査者が模擬戦する時に、相手を傷付けたり傷付けられたりしないように装着するグローブやプロテクターなどに用いられているんだとか。

 そんなモンスターだから、斬撃と打撃完全無効というカップルスライムを一つにしたみたいな極端に厄介な性質を持つとのことだった。

 

 まあ、得てしてこの手の特殊耐性持ちモンスターはそれ以外の攻撃には弱いのがセオリーだからね。ランレイさんが《念動力》でキュッとしてるとか言うけど、つまり斬撃や打撃以外なら割とあっさり倒せるんだろう。

 この理屈で言うと、今いるこのパーティメンバーは全員問題なく対応できそうだね。一応確認しておこう。

 

「ええと、てことは……アンジェさんなら《重力操作》あるいは《死神》。葵さんなら《雷魔導》、エリスさんはランレイさん同様《念動力》。そして香苗さんは《光魔導》で俺はまあ割といろいろな手段で、あのエアリアルハイパークッションザムライを倒せるんですね」

「ハッハッハー、そうなるねー。なんならその手のスキルを持たない探査者でも、たとえば油まいて火をつけて焼いて倒すとかはできるよー」

「えっ……あ、そっか別にスキルじゃなくても良いんですね。その発想はありませんでした。おばあちゃんとかだと倒せなさそうだなって前から思ってたので」

「斬撃一辺倒だったからね、マリーは昔から。まあでもあの子だとさすがに剣一本でエアリアルハイパークッションザムライを倒すのは難しいかもねー。強さどうこうでなく、相性的に無理があるんだよねえ」

 

 一応スキルを使って倒せそう、という前提での話をしたんだけれど、エリスさんはさすがの経験値の高さであっさりとスキルに依らない倒し方の例を提示してみせる。

 

 油まいて火をつける。まあ探査者は薄暗いダンジョンを行動する都合上、ランタン持参だったりすることもあるからね。

 そうでなくとも長期探査にもなれば料理等に油を持っていくこともあるし、タバコや葉巻を嗜む方なんかはライターを備えていることもあるだろう。

 

 つまりやり方さえ知っていれば、概ねの探査者は大体対応できなくもないモンスターってわけだ。アンジェさんもこれには目を丸くしている。

 彼女の場合、自身のメイン武器が刀であり、それが尊敬する祖母マリーさん由来のスタイルということもあってどうしても刀で応対したい気持ちはあるんだろう。

 

 とはいえそれはいくらなんでも無理があると、そのマリーさんの先輩であるエリスさんから言われてはどうしようもない。

 ですよねー、と悔しげにしつつも苦笑いする。そんな彼女にニコリと一つ笑って、エリスさんは一人、一歩前に踏み出した。

 

「ハッハッハー。さっきは弟子の素晴らしい成長ぶりを見せてもらったからねー。労う意味でもここからしばらくのモンスター戦はエリスさんが受け持つよ。みんなは少しばかり休憩しながら応援しててねー」

「え。あの、お手伝いしますよエリスさん。俺はそんな疲れてませんし」

「良いから良いから、お姉さんに任せなさいな! ……師匠なりにね、それにロートルとはいえS級なりにね。若い子達に多少とて、印象に残るものがあるなら残したいしさ」

「……分かりました。ご武運を!」

 

 エアリアルハイパークッションザムライのみならず、ここからしばらくは一人で戦闘を受け持つと豪語するエリスさん。

 急な話に思わず声をかけたけれど、どこか透き通った表情と声色に、すぐに俺は彼女を見守ることにした。何か、並々ならぬ想いをそこに見て取ったのだ。

 

 エリス・モリガナ。不老存在にして最強のS級、最強の探査者。

 その人の戦い方は正直、俺としても具に確認しておきたかったところはあるからね。




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