攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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最強のS級。初代聖女エリス・モリガナ

 エリスさんが単独で戦う場面は実のところ、俺はほとんど見たことがない。大体パーティ戦だった上、彼女は割と支援的な立ち位置に専念していた節があるからね。

 けれど話には聞いているし、何より本人から放たれるエネルギーでも分かるのだ。この人はおそらく、現時点においては最強の探査者だと。

 

 そんな彼女はいつものようにナイフを一本、逆手に持って悠々とエアリアルハイパークッションザムライへと歩き出した。まったく隙のない、けれどリラックスした自然体そのものの歩き方だ。

 それを見るなり、アンジェさんなどはさっそく感嘆の声をあげていた。

 

「立ち居振る舞いからしてとんでもないわね……ランレイ、葵。アンタ達にも分かるでしょ?」

「……無論だ、アンジェ。あの歩法はすでにカウンターの構えとして成立している。エアリアルハイパークッションザムライが少しでも動けば、それに対して発動できるような特殊な歩法となっているな」

「ですね。正直、エリスさんは私の前ででもそこまでしっかりと戦う姿を見せませんから、今の姿は新鮮です」

「そうなんだ? まあ、あの人なら大概は片手間でこなせるだろうしね」

 

 ただ歩くだけの姿だけど、三人……それに俺にも香苗さんにもそこに用いられている技術は分かる。エリスさんはすでに、カウンターの体勢に移行している。

 相手の攻撃どころか一挙手一投足。たとえ身動ぎの動作だけでも即座にカウンターできるように研ぎ澄まされているんだ。それも極めて自然に、当たり前の動作でできるように洗練されきっている。

 

 弟子である葵さんの前ですら、こうした姿を見せることは稀だと言うけどそれも理解できる。歩法一つとってもこれでは、弟子の自信を削いでしまいかねないだろう。

 それに言っちゃなんだけど《念動力》で適当にやるだけで彼女の場合、大概のモンスターであれ犯罪者であれ倒してしまえるしね。そのくらい突き抜けた境地にいるのだ、エリス・モリガナという探査者は。

 

「────ッ」

「ハッハッハー、さすがに見抜くねA級探査者ともなると。とはいえ敵もさるもの、こちらを警戒して間合いに入るまで身動ぎ一つしないのは素晴らしいよ。でもね、《念動力》」

「ッ、スキルを。それにあの、ナイフの切っ先から」

「間合い一つとってもこっちのほうが広いんだよね、ハッハッハー。エネルギーブレード!!」

 

 敵に近づき、スキルを使用する。こちらの反応を伺いながらの、どこまでも自然体の動き。

 しかし起きた現象は俺をして不自然と思わしめるものだ。ナイフの切っ先から迸るエネルギーが刀身を形成したのだから。《念動力》によるエネルギーブレード……前から思っていたけど、システム側の想定にはない使用法だ。

 

 本来、あのスキルは自分以外の何かを動かし、敵に攻撃したり障害物や足場にしたり、あるいは盾にしたりする効果だ。超能力のひとつであるサイコキネシスを、スキルによって再現したものと言っても良い。

 それを、可視化できるほどの力場を形成するエネルギーブレードとして扱うなんて。《念動力》の行使の結果としては、あまりにも異様なものと言えるだろう。

 

 加えてあのエネルギーは魂から放たれているもの。本来あそこまで膨大な形で放出して良いものじゃない。

 これは……察するところのあった俺をよそに、エリスさんは形成したエネルギーブレードですかさずエアリアルハイパークッションザムライへと斬り掛かった!

 

「でやあっ!!」

「──ッ!!」

「エアリアルハイパークッションザムライ! 相手取ったことは幾度かあるけど、やり方さえ分かってればなんとでもなるんだよね──! まずは片腕もーらいっ!!」

「早い! それに、う、上手っ……」

「ま、迷いない太刀筋だ。しかも流れるように懐に潜り込んで離脱した……」

 

 アンジェさんとランレイさんという、世界でもトップクラスである探査者コンビが揃って絶句するほどの一撃。

 目にも止まらぬ流麗さで、けれど散歩するかのように飛び込んだエリスさんの斬撃が、斬撃耐性を持つはずのエアリアルハイパークッションザムライの左腕を斬り飛ばしたのだ。

 

 魂の力による耐性無力化! ナチュラルに魂の力を引き出して、エリスさんはこともなげにモンスターの特性を封殺してみせた!

 しかもやはり相当な出力だ。エネルギーブレードも併せ、ここまでの威力だと魂のほうが保たないのが普通だろうに。それでもピンピンしているエリスさんに、やはりかと俺は、私は確信を持つ。

 

 エリス・モリガナ。その不老体質の大元に何があったのか、ある程度の予想を立てることができたのだ。

 以前ヴァールから軽く聞いた、直接原因である78年前の第二次モンスターハザードにおける逸話とも照らし合わせての、限りなく正解に近いだろう仮説だ。

 

「────ッ!!」

「"視えてる"。悪いね、良いとこナシで。でもエリスさんもせっかくならさ、若い子達にカッコいいとこ見せなきゃだから────犯した罪に、等しき罰を!!」

「ァ」

 

 苦し紛れに近くも放たれる、エアリアルハイパークッションザムライの右手からの斬撃。

 それをも、まるで予め分かっていたかのように最低限の動きで回避する。確定だな。ますます自説に確信を深める俺。

 

 そして返す刀、それこそカウンターで振るわれるエネルギーブレード。

 犯した罪に、等しき罰を──エリスさんなりの決め台詞というか、手向けの言葉とともに放たれた大斬撃は、いとも容易くモンスターの脳天から胴体までを断ち切って、光の粒子へと変じさせるのだった。




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