攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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第二次の話は大ダンジョン時代クロニクルにて!(宣伝)

 たとえば今、ここで石を投げるとする。何の変哲もなく、何一つ考えず適当にポイ捨てするとしよう。

 投げた石は当然重力もあって地に落ちるわけだけど、それがどこに落ちるか、跳ねたりするのかってのは今、投げる前のこの時点では分かるわけがないことだ。

 

 それを、仮に投げたとして。そこから5秒後の結果、どう跳ねてどう落ちたかを確認できる──その上で確認した結果を踏まえて今現在の行動を変えることができる。

 方向を変える、強さを変える、狙う位置を変える。あるいはそもそも、投げないことさえできる。

 

「そうすることでエリスさんの主観としては、自身が見た5秒先の未来を改変することができる。そういう超能力なんですね、彼女の未来予知は」

「ハッハッハー、ガッツリ全部言語化してもらえた! いやあ感覚だけでやってきたもんだからなんだかスッキリするね、アハ体験だー」

「ほ、朗らかですがとんでもないですね。未来予知……実質的な未来改変能力とは」

「ちょっと待って頭痛くなってきた。こういうオカルト苦手なのよね……」

 

 エリスさんが持つ、ごく限定的ながらたしかに発現している未来予知能力。その内実を俺の口から説明したところ、香苗さんが唖然としたりアンジェさんが頭を抱えたりとそれはまあ、珍しい反応を拝むこととなった。

 なんなら当のエリスさんなんてのほほんと笑いつつもスッキリした面持ちでいるほどだ。完全にセンスありきで使っていたんだな、これほどまでの超能力を。

 

 実際、彼女は極端なまでの感覚派なんだろう。得体の知れないエネルギーブレードも、あるいは魂の力を引き出しての特性封印も技術として身につけ使いこなしているものの理屈を理解してはいないものと見る。

 いるんだよなあたまに、こういう天才すぎる感性の人……超能力を持ってる時点で大体そうなんだけど、この人はさすがにぶっちぎりすぎてるよ。

 

「未来を先に見てから、現在の行動を変える……そ、それってその、日常的にやれるんですか? い、今もとか?」

「いやいや、さすがにそれはないねークールタイムとかはあるよ、実際。1分間は再度使用できないし、そもそも見た未来を受けて現在の行動を変えるってのも、現実的な話をすると予知一回につき一度きりが限度だからねー」

「そう、なんですか? 師匠」

「そりゃそうだよ、一連の現象を味わってる間にも現実時間は過ぎるんだから。ヴィジョンを見るのこそ一瞬だけど、そこから行動を取ったらそれだけで5秒なんてあっという間。変えた行動の先まではさすがに読めないわけだから、そこから先は正真正銘私にも未知の世界だよ」

 

 肩をすくめて自身の予知能力の制限、使用感を語るエリスさん。これまでの人生でずいぶんと普段使いしてきたんだろう、できることの範囲をきっちり理解して把握しているな、この感じは。

 そう、5秒なんてあっという間だ。主観的なヴィジョンである予知自体は瞬間的なものでも、現実での選択の選び直しをすればその先の結果までも見るなんて余裕はない。

 

 それにクールタイムも一分と短いものの、たしかにあるみたいだし。日常的ならともかくバトルにあっては結構影響が大きいスパンだね、特に近接戦闘の場合なんかだと。

 それでも規格外に便利かつ、強すぎるのがさすがだけれど……エリスさんはそこで、そもそもそんな力に目覚めた経緯から話し始めてくれた。

 

 時は78年前。第二次モンスターハザードの頃合い。

 遡れば不老体質もそこから始まったのだと、彼女は語った。

 

「北欧戦線。第二次モンスターハザードで私はソフィアさんやヴァールさんとともに北ヨーロッパ全土を巡り、能力者解放戦線というテロリスト集団とそれが引き起こした人為スタンピードを解決して回った。そのなかで得たものなんだよ、《不老》も、この未来予知も」

「第二次……歴史の教科書レベルね、もはや。それにランレイのご先祖様も、戦いに参加したっていうし」

「ラウエンさんだね。他にもロナルドくんのお祖母さんのシモーネ・エミールさんや私の妹分、二代目聖女のラウラなんかもいたよ。レベッカさんや妹尾教授、トマスさんも……そのへんはまあ、私の思い出話になるから置いといて。ともかくその戦いでは、なんの因果か敵も予知能力者でさあ」

「未来予知能力者が、第二次モンスターハザードを!?」

「うん。オーヴァ・ビヨンドという占い師上がりがね。ことを起こしたきっかけも予知がどうのって話らしいけど、それはヴァールさんも詳しく教えてくれてないなあ」

 

 知られざる歴史の裏側──今や近代史にも名を刻む七つの大事件、モンスターハザード。その二度目。

 そこにまつわる元凶となったのもまた、エリスさんと同じ未来予知能力者だったという。

 

 ここについてはエリスさんも詳細は知らないようで、すべてを知るのは事実上、ソフィアさんとヴァールだけみたいだ。

 予知能力をきっかけとするからには何かあるんだろうが、一体何を見たんだろうね、そのオーヴァ・ビヨンドって占い師さんは。テロ組織を作って北欧全土にスタンピードを巻き起こすなんて、たとえどんなヴィジョンを見たとて絶対に許されることじゃないけど気になるよ。

 

 

『…………ふん? なるほど、なるほど。どうでもいい話だけれど興味深いよ』

 

 

 不意に、なぜか脳内のアルマさんがつぶやいた。どうでもよさげっちゃよさげなんだけど、反面、ちょっぴりだけ面白がっているふうでもある声色。

 なんだ? なんか引っかかるものでもあったのかな、今の話に。訝しむものを覚えながらも、俺はひとまず次の部屋へと向かいつつエリスさんの話に耳を傾けた。




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