攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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コウヘイ、ベナウィ、トモダチ!

 存分に舌鼓を打った晩餐も終わり、俺たちは男女別れて風呂に入ることにした。この宿の売りの一つでもあるらしい、天然の露天風呂だ。

 酒の入っているベナウィさんと香苗さんはまずいんじゃないの? と思ったものの、二人とも2リットルペットボトルのミネラルウォーターをガブ飲みして、笑顔で素面です! とか言っていた。

 たしかに顔色はすっかり元通りなんだけど、雑すぎるだろ。いくら探査者だからってどういう体してるんだ、この人たち。プロレスラーじゃないんだぞ。

 

 まあ、ベナウィさんは俺が、香苗さんは他の女性陣が付いているので滅多なこともないだろう。サウナだけは絶対厳禁だけどね。

 てなわけでやってきました露天風呂。すっかりタオルのみ、あとはスッポンポンになった俺たちは、まずはしっかり体を清めてから湯船に浸かる。

 

「ぉ……ぉおおぉぉぉぉぉう……」

「ふぅぅぅー……素晴らしいぃぃ……」

 

 熱すぎないけどちょっと熱い、そのくらいの温度の風呂に肩までしっかり入る。めっちゃ気持ち良い。体中から力が抜けるー。

 ベナウィさんもご満悦な感じの様子で、2mほどもある体躯はリラックスして弛緩している。温泉を、気に入ったみたいだった。

 

 俺も、リラックスして露天を見る。夜景を楽しめるようにとの計らいだろう、ライトアップされた自然の姿が、俺の眼前にあった。

 青々と繁る緑に、下流にせせらぎ。都会から少し離れた場所ゆえの、美しい自然の欠片が広がっている。

 ああ、落ち着くなあ……マイナスイオン足りてるー。ベナウィさんが、呟くのを聞き拾う。

 

「グッドルッキング、というやつですねえ。体を温めながら心をも暖める。日本に来るたび温泉には入ってますが、その都度、まさしくリラクゼーション効果を実感しますよ」

「ですね……ベナウィさんは、過去にも日本に?」

「ええ。仕事でも、プライベートでもですね」

 

 なんとなしに尋ねた俺に、彼は紳士的な笑みで答えた。

 空を見上げる。すっかり日も暮れた空に、硝子の欠片を散りばめたように星が煌めく。雲のそんなにない、月の光を受けたイルミネーションが広がる風景。

 穏やかに、ベナウィさんは続ける。

 

「私は、今年で42歳になります。スキルを授かり、探査者になったのが20歳の時なので、22年、この仕事をしてきたことになります」

「ベテランさんですね」

「実情はいつまで経ってもうっかりベナウィ、ですけどね。マリアベール様に付けられたあだ名が、すっかり界隈に轟いてしまいました」

 

 そう、苦笑いを浮かべる。

 うっかり云々って、名付けたのマリーさんかぁ……どおりでなんか、時代劇みたいなネーミングだと思ったよ。あの人にそこまで言わせるとはやっぱりこの人、大分やらかしてるんだろうなぁ。

 

「そういう、不本意でもある名も含めて。積み重ねてきたキャリアにおいて、日本という国は切っても切れない縁で結ばれているように、私には思えるのです」

「縁?」

「ええ。大師匠たるマリアベール様、師匠であるサウダーデさんは二人とも日本贔屓。それを受けてか私も日本が好きですし、これは本当に偶然なのですが……妻も日本人なのですよ」

「あ、そうなんですか」

 

 なんか、意外なようなそうでないような。思えばこの人、出会った時から日本語ペラペラだったもんな。

 家族や師匠筋がみんな、日本に親しみを抱いているのなら、多少なりとも影響を受けるのは当然なのだろう。

 

「そんなわけで、結構この国には訪れているわけです。妻の帰省もあり、観光もあり、ダンジョン探査など仕事もあり……縁がある、というのはそういうわけですね」

「なるほど……これはまた、貴重なお話を伺いまして」

「はは、なんのなんの。こちらこそ気分良く自分語りを聞いていただけて、なんだか嬉しいですよ。ありがとうございます」

 

 笑い合う俺たち。生まれた国とか、年齢とか、立場だって結構違うけど。

 なんだか友だちになれたような、そんな気がした。

 

 かれこれ30分以上も体を温めてから、俺たちは風呂から上がった。気分もサッパリ、体もスッキリだ。

 サウナにもチャレンジしてみようかなーとも思ったのだが、何しろベナウィさんがアルコールを摂取しているから入るわけにはいかない。彼も入りたそうにしていたのだし、どうせなら一緒に体験しようってなもんで、明日に入ることになった。

 

 湯上がり、浴衣に身を包んでロビーにて涼む。人もちらほら、同じように湯上がりのご家族さんや団体さんが見える。

 結構長風呂したつもりなんだけど、まだ香苗さんたち女性陣は来ていない。女の人のお風呂は色々とデリケートゆえ長いと聞くし、もう少しかかるのかもね。

 そう、思っていた矢先だ。

 

「おまたせしました、二人とも」

「あっ、いえ。全然待ってませんよ、おかえりなさい」

 

 噂をすればなんとやら、ちょうど湯上がりの女性陣が帰ってきた。迎えながら内心、香苗さんやリンちゃん、ソフィアさんの姿にちょっとドキドキする。

 上気した頬、ドライヤーで乾かしたとはいえ潤いのある髪艶、はだけていないものの、浴衣の裾から覗く素肌が妙に色っぽい。

 思春期には非常に刺激的なものを、目の当たりにしている気がする。

 

「? どうしました?」

「え、いえ。あー、喉乾いたかなー、と。売店でも行きます?」

「ああ、良いですね。行きましょうか」

 

 浮ついた下手な誤魔化しも、どうにか通じたみたいだ。

 少しばかり跳ねた鼓動を抑えつつ、俺は歩き出した。

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