攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

2045 / 2045
エリスよ、お前もか!

「さて、そろそろ私らも動くかしらね……エリスさんの圧倒的実力を見たらもう止まらないわこのバトルへの疼き、渇望!」

「うん!! ────先ほどからこの身の震えも収まらんのだ、アンジェ!! 偉大なる先達に負けてなるものかと、身体が死闘を求めて止まぬッ!!」

「はっはっはー! なんか師匠の戦いがバーサーカーの眠れる狂気を起こした感ありますけど、どうですか実際そこらへん?」

「ハッハッハー、各人がそれぞれに感じたインプレッションにつき当方はなんら責任を負うものではありませんね、ハイ」

「怖ぁ……」

 

 しばらくエリスさんが実力を示しながらモンスターを蹴散らしていって、ダンジョン探査もさっさと中盤に差し掛かってきた。

 本当に破竹の勢いだもんで、それを見たアンジェさんとランレイさんがバトルジャンキー的な飢えと渇きを叫びだしたのが今である。

 

 闘志満々でバトルを求める美女二人の姿は、美しいとか綺麗とか可愛いとかすべて置き去りにして端的におっかない。

 翻ってはどこまでもいつもの調子な葵さんが問いかけるものの、エリスさんまで明後日の方向を向いて知らぬ存ぜぬを決め込む始末だ。

 でも冷や汗流してるのは見えますよ、ハイ。

 

「ハ、ハッハッハー。なんともはやアンジェさんはこういうとこマリーに似てるし、ランレイさんも遠い記憶ながらラウエンさんみたいだって気はしてきてるよ。そうそう二人ともこんなだったなあ、頭に血が上ると」

「う。お、おばあちゃんが若い頃、血気盛んだったのは知ってますけど」

「ぬうッ! 偉大なる二代目ラウエン様も私同様、血肉湧き踊るバトルに焦がれる星界拳だったのですかッ!?」

「まあ、たしかねー。二人ともバトルにそこまで執着してなかったはずだけど、純粋に自分の力、実力を伸ばして試す機会ってのを欲しているきらいはあったように思うかなー」

 

 アンジェさんのお祖母さんたるマリーさんはもちろん、ランレイさんやリンちゃんの先祖のシェンたるラウエンさんともつながりがあったエリスさんからの評だ。

 きっと間違いなく仰るとおりの傾向はかつてのその二人にはあったんだろう。

 

 バトルジャンキーというよりは、求道者的かな? 自分の手にした力、技術、戦闘力をひたすら高め、伸ばし、そして試してみたいという欲求か。

 バトル漫画の主人公みたいでちょっとカッコいいけど、やはり今のお人好しなおばあちゃんそのものなマリーさんからは想像もつかない姿ではあるよね。

 ふむ、と香苗さんも興味を覚えたのか話に入ってきた。

 

「探査者、というか戦闘者であるならばある程度誰にでも共通する気質でしょうね。マリーさんについては私も、曾祖父や祖父からいくらか聞いています……若い頃はまさに今のアンジェリーナのように、バトルを求め世界中のダンジョンを踏破していたとか」

「はっはっはー! うちのおじいちゃんも何度かポロっと言ってましたねー。曰く"マリアベールの嬢ちゃんは復帰したてでもわしより強くてヤバかった、うははは!! "みたいな!」

「光太郎くんにもそんなこと言われてたんだねえ。たぶん第五次頃の彼女を指してだろうけど。エリーちゃんを妊娠してから子育ての約5年ほど、一時的にでも引退してたしね彼女」

「えぇ……?」

 

 怖ぁ……関係各所から若かりしマリーさんのやべー人情報が聞こえてくる。

 香苗さんのひいおじいさん、すなわち御堂将太さんとかおじいさんの才蔵さんとか。はたまた葵さんのおじいさん、これまた日本の大探査者だった早瀬光太郎さんとかビッグネームばっかりだ。

 

 さすがに祖母のそうした行状を聞かされれば頭も冷えるものか、アンジェさんはいくらか顔を赤くして若干沈静化していく。

 反面、ランレイさんはますます意気軒昂だね。このへんはリンちゃんもたぶん同じ反応をするだろうあたり、シェン一族独特の戦闘民族的価値観が如実に出ているような気はするよ。

 

「ふ、ふふふ……!! 世界にその名轟かせしマリアベール・フランソワさんや二代目シェンにも負けぬ活躍を、今こそここに示さねばなるまい……ッ!! 行くぞアンジェリーナ、そして葵!! もうじき次の部屋だ、モンスターをことごとく鏖殺せしめて見せようぞッ!!」

「え、ええ。頭は冷えたけど身体はやっぱり戦いを求めてるものね。よっしゃあやるわよ、葵ッ!!」

「…………私ですか!? え、何を唐突にバトルジャンキーの仲間入りを果たさせられてるですかね、私!?」

「ハッハッハー、いってらっさーい。エリスさんは公平さんと香苗さんと三人で見学してるねー」

「し、師匠ー!?」

 

 おっと、ここでまさかの葵さんにも流れ弾。

 何やらアンジェさんとランレイさんに両脇を抱えられた彼女が、引きずられるように俺達に先んじて次の部屋へと進んでいく。唖然としつつ助けを求める弟子に、師匠のエリスさんもにこやかにハンカチ振って見送る始末だ。

 

 あれ、二人でバトルとかでなくて葵さんも加わるんだ? たしかに初戦のトリオバトルはなかなかの連携ぶりというか相性の良さというか、葵さんがとにかく素晴らしい連結材になっていたけども。

 香苗さんと二人、顔を見合わせてからエリスさんを見る。やはりハッハッハーと笑って、彼女は明るく告げるのだった。

 

「実のところ、今回の探査でアンジェさんとランレイさんをも連れてきたのはこのためでね。葵を、あの二人に馴染ませたいんだ」

「馴染ませる……ですか?」

「そう。そろそろあの子も、私から独り立ちしていく頃合いだろうしね。私もぼちぼち能力者犯罪捜査官を引退したいし、今回の探査はまあ、次の就職先探しみたいなもんだよ葵の」

「引退、なさるのですか? エリスさんが」

 

 それは突然の宣言だった。

 エリスさんはどうやら、能力者犯罪捜査官としての役職を辞するつもりでいるようなのだ。




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