攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
エリスさん引退と、それに伴う相棒・早瀬葵さんの進退。アンジェさんとランレイさんのコンビに加わり、能力者犯罪捜査官トリオとして活動するようにという、通達。
それを受けて葵さんは、やはり変わらず明るく笑うものの……やっぱりどこか空元気的というか。淋しげな空気はどうしてもあるように思える。
今までずっと、自分のことを教え導き支えてくれた師匠からの独立なんだ、事実上の。俺から見てもまるで姉妹のように仲の良かった二人が、一人と一人になる瞬間。
寂しさを感じないわけもないだろう。それでも彼女は、気丈にもそれをどうにか押し殺しながらも敬礼して指示を受け取ったんだ。
「はっはっはー! 了解しました、ってことでよろしくお願いしますねアンジェさん、ランレイさん!」
「そ、それはまあ良いしよろしくって感じだけど……あ、あんたそんなあっけらかんと。大丈夫なの? 無理すんじゃないわよ、何もこんな時まで明るくしなくたって良いじゃないの」
「じ、じ、実力はもう疑ったりしてないけどぉ……でも、だけど師匠と二人三脚でこれまでやって来たんだよ……? そ、それがこんないきなり解散だなんて、なんか、なんだか」
「まあ、実際こないだ初めて聞かされた時には結構動揺しましたけどね! でも、師匠がそれを望むなら私はそれで良いんです」
朗らかに挨拶する葵さんに、むしろ同情的というか我がことのように気を遣っている様子なのがアンジェさんとランレイさんのお二人だ。
どちらも無論のこと優しくて人情に寄り添える方々だからね。一方的に独立することになったように思える葵さんを、ひどく心配して声をかけている。
それに対して、ちょっと苦笑いしつつも葵さんは答えた。エリスさんへと、師匠へと敬意と感謝、親愛を込めた眼差しを返しつつの言葉だ。
師匠のほうもまた、神妙に耳を傾けながらも……弟子はそして、言葉を紡いだ。
「エリスさんはずっと、本当にずっと長いこと世のため人のために戦ってきました。望まない経緯で不老になって、苦しいことや辛いこともいっぱいあったんだろうにそれでも、本当にずっと」
「葵さん……」
「……そんな人がやっとのんびり休みたいって言ってくれたんです。私みたいな未熟者を、それでも後を託せる後継と信じてくださっている。だから私は大丈夫です。寂しくても不安でも、背伸びしてでもやっていくんです。じゃなきゃこの人、いつまで経ってもゆっくりできないじゃないですか。エリス・モリガナの後継者として、それは認められませんから」
「…………そっ、か。葵、あんた本当に素敵で立派よ。尊敬するわ、心の底から」
永らく、本当に長く戦い続けてきた初代聖女エリス・モリガナ。その偉大なる英雄がようやく平和と平穏に身を落ち着かせる決意を固めた時に、後を継ぐものとして遺された人。
それが自分だと、葵さんは誇りを滲ませて語る。師匠をもう休ませてあげたい、あの人を戦いの時代から解放してあげたい、と。そんな意気込みで。
アンジェさんも認めるとおり、素敵で立派な態度だ。後を受け継ぐ者たらんとする彼女は、俺から見ても素晴らしいと思うよ。
先ほどエリスさんが言っていたように、たしかに葵さんはまだまだ未熟かもしれない。でもそれは言い方を変えればまだまだ伸び代があるということ。
ここから歩む新たなステージのなかでさらなる進化を果たしていければ、きっと……葵さんは今以上にすごい探査者にだって、なってくれるだろう。
思いの丈を聞いて、アンジェさんとランレイさんも迷いなくうなずいた。コンビだったお二人が、新たに仲間を得てトリオになることを認め、受け入れたんだ。
不敵に強気に笑い、握手を差し出して言う。
「葵、そういうことならこれからは一緒に頑張りましょう! あんたはそもそも戦闘以外のところでも私らにはない強みをたくさん持ってるもの、事件の捜査や世界を旅する時にはめちゃくちゃ頼りにするからよろしくね!」
「よ、よ、よろしくお願いします! あ、葵ちゃん……でいいよね? えへへ、あ、新しいお友達!」
「はっはっはー! こちらこそよろしくお願いします! 偉大なる師匠と祖父の名にかけて、きっと仲間に加えたことを損には思わせませんとも!」
ガッチリと三人、手を握り合う友情と仲間のしるし。ここに、能力者犯罪捜査官トリオが結成されたのだ。
すごい組み合わせだ……アンジェさんもランレイさんも元よりA級トップランカー、実力的には申し分なかったものを、そこに葵さんまで加わるんだ。
戦闘力こそお二人にはまだ、及ばない彼女だけれど人間力というのかな。社会性とかコミュニケーション能力は、下手しなくても俺の知り合いのなかでもトップクラスなのが葵さんだ。
ぶっちゃけエリスさんですら、そこにだいぶ頼って支えてもらっていた節があるしね。
等の御本人が、トリオ結成に喜びながらも明かしてくれた。
「ハッハッハー、私の自慢の弟子だよ、よろしくね! ちなみにこの子はコミュ力チートだから、アンジェさんの言うように捜査関係とかコミュニケーション関係でものすごく頼れるよー。ぶっちゃけマリーも、アンジェさんやランレイさんには足りてないこのへんのカバーを欲しがってたから葵を合流させる話になったところもあるし」
「えっ……お、おばあちゃんの差し金なんですか!? しかもそんな、私らの不備を補うような理由!?」
「うんまあ。後で聞いてみるといいけど、なんか"戦うだけが捜査官の仕事だと勘違いしてる節があるから、葵ちゃんの姿を見て猛省すると良いんさねあの孫も。ファファファ! "とかって言ってたよ。相変わらずの憎まれ口だね!」
「怖ぁ……」
「前からですが、孫には厳しい方ですね……」
まさかのきっかけがマリーさん。しかもアンジェさんを事実上名指しで、葵さんの姿を見て反省しなさい的なこと言ってたらしい。
いや、そんな言うほどアレなわけでもないと思うんだけどね、アンジェさん……まあ香苗さんも言うようなあの方、前から孫に対してはかなり厳し目だしこれも愛情ゆえのものなんだろうけども。
とはいえ、葵さんがアンジェさんとランレイさんに不足気味な部分を補えそうだってのは同意だよ。
そういう意味でもこれからのこのトリオは、ますます今後に期待できると言えるだろうね。
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