攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
そんなこんなで俺がサクッとモンスターを蹴散らしたりしつつ、ダンジョン探査も最奥まで到達できた。特に問題なくダンジョンコアを回収してワームホールで入り口付近までショートカット。
最近、俺の空間転移を知る人達からはある意味でこれが一番、値打ちがあるんじゃないかとすら噂されている一番のチート能力だ。まあ言うてリーベやらシャーリヒッタも使えるんだけどね。
「ハッハッハー、やっぱインチキだよねそのワームホール。私もヴァールさんと古い付き合いだから有用性は知ってはいたけど、ことダンジョン探査となるとここまでヤバい性能なのはなかなか思い至らなかったなあ」
「あ、やっぱりヴァールさんも結構、普段遣いされてるんですかこのインチキじみた空間転移」
「普段遣いはさすがにしてないかなあ。モンスターハザードみたいな有事の際、法的に問題にならない範囲でなら多用されていたのは覚えてるけど」
「や、やっぱりそのへん気にするんだ……」
そして誰あろうWSO統括理事たるヴァールも当然、空間転移は使用できて彼女と長い交友関係があるエリスさんもそれをご存知だ。
口振りからしてモンスターハザードの時なんかはよく使って、それ以外の日常シーンでは使うのを控えていたみたいだけど……その判断は正しいよね。
だっていろいろ辻褄合わせできない能力だし。
空間転移系の厄介なところはそこで、立場ある人間が何でもかんでもそれでどうにかした場合、社会的な見地から見て疑念を持たれやすいってのがある。
やろうと思えば遠く離れた海外の土地に一瞬だけお邪魔して、何かしら良からぬことをして人目がつかないままに戻ればそれだけで完全犯罪成立だ。WSO統括理事なんて立場の彼女がそんなことできるなんて、表沙汰にできるわけがない。
だからヴァールは基本的に空間転移の多用をしないでいたんだろう。まあ、それでも空間転移に近い瞬間移動能力があるってのな半ば公然の秘密扱いだったみたいだけどね。
ダンジョンを出る。昼ごろの、頭上天高くから大地を照らす陽の光に目を細めながらも、昔を思い返してエリスさんは続けて語った。
「第二次モンスターハザードとかもね、あの人の空間転移はすごかった覚えがあるよ。敵組織構成員が北欧全土を国を跨いで逃げまくるのを、あの人の空間転移がめちゃくちゃなショートカットを駆使して追い詰めたり」
「ああ……そういう使い方は当然できるでしょうね」
「あとはこの国でも、第三次の時とか。一時期だけにせよ中部地方が敵組織に占領されて封鎖された際にも、空間転移を使って外部との連絡とか普通にできてたみたいだし。いやあ、敵からすると堪ったもんじゃないよねえ」
「…………占領!? え、中部地方、ええっ!?」
「あれ? 日本の歴史の授業とかでは習わないんだ? まあ、この国からすると黒歴史に近いだろうしあまり触れたがらないのも分かるけど」
空間転移がいかに便利か、という話のはずがとんでもない情報をサラッと耳にしてしまい、思わず慄き叫ぶ俺。
いや、占領と封鎖? 敵組織が、この国の中部地方を、一時的にでも? ……全然知らないし習ったこともない。もう半世紀以上も前、75年前にモンスターハザードがあったのは知ってるけど。
それも誰あろう葵さんの祖父、早瀬光太郎さんが御活躍された事件だってことで印象深い程度だ。
そういえば日本の歴史の教科書なんかにも、数行程度の記載でサラッと流されてたな。能力者大戦以後は大体そんなだから、そんなもんかで済ませてたけど。
いやでも占領て。
唖然とする俺に、香苗さんが優しく説明してくれた。
「事実ですよ。日本政府は基本的に触れたがりませんが……特に殊更隠蔽されているわけでもなく、調べればすぐに分かる程度のことではあります。第三次モンスターハザードの際、一年たらずですが中部地方全域が反能力者連合という組織によって占領、封鎖される事件が起きました」
「え、えぇ……?」
「そのへんは私らも知ってるけど、当然ながら完全なもんじゃなくてすぐにWSOによる解放作戦が行われ、各県が順次解放されていったみたいよ。で、その時に葵のおじいさんが大活躍されたって」
「は、は、早瀬光太郎さん! 史上初のクラン"早瀬会"大親分さんの立身出世譚のエピソードだね! 二代目里長のラウエン様も第三次の時には来日して参戦したって、シェンの文献にの、残ってます! まだ子供だった大親分さんとの思い出話とかも、いろいろ!」
マジか。いや隠されてもないあたりアンテナが低い俺のほうが問題ありなんだろうけど、にしてもそんなことがあったのか、この国で……
もうほとんどクーデターとか革命みたいな話じゃないか。WSOによる解放作戦ってことは当然、ヴァールが現地で動いたんだろうけどそこで若い頃の光太郎さんとも共闘したって流れか。
シェンの二代目ラウエンさんも絡んでいたってのもすごい話だ。つまり葵さんとランレイさんは親族がかつての戦友同士だったってことだね。
なんならアンジェさんも言わずもがなだ、マリーさんだし。そう考えるとこのトリオ、なんていうか血族のつながりも強い三人なんだね。
「はっはっはー! あ、普通に見たいですそれ! おじいちゃんってば主に話すモンハザ周りの思い出話が大体、第五次か第七次の時のことばかりでしたし!」
「ハッハッハー、光太郎くんの気持ちわかるわー。エリスさんも第二次の思い出話をしろって言われてもやんわりさわりだけにするよ、だって未熟な駆け出しの頃だし恥ずかしいもんね」
師弟揃って呑気に笑うエリスさんと葵さん、だけど俺としては自分の国の昔のことだ、第三次がどうも気になって仕方ないよ。
もう時間的にはランチタイムだ。この際、みなさんで一緒にお昼ご飯でも食べることとして……その時にもうちょっとだけでもお話、伺いたいかなー。
「大ダンジョン時代クロニクル」
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第二部・第二次モンスターハザード後編─犯した罪に、等しき罰を─
完結しました!第三部は2026の盆から!
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「大ダンジョン時代ヒストリア」100年史編完結!
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