攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
気になる第三次モンスターハザードのお話なんかをする前に、俺達はお腹が減ったもんで早々に全探組への報告を済ませてお昼ごはんを食べることにした。
何やらアンジェさんとランレイさんが行きたい場所があるとかで、じゃあそこに行こうかって話になったのだ。
そこっていうのもズバリ、回転寿司屋さんだ。海外から来日された方あるある、かどうかは知らんけどちょっとしたテーマパークくらいの感覚でいて、お二人ともずいぶん興味があるみたいなのだ。
良いよね、回るタイプのお寿司……俺ちゃんも腹ペコリンだしお寿司は好きだし、お昼からちょっとゴージャスな気はするけどせっかくだからご一緒するぞとウキウキ気分なわけだった。
「歩きだとちょっと遠いけど、まあクールダウンがてらウォーキングも大事でしょ。言っても20分くらいだし」
「まあまあ歩くねー。ハッハッハー、時間的にはちょうど良いけど」
「はっはっはー! 腹拵えってやつですねー。なんやかや、やっぱり仕事とプライベートの運動は質が違う気もしますし」
「あー……なんか分かりますね、それ」
のんびり晴れた商店街を抜けて、少しばかり歩くお昼前。相変わらずとんでもない美女美少女に囲まれて野郎は地味な俺ちゃんだけってな光景だ。
道行く人はまーたハーレム救世主かみたいな目を投げかけてきているのは俺の気のせいだと思いたい。いや思うことにする。思った。
そして駄弁りのなかで不意に葵さんに同意するんだけれど、実際、探査中の戦闘とこうしたウォーキングとか散歩ってのは同じ運動だけどこう、なんか違うんだよね。
そもそもモンスターとのバトルは命懸けだもんで、緊迫度も違えば使う筋肉も違うし。ウォーキングはじめプライベートでの運動も、ガチなら結構大変だろうけど命を張る場面も早々ないし。
なのでクールダウンってアンジェさんの表現はそこそこ的を射ているかもしれない。
というか、当たり前のように探査後即座に飯食いに行くってのも実のところ、一般的には少ないことらしいんだけどね。ランレイさんが呑気な空気に頬を緩ませながら言ってくる。
「て、ていうかぁ……みなさん怪我とかされてないんですよね、今さらながら。割とほら、なんだかんだ軽い怪我くらいはどんな探査にもつきものですしぃ」
「ああ……トップランカーや上位A級クラスになるとそうでもなくなりますが、そこまでにはまだ及んでいない実力の探査者だと、こうして探査後すぐ自由行動というのもあまりない話ではありますね」
「はっはっはー! まあ怪我したならとりあえず病院なり応急手当なりして養生しますしね。そのために全探組施設内に専用の治療室やら、すぐ近くに探査者用の病院も置かれてるわけですし」
「私も今くらいじゃなかった頃は毎度毎回、ケガしまくってその度に病院行ってたわね……なんか懐かしいわ、昔を懐かしむ年でもないでしょうに」
歴戦のA級探査者の方々が語るように、まあそういうことで負傷の手当て問題だ。
普通、ダンジョン探査後の探査者なんてのは割合どこかしら怪我してるからね。治療もなしにそのまま飲み食いに繰り出そうなんてのはさすがにないものね。
軽いものなら全探組施設内に簡易治療室があって、医療従事者の方が常駐してらっしゃるんだけれど……それ以上の重めの負傷になると最寄りの探査者用病院に行ったり、そもそもダンジョンから出た時点で救急車を手配したりもする。
正直、俺はあまり利用したことのないところだ。探査者歴が短いってのもあるけど、それ以上になんというやら、運良く大変な怪我を負うことも少ないし。
「公平さんは一応まだB級ってことで、その手の施設のお世話になってておかしくないんだけど……公平さんだしね、ハッハッハー」
「アンタそもそもS級より強いわけだし怪我なんてするわけないものねえ。それに怪我したって自力で治せたり、なんならリーベに頼めたりするでしょうし。シャルロットの怪我、治したくらいだもの」
「一応、デビュー後しばらくはそのあたりの能力を備えておられませんでしたのでいくらかは利用していましたね。ですが夏頃、邪悪なる思念との決戦後以後は完全に機会がなくなったのも事実です。そもそもまともなダメージを受けなくなりましたし」
「ま、まあ……そう、なりますかねー? さすがに夏以降は……ですねー」
ちょっと気まずい話の流れだ。まあそういうことで、俺ちゃんはいろいろ特殊なため、怪我をすることが少ないししたとて自分でどうこうできちゃうんだよね。
一応、コマンドプロンプトに覚醒するまではほどほどに怪我もあったし多少の世話になったことはある。あるものの、そもそもデフォルトでソロ戦闘10倍バフのバランスブレイカーだ。級に見合う難度のダンジョンだとまともな怪我などするはずもない。
そうこうしているうちに覚醒して、神魔終焉結界を編み出し因果操作まで身につけたらもう終わりだ。ダメージ完全カットな上、仮に負傷しても因果レベルで治療ができてしまう。
崩れた山肌を元に戻したり、手足を切断された人を元通りにできるほどだからね……そんなことできるやつがわざわざ、他の怪我人さんもいるようなところのご厄介になっていいはずがない。
自分でどうこうできるなら自分でするべし、ってなわけですっかり足が遠のいてるのが実情なのだった。
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