攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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日常でいてくれる人達

 少しばかりの梨沙さんと二人きりの時間。だからなんだって話ではあるんだけど、友人達みんなと一緒にいるのとはまた別の心地よさがあるひとときだ。

 落ち着き、リラックスする時間。梨沙さんがなまじ包容力のあるタイプのギャルだもんで、陰キャぼっち気質な山形くんとしてはついつい気分的に甘えちゃいそうになるんだね。

 

「公平くん、最近学校で困ってることとかない? 何でも言ってね、絶対力になるから」

「ありがとう、でも大丈夫だよ梨沙さん……校内だと割と大体梨沙さんやみんながいてくれるから、困ることがあったらすぐに相談できるし。いつも大助かりだよ」

「それなら良いけど……ほら、秋くらいまで公平くん大変だったじゃん、西に東にテロ組織とか悪い犯罪者相手に奔走して。今だから言うけど、私はもちろんクラスのみんなが結構心配してたんだよ」

「えっ。そ、そうなんだ……な、なんかごめん」

 

 怖ぁ……今明かされる衝撃の真実、でもないか。考えてみれば当然のことではあるんだけど、そんな素振りほとんど見なかったから気づかなかった。

 そりゃそうだよねって感じで、クラスメイトが仕事でテロ屋さんと戦ってるってんだもんな。しかも少なからずテレビに映っちゃったりまでしてて、不安がらないはずもない。

 

 第八次モンスターハザード。後の世にはまず確定でこう称されることになるだろう一連の事件だけれども、そんなのに巻き込まれる学友がいたら落ち着かないもんなあ。

 そこまで気が回らなかったことに若干申しわけなさを覚えていると、梨沙さんはそんな俺に微笑みかけてさらに続けて言ってきた。

 

「謝ることじゃないよ、絶対に。公平くんは私達、この国のみんなのために頑張ったんだもん。でもさ、だから私とか涼子達は公平くんに、知っといてほしいなって思いもちょっとあって」

「知っといてって、えーっと何を?」

「学校にも居場所はあるし、待ってる友達がいるよってこと。だから無茶とか無理はしないでねって。たぶん公平くんはこれからも、いろんな人に大事なことで頼りにされるだろうけど……それだけは覚えといてほしいなって、そんなこと」

「梨沙さん……」

 

 真摯な眼差し。心からクラスメイトを、友達を、俺を案じてくれる思いやりにあふれる言葉に、俺は言葉を失う。

 もちろん、学校への意識が薄れたことはない。俺は学生探査者だし、一人の人間として学業は大事だし、何よりこうして友人達とふれあえる日々は楽しいし。

 

 けれど同時に探査者で、しかもシステム領域側のコマンドプロンプトでもあるというややこしい立ち位置なのも事実だ。

 当然、探査者としての日々の仕事だけでなく、何かっちゃ問題があれば身構えなきゃいけない立場なのは正直ある……インターフェイサーの総責任者にもなるからね、今後は。

 どうしたって学業専念とはいかないのが実情だ。

 

 それを、梨沙さんや松田くん、木下さん、片岡くんに遠野さんは心配してくれているんだな。いや、彼らに限らずクラスメイトから校内の少なくない人達、先生のみなさんも含めてか。

 これからもいろんな迷惑組織の相手に駆り出されそうって言われてるも同然なので、そこについてはちょっと俺としてもできれば避けたいですと言いたい気持ちもあるけれど。

 ともあれそうした想いは、本当に嬉しくてありがたいものに思えるよ。

 

「ありがとう、梨沙さん。それにみんな、俺を気遣ってくれるのがすごく嬉しくて温かいよ」

「当然だよ……いつでも頼ってね、いつでも帰ってきてね。疲れたら、御家族の人達だけじゃなくて私達も、私もいるからね」

「うん、分かった。こうしていつも傍にいてくれるだけで、俺は嬉しいよ」

「ん。えへへ、私も! 公平くんと一緒なのが、すごく幸せ」

 

 お互いにお互いを思いやって微笑み合う。それだけでなんだか、通じ合えている実感を抱くことができるから心ってすごいしコミュニケーションって大事だよね。

 久しぶりに落ち着いて話す二人きりは、まるで緊張も何もなく完全に落ち着いた当たり前のものとして俺には感じられて……もう、梨沙さんは本当に俺の日常にいて当然の人なんだなって、そう思えるやりとりだった。

 

 それからも日常のことをあれこれ多少話していると、すぐに松田くん達が戻ってきた。みんな呼び出し機を手に、それぞれ俺達の周囲の席に着く。

 しかし妙だな、遠野さんの姿が見えない。誰より先に行ったはずなのに、なんで一番遅いんだろうか?

 

「あれ、遠野さんは?」

「んん? 俺のだいぶ後ろ、バーガー屋の行列にいるのを見たぞ」

「あれ? フライドチキン屋さんにも俺のすぐ後ろにいたけど」

「えっ? ちゃんぽん屋さんの列に私と並んでたわよ。その後別の店も見てくるって言ってたけど」

「…………えぇ?」

「怖ぁ……」

 

 論理クイズじゃないんだぞ、要は各店を梯子してるんだな遠野さん。

 察するに木下さんとちゃんぽん屋さんにまず並んで、その後に片岡くんの真後ろ付近に並ぶ形でフライドチキン屋さんに行って、最後に松田くんが先に並んでいたバーガー屋さんに行ったんだろう。

 

 いやせめて1軒ずつ買わない!?

 さすがはフードファイターだ、まさかのフードコートで複数店の商品を一気買いとは。発想のスケールが違う。

 戦慄していると向こうから、呼び出し機を三つも四つも手にした食欲の化身の姿が見えて……こればっかりは俺のみならず梨沙さんも松田くんも、木下さんも片岡くんもにわかに震えたよね。

 怖ぁ……




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