攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
「遠野……」
「真知子はさぁ……」
「んんー何その反応? にしても久しぶりだからちょっぴり奮発しちゃった、えへへ! あー待ち遠しいなあ、お腹ペコペコだよー」
「怖ぁ……」
手にいっぱいの、フードコート各店舗の呼び出し機を手にして戻ってきたフードファイター遠野真知子さんに俺達のドン引きというか、戸惑いというか、困惑の視線と声が隠せない。
半月もの外食断ちが彼女をここまで至らしめたのか……普通一箇所ずつにするだろ、途中で食いきれなくなったらどうする気なんだ。
いやまあ、彼女に限ってはこの際そんなことは起きないんだろうし完食しきるんだろうな。それだけの実績を誇るしそのへんについては信頼しかない。
ないんだけどただただ、超次元的なモノを見た気分になってしまうだけだよ。思いついたってやらないからねこればかりは、さすがに。
『非常に合理的で良いじゃないか、何が問題なんだ公平? むしろお前も彼女を見習って今からでも梯子してくるべきなんだよ、仮にもコマンドプロンプトたる者がそんな体たらくで良いとでも思ってるのか』
お前こそコマンドプロンプトをなんだと思ってるんだ。爆食ドカ食い山形くんじゃないんだぞこちとら。
脳内のアルマさんに突っ込むのもそこそこに、改めて遠野さんを見る。まったく問題なく朗らかに満面の笑みを浮かべて腹ペコアピールしてくる彼女に、俺はなんだか圧倒されちゃってるかもしれない。
「ひ、久しぶりだとインパクトあるね公平くん……まあ、学校でもお昼はすごい量のお弁当食べてたけど」
「家で作ったお弁当にコンビニ弁当と菓子パン、授業の間にお菓子もよく食べてるもんね。いやすごいわ……運動量の関係から俺も結構食べるほうだと自認してるけど、遠野さんは桁が違うよ」
「元気で良いと思うぞ、俺は。幸せそうにしてる遠野、見てても楽しいしな」
「え、えへへへ! 片岡くんたら、もーう!!」
梨沙さんも苦笑いだか引き笑いだかしつつ言うように、そもそも遠野さんはこの半月、外食を控えていただけであって食事制限なんてことは1ナノメートルたりともしていない。
むしろ昼ごはんなんて普段より明らかに多かったくらいだ。お母さんの手作りだと言うお弁当、それ自体がおせちかと思うくらいのサイズなのにプラスしてコンビニ弁当とパンまで付け合わせてるんだもんよ。
しかも日中、午前午後の授業間のひとときにはお菓子まで食べ出す始末。マジでよく太らないなと逆に心配になってくるよ、一食抜いたら餓死するんじゃないのか、この子?
さすがに気になる、というか不安になって俺は、呼び出し機が音を鳴らして震えるのを今か今かと待ち構えている遠野さんにおずおずと問いかけた。
「あの、遠野さん? ……すっごい量を毎日食べてるけど、なんか運動とかしてるの? パソコン部に入ってるとは聞いたから、学校ではしてないと思うんだけど」
「んー? んー、夏頃まではしてなかったけど、二学期に入ってからちょっとだけ運動は家でしてるよ。適度な運動はむしろご飯を美味しく食べられるようになる調味料だってお父さんが言ってたし、毎日軽くジョギングとエクササイズに筋トレを1時間くらい」
「なるほど……?」
「あんだけ食って一時間の運動だけでスタイル維持とか、真知子ヤバすぎ……」
良かった、それなりに運動はしてたみたいだ。自分のことでないにしろどこかホッとしてしまう俺ちゃん。
夏休み頃から考えても明らかに食事量、増えてるんだもんな。そもそもの動機がもっと美味しくご飯を食べたい! というのがフードファイターらしい求道心なんだけども、どうあれよく動いてよく食べる分には健康的でよろしいと言えるだろうさ。
これだけのカロリーを一時間の運動で賄えるわけないだろ! という木下さんのぼそっとしたつぶやきにはこの際、内心でうなずくだけに留めておく。女性陣のそのへんの話はデリケートな気がするし、あまり触れないのが吉ね。
と、不意に俺と梨沙さんの手持ちの呼び出し機がピロリロ鳴って震えて光りだした。店側の用意ができたことを告げているんだ。
「お、来た来た。それじゃみんな、お先にー」
「今のうちに聞いとくけど、みんなで一斉に食べる? それか料理があらかた来るまで待っとこっか? どっちでも良いけど一応」
「おう、飯は先に食って良いぞー。足並み揃えてたら二人ってか遠野以外が明らかに冷めちまうしな」
「なんなら真知子のも来た順から冷えていくわよね、最後まで来るのを待ってたら」
「あはは、言えてる! だからみんな気にせず先に食べてねー」
立ち上がり、梨沙さんと二人で受け取りに行く。そのついでに梨沙さんが料理を受け取った後の対応を聞けば、松田くんがあっさりと先に食べて良いよと言ってくれた。
さすがにぜんぶ出揃うのを待ってたら冷めちゃうからね。俺と梨沙さんはそれぞれラーメンとうどんだもんで、多少待ってもほどよく温かいだろうけどあんまり待ちすぎると、それさえ越えて普通に冷めて麺が伸びちゃうし。
誰より多く注文した分、誰より時間がかかるだろう遠野さんも問題なく言ってくれたし、それならこちらはこちらで受け取り次第いただきましょうかね。
笑ってうなずきつつ、席を立ち去る俺と梨沙さんだった。
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