攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
クラスメイト達との楽しいひとときを満喫しつつ過ごすテスト期間。しかしてその間にも俺ちゃんの、探査者およびシステム側としての活動は並行して継続される。
数日後の木曜日、テストも残すところ一日だけとなった12月の上旬のことだ。家に帰った後、俺は前から予定していたイベントに参加すべく支度を整えていた。神魔終焉結界さえ展開しての外出だね。
というのもインターフェイサー内での戦闘訓練だ……現時点で参加が確定しているメンバーを全員集めての、軽い特訓となる。
これには北欧神話の織田さんとこの戦乙女さん、レギンレイヴことイヴさんも参加されるとのことで、実質的に彼女の歓迎と現状把握をも兼ねているよ。
「いやー、ついに待ちかねていたこの日が来たぜ! インターフェイサー全員集合と、そして特訓の日がなァ!」
「シャーリヒッタ、燃えてますねー」
「熱血するのは結構だが、戦闘訓練なのだからお互いやり過ぎないように気をつけたいところだな……」
「うひー、くわばらくわばら。全力の精霊知能ばかりか概念存在、果てはコマンドプロンプト様までとなると余波だけで五体バラバラになりかねません」
「えぇ……?」
そんなわけでミュトスの家にサクッと集合する昼下がり。一緒にやって来たリーベとシャーリヒッタはもちろんヴァールに神奈川さんとステラに、当然ながら家主のミュトスもいる。
精霊知能三姉妹にミュトスはもう手慣れたもんで、完全にいつものノリと言うか。シャーリヒッタだけはこの日を待っていたこともあり燃えてるけども、まあ平常運転の範囲内とは言えた。
問題はこちらだな、と神奈川さんとステラ、そして近くに佇むもう二人を見る。
北欧神話からのゲスト、かつこれからはインターフェイサーの一員としてともに肩を並べる機会の多くなるイヴさんと……そんな彼女の保護者としてなぜか今回、立ち会うことになった最高神。
北欧大神オーディンのアバター、織田である。
「クククク……神奈川千尋に精霊知能ステラ、ですか。人の身ながら精霊知能と融合したことで誕生した、最新にして新境地の精霊知能。さながらあのアレクサンドラ・ ハイネンとは似て非なるものとも言える進化を遂げた、我々にとっても大いに価値ある精霊知能! クククッ! ミュトスともども実に興味深い」
「は、はあ……き、恐縮です、オーディン神さん」
『単なる付き添いがあまり変な欲目をかかないことをお勧めするよ、北欧大神。レギンレイヴの初出動を見守ることにかこつけて私達を観察したいんだろうけど、それゆえにあなたは所詮、この場においては見学者でしかないんだから』
「無論承知していますとも精霊知能ステラ。山形公平とシャーリヒッタ・山形には無理を頼んだ身、であれば分は弁えますとも。クククク」
「怖ぁ……」
露骨に神奈川さんに興味本位と好奇心剥き出しの視線を向ける織田。精霊知能と魂ごと融合したことで自らシステム領域のモノへと成った彼に、どうにも知的欲求が溢れて止まらない様子だ。
まあ、彼の立場からすれば垂涎ものというべきか。人間が精霊知能になれたのならば、概念存在もそうなれる可能性はあるのだという可能性と希望を内包する存在なんだものな、神奈川千尋という精霊知能は。
実際に概念存在から精霊知能に変生したミュトスともども、興味の尽きない観察対象なんだろうさ。
とはいえ、ステラも言うように彼は結局のところ今回は観察者、見学者に過ぎない。
イヴさんが初めてインターフェイサーにおける活動に本格参加なさるってんで、それを名目に自分もいっちょ噛みしたいと言ってきたのを俺とシャーリヒッタがOKしただけだ。
だもんでそこは弁えている彼は一つうなずいた。
代わりに当の御本人、イヴさんがいつも通りのメイド服、いつも通りの優雅な従者スタイルで一礼しつつも挨拶してくる。
「我が偉大なる主神オーディンを差し置いてはなんですが、ここで改めてご挨拶させてくださいませ。北欧神話圏は戦乙女のレギンレイヴです。この度はインターフェイサーの一員として迎え入れていただき恐悦至極に存じます」
「これはご丁寧に、ありがとうございますレギンレイヴさん。改めてインターフェイサーの総責任者、もうご存知でしょうがコマンドプロンプトこと山形公平です。本日はよろしくお願いします」
「よろしくお願いします……お師匠様。あなた様方の真実につきましては、我が主神より案内いただいた創造神様方よりすでにお伺いしております。未だ至らぬ身ではありますが、お師匠様のご指導の下でみなさまの足を引っ張らぬよう努めますれば、何卒、何卒」
「…………い、いやその。お、お師匠様ってのはちょっと、あの。いえ、まあそういう話でしたからアレなんですけど、その」
怖ぁ……すっかり弟子みたいな口振りでいる。白磁の肌、銀に煌めく長髪をシニョンにまとめた可愛い系のメイドさんなイヴさんだけど、なぜだか俺に弟子入り志願してきてるんだよね。
インターフェイサー入りもその絡みというか、意を汲んだ織田が自分のメリットのために利用した結果なのでそこも腹黒いから怖い。
でもそれより何より、そんな経緯からこちらの真実を知ったことでなおのこと前のめりになったっぽいイヴさんこそが俺には怖いよ。
オーディン神から直接聞いたわけじゃなさそうなのは、俺と彼との間で交わした"真実を自分と同格、あるいはそれ以下の格の存在に話すことを禁じる"という誓いに抵触するからだろう。代わりに格上の創造神を引っ張ってきて、そのモノに語らせたんだろうなー。
だからか余計に熱の入った様子のイヴさんだけども、師匠だなんて柄じゃないんだけどなあ、こっちは。
16歳のペーペー探査者が弟子持ちなんて、普通に聞いたらてんで鼻で笑われちゃうだろうし。
仕方ないとは言え、なんだか不思議な成り行きである。
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