攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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修行場あるある:時間がほとんど流れないアレ

 ワームホールを潜れば、すぐに辿り着くその場所は平たく言えば夕陽の荒野だった。いや、厳密には荒野のテクスチャを貼り付けた空間かな。

 間違いなくデータ領域内であることは間違いない……現世領域には常につきまとう決定的な感覚がないからね、そこはさすがに分かるよ。

 

 さっきまで朝っぱらだったので、いきなり夕陽に赤焼けた岩土転がる荒野かよってのはあるけれど。

 今から行うのが戦闘訓練である以上、このくらいのほうがむしろちょうど良いのも事実だろうね。

 

「っし、到着! ようこそインターフェイサー訓練施設にってとこだなァ、今回は見てのとおり荒野の風景だが、使用目的に応じて都度、貼り付けるテクスチャから設置するオブジェクトは変えていくぜェ」

「これは……!! 時間が、流れていない。時間の概念そのものが、この空間には存在していないのですか!」

「うむ、さすがだな最高神。いかにもここは時間領域や空間領域の、さらに上位層にある次元層ゆえ時間という法則も自在に編集して適用している。それらもまたデータの一部ならば、この領域にあっては自在に呼び出し適応が可能なのだ」

 

 織田が驚くのも無理はない。何しろこの空間には決定的なその感覚、すなわち時間の概念とか感覚が根本から存在していないのだから。

 そうとも、ここには時がそもそも存在していない。概念領域や現世領域における絶対的ルールの一つである、時間を司る時間領域よりもさらに上層にある次元層なためこうなっているのだ。

 

 とはいえ、今ここにいる俺達は違和感を覚える程度で済んでいて、ここにもそれなりにギミックはある。

 ざっくり言うと、この場所に流れてる時間と俺達それぞれが認識している時間感覚とで異なるよう、そこもチューニングしているんだ。

 

 このへんややこしいんだけど、時間ってのは認識論的な法則に従うところがあってね。

 今回で言えば主体としてこの場所を認識している俺達は俺達でまた、この場所そのものに設定されてる絶対的な時間概念とは別口に相対的な時間概念を実感するようになっているんだね。

 そこはリーベが今まさに、織田とイヴさん、神奈川さんやミュトスに向けて説明してくれているよ。

 

「誤解のないように言っておくとー、時間概念をまったく適用してないのはこの空間に限ってのことですねー。ここにいる私達それぞれについては、現世社会の尺度にして数万分の一って程度にまで減衰させてますけど一応時間は流れてますー」

「え、えーと? それって、つまり……ステラ?」

『ん、と、つまり……ここでどれだけ過ごそうと、現世や概念領域ではほとんど時間が流れていない、と。そういうことかな、私の千尋』

「む……無茶苦茶です、これがデータ領域……! 概念領域をも凌ぐ、上位層の領域……!!」

 

 話を聞いてもまあ、ちんぷんかんぷんで当然だろう。神奈川さんが思わずパートナーのステラに解説を求めた末、極めてざっくりと分かりやすい答えになるほどとうなずいた。

 まあ、要するにそういうことだ。漫画とか創作でありがちな、この場所ではどれだけ過ごしても現世領域だとほとんど時間経過できてないっていうアレだね。

 

 こんな真似、当然ながら概念領域の神や悪魔であってもなかなかできることじゃない。それゆえにイヴさんはすっかり絶句しているし、織田ですら驚きとともに困惑を顕にしている。

 彼らの視点からするとここまで好き放題にルールから歪める真似をできるのなんて、それこそ創造神クラスだろうからね。

 

「んー、んー、どひーっ意味不明ー! 小難しい話を聞くとお酒が呑みたくなりますので勘弁してつかあさい!」

「えぇ……?」

「ミュトスの立場となればそうなるのも理解するが……何かにつけて酒を引き合いに出さないでもらえるか、マリアベールではあるまいに」

「い、いやあ、てーへーぺーろー。あ、ちなみにこないだそのマリアベールさんとエリスさんを交えて三人で居酒屋で呑みましたよ! あの人達ってば面白いですねえ、ついつい話し込んじゃってお酒もおつまみもカプカプ進んじゃってったら、ウッシシシシ!」

「怖ぁ……」

 

 一方、もはや完全に思考停止して泣きを入れているミュトスちゃん。

 なんでもかんでも二言目には酒の話題に持っていこうとする相変わらずの酒豪ぶりに、どこかの誰かを思い出したヴァールがじっとりした目で彼女を見ているよ。

 

 なんならそのどこかの誰かさんこと、イギリス出身の酒豪代表マリアベール・フランソワさんともこないだ飲みに行ったらしい。なんならエリスさんも一緒だったようだ。

 すごく楽しそうでそれは何よりなんだけど、お酒もおつまみもしこたま飲み食いしたらしいとのことでそこはちょっぴり心配だ。

 何が? 言わずもがなそうだね、肝臓が心配だね。

 

「いやあ、あの人もなかなかの酒飲みさんでして特に日本酒は熱燗をこれがまた美味しそうに味わうこと味わうこと! その時の肴はさかなだけに魚がいっぱいってことで刺身盛り合わせに焼き魚にカルパッチョに寄せ鍋をたんまりいただきましたが、熱燗にビールにハイボールに焼酎に合うこと合うこと!」

「そ、そう……」

「へぇー……ずいぶんたっぷり楽しんだんですねー。肝臓のことをちーっとも考えてなさそうで何よりですー……」

「そうなんですとも! ってどひぇーっ!? り、りりりリーベ大蔵大臣様!?」

「誰がですかー!? いつも言ってるでしょ、お酒はほどほどにーってー!!」

 

 怖ぁ……案の定大蔵大臣、いやリーベ大明神に見咎められて叱られてるよ。

 そうでなくとも御高齢の、しかも肝臓を痛めた過去のあるマリーさんが一緒にしこたま飲んでたっぽいんだ。リーベ的には見逃せないよなあ。




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