攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ステラ、キレた!!

 探査者の登場により、パワーバランスの崩れた現世と概念領域の関係性。

 そこに絡む織田の複雑な心境を聞き入れつつも、夕陽の荒野をバックにイヴさんを交えた戦闘訓練が始まろうとしていた。

 

 戦闘装束に身を包んだ彼女のやる気は万全で、それゆえにシステム側もそれ相応に熱気を纏う者もいる。

 シャーリヒッタなんかはまさしくそうで、今回このイベントを企画した主催者ということもありいつもよりテンションが高めだよ。

 

「おうおう、気合い入れてて良いねェ! っつーわけでこっちも、まずは誰から行くかだが……まあ神奈川だろうかな、ここはよ!」

「えっ……俺ですか!」

「いやまあ、別にオレでもミュトスでもリーベでもヴァールでも良いんだけどよ。あー、実力的に一番近いのがお前さんだってことからそうしたいと思うぜ」

「イヴイヴちゃんの実力を測るにしてもー、より近しい強さ同士のほうが傍から見ててやりやすいですからねー」

「な、なるほど……光栄です、頑張ります」

 

 そんなシャーリヒッタに、加えてリーベがイヴさんの初戦相手に選んだのが神奈川さん。本人も驚いているようだけど、当のイヴさんも意外そうにかすかに目を丸くしている。

 実力的に近い者同士で戦うほうが、その人の実力を計測しやすい──そういう理屈からのチョイスらしいけど、さすがにこれは少しイヴさんに対して悪い気がしないでもない。

 

 明確に、神奈川さん以外だとまともに戦えば勝負にもならないって言っちゃってるようなものだ。実際、それはそうとしか言えないところはあるにしても直球すぎではないだろうか。

 戦乙女って気位高そうなイメージあるし、織田も含めて反応がおっかないなあ。

 

 神奈川さんのほうは素直というか、精霊知能ゆえにそのへんの事情も詳しいからなんの気なしに受け入れてやる気を見せてくれているけどもだ。

 北欧さんにはもう少しフォローを入れたほうがいいかもしれない。ってことで俺は、お二人に声をかけさせてもらった。

 

「あのー、織田もイヴさんも誤解しないでもらいたいんだけど。あくまで実力を測るにあたって一番適した相手ってことで神奈川さんを選んだみたいだから、そこに他意はないからね? そこんとこよろしくね?」

「うん? ああ、お気遣いさせてしまいましたか。すみません、ありがたく頂戴しますがご心配はいりませんよ。私はもちろんシステム領域たるあなた方の力を多少とて知っていますので異論はないですし、レギンレイヴについても……」

「わ、私も……この場に参加するにあたり我が主神オーディンより直接ご説明いただきました。その際に身に沁みて教え込まれております。精霊知能というモノ、システム領域に住まうモノの性能、実力そして恐ろしさを」

「クククク、ご覧の通り。万一にもあなた方をわずかにでも侮ることがあってはそれこそ北欧の名折れですのでね。きっちりと事前教育は施しましたとも」

「怖ぁ……」

 

 意味深に笑うダンディ中年アバターのオーディン神が怖い! そしてイヴさんの、神奈川さんにさえ向ける畏怖の視線からも本気で事前教育とやらが行われたことは明白だと悟る。

 どんな教育だかは知らないけど、少なくともシステム領域を舐めるようなことはまずないみたいだ。

 

 別にそこまでしなくても良い気はしたけれど、まあ北欧さんとこのメンツ問題だというのならそこは俺が差し出口するところじゃないしな。

 隣でヴァールも呆れたふうというか、若干マジかこいつ……みたいな目で織田を見ている。彼女からしてもかなり苛烈な発想に思えたんだろう。

 

 さておき、誤解がなければそれで良いか。俺達が見守るなか、イヴさんと神奈川さんが距離を空けて向き直る。

 すでに戦闘態勢万全の戦乙女レギンレイヴ。対する精霊知能神奈川千尋/ステラもまた、己の持つ唯一にして世界に無二のスキルを発動。戦闘態勢へと移行した。

 

「よし……やるぞ、ステラ! 《星明かりの聖剣》!!」

『うん、私の千尋! 星明かりよ、聖剣の担い手をここに導け!』

「ッ!! こ、これがスキルの発動!?」

「《星明かりの聖剣》……話に聞く異世界の聖剣ですか。概念存在に対する特攻効果を持つそうですが、なるほど」

 

 ステラと融合したことで獲得した、聖剣の担い手としての実力をフルに発揮するスキル、《星明かりの聖剣》。

 それをもって顕現した鞘付きの大剣を軽々と手に取り振り回し、神奈川さんは静かに構えた。背後には彼を護るようにステラも控えている。

 

 俺の目から見ても相当なエネルギーの奔流だ。しかもその力の大半が、対概念存在用に向けられているのだからイヴさんも織田もさすがに反応しているね。

 特に織田は、すでにあの聖剣が異世界たる災海世界からの遺物だと知っているがゆえ……案の定、知的好奇心を剥き出しにしているよ。

 純粋に力の発露に反応しているイヴさんを一顧だにせず、彼はひたすら神奈川さんに着目していた。

 

「実に素晴らしい! 権能殺しの聖剣とやら、アレほどの力が込められているのならばなるほど、謳い文句程度のことはあるでしょう!」

「そ、そう……」

「そしてそれを自在に操る、精霊知能へと至りし人間。神奈川千尋……彼もまた素晴らしい。只人のままであれば、なんとしても北欧に取り込みたかったほどに。それこそ財、名誉、地位、なんなら絶世の美姫を星の数ほどあてがってでも欲しい逸材ですよ」

「えぇ……?」

 

 人材マニアか何かかな? 神奈川さんをそこまで評価してくれるのは嬉しいけれど、シンプルにスカウト手段が欲望を満たす方向性なの生々しくて怖ぁ……

 そしてそんな織田に、ステラが地味に闇色の視線を向けているのも怖いよ。

 そうだよね、女あてがうとか言われたら君はそう反応するしかないよね!




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