攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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本番に強いタイプの戦乙女

 攻撃部分を神奈川さんが、防御部分をステラがそれぞれ意識を割くことで成立する、二人で一つの精霊知能としての戦闘スタイル。

 事実上、イヴさんからすると二対一を強いられている戦いだ。実際に矛を交えるのは神奈川さん一人だけとは言え、プレッシャーも相応にあるだろう。

 

 しかし、それでも彼女は戦乙女。北欧神話の主神オーディンに付き従い、えーっとなんだっけ英雄とか誘う感じのなんかこう、すごい存在だ。

 正直そのへんはあまりよく分かってないからあれなんだけども、とにかく最高神付きの概念存在なんだから、当然この程度で怯むわけもないのだ。

 

「パス・オブ・ヘヴン/エレメンタル!!」

「熱量放射──!? ならば受けて立ちましょう、ヴァルキリアレギオニス・ニヴルヘイム!! せあああああっ!!」

『!? え、エレメンタルを、振り回した槍の勢いで逸らした!?』

「マジ、かよ……!?」

「えぇ……?」

 

 放たれるビーム、パス・オブ・ヘヴン/エレメンタル。神奈川さんがイヴさんと距離を置く形で後退した際に放った、聖剣からの遠距離攻撃だ。

 攻撃と牽制、そして退避を同時にこなす会心の一手のように思われたのだが……イヴさんはそれを、あえて真っ向から受けた。

 

 手にした長槍を、手首のスナップを効かせて回転させる。すさまじい速さで、残像含めまるで彼女の前方に展開されたシールドのようにさえ見える。

 それをもってエレメンタルを受け止めた刹那。彼女は槍持つ腕を思い切り振り払い、中空へとビームを逸らし散らしてみせたのだ。

 神業のような技巧。神奈川さんやステラはもちろん、俺も、精霊知能達も驚いているよ。

 

「おいおい……! すげぇことしやがったぜレギンレイヴ、アレ!」

「ワタシから見ても、かなりの威力だったろうあのビームをああして逸らしてみせるか。神奈川の戦闘力がまだまだ未熟としても、聖剣の威力自体は折り紙付きだろうによくやる」

「な、なんかアニメみたいでしたねー。ブワーって振り回して、ガキーンって吹き飛ばしてー!」

「あ、でもなんかさすがに顔をしかめてはいますねえ。神奈川さんも驚き桃の木山椒の木ってなもんで隙ができましたが、対するイヴさんも疲労困憊聴牌乾杯ってなもんで追撃できなさそうですよう」

 

 すごいな、精霊知能をして諸手挙げての賞賛だ。神奈川さん自身の技量や戦闘力はともかく、聖剣の威力自体は据え置きゆえに相当なものだったのを抑え込んだんだ。当然の評価ではある。

 受け止め、逸らす。あのビーム相手に真正面からそれができるのは相当な自信あってのことだろうし、事実成し遂げた以上はイヴさんの技量が相当高度だと認めないわけにもいかない。

 

 惜しむらくはそれでも反動がキツイようで、イヴさんも神奈川さんに追撃できないでいることくらいかな。

 反面、神奈川さんは即座に態勢を整えているので素の実力はやはり彼のほうが上か。それを加味しても、俺の予想を超える腕前だ。

 

 織田め、これでよくC級探査者程度だって言ったな。ジットリと北欧大神を見る。

 しかしてそこには、俺同様に目を丸くして意外そうな織田の姿があった。

 

「織田?」

「ふむ……ああいえ、失礼。思いの外、健闘していることについ驚きを。あのタイミングであのような踏み込みができると、私も思っていませんでした」

「そうなのか? インターフェイサー加入に向けて、あなたが手ずから鍛えたって話だけど」

「たしかにそうですが、その時よりも格段に強いですよ。判断力と気合、気力に覚悟が漲っているあの姿は、訓練において見られなかったものです。なるほど、土壇場でなければ真価を発揮できないタイプでしたか」

「あ、ああー。いるよねそういう、本番に強いタイプ。イヴさんがそれかあ」

 

 今回にあたってイヴさんを、インターフェイサーに加えるのにあたって最低限恥ずかしくないように。そういう想いから織田がしばらく鍛え上げていたらしいのは小耳に挟んでいる。

 だからこそあえて過小評価してみせて、俺を驚かせるつもりだったのかなーとか訝しんだんだけど……どうやら彼にとっても今のイヴさんの対応は、予想を超えるものだったみたいだ。

 

 そうして訥々語る、イヴさんの戦士としてのタイプ。それがどうも訓練ではさておき、本番ともなると精神的な面での気合が入ることでポテンシャルを十全に引き出せるという、いわゆる"本番に強いタイプ"らしい。

 人間でもいるんだけど、彼女もどうやらその類なんだな。織田が指導していた時に比べても、心理的な意気込みとそこから来る踏み込みの強さが段違いなんだとか。

 

「驚かされたけど、こっちは仕切り直せるぜイヴさん!! 覚悟ぉっ!!」

「っ──負けられません、こうも容易くッ!! 偉大なる主神オーディンに仕えし私は誇り高き概念存在ヴァルキリー! かの大神より直接ご指導賜りながらこのまま負けて、どうして戦乙女たり得るものかあっ!!」

「パス・オブ・ヘヴン!! 非殺傷だが当たりゃ痛えぞ!!」

「ヴァルキリアレギオニス・ムスペルヘイムッ!! 我が天槍よ、炎を纏いて聖なる剣を迎え撃てッ!!」

 

 多少驚きを見せたものの、やはり仕切り直して斬りかかる神奈川さん。それに対しても一歩も退くことなく吼えるイヴさんの、激情からその意気込みの理由が垣間見えた。

 すべてはオーディンへの忠誠。まともに応対できずやられっぱなしで終わっては、自分どころか偉大なる最高神の威光をも汚しかねないという、ある種の瀬戸際ゆえの必死さ。

 

 まして今回にあたって彼から修行までつけられたのだ、決して無様は晒せない────そういう、まさしく覚悟の表れ。

 それゆえに彼女は、またしても放たれたパス・オブ・ヘヴンの斬撃にあえて突撃した。

 権能による炎を纏った長槍を突き出し、聖剣が届くより先に神奈川さんの胴体を突き抜こうとしたんだ!




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