攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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燃える天槍打ち払い、輝き示せ《星明かりの聖剣》!

 つまるところ、本番にめちゃくちゃ強いタイプだったと言えるだろう。

 手ずから鍛え直した織田ですら驚くほどの底力を見せたイヴさんの、槍が炎を纒って神奈川さんへと突き出されていた。

 

 聖剣技パス・オブ・ヘヴンの斬撃とは、明らかにリーチの差で有利なカウンターだ。

 槍は剣にも増してリーチがあるから、こうした技の撃ち合いの時にはとりあえず有利になるのが強いよね。

 

「はああああああっ!! 戦乙女の、技をここに見せるっ!!」

『千尋ッ!!』

「分かってる! 今の俺には、こういうやり方もできるんだよっ!!」

「何!?」

 

 そのままだと斬撃より先に刺突で返り討ちにされる状況。しかし神奈川さんとステラに迷いも恐れもなく、ただ丁々発止の声をあげて動いてみせる。

 パス・オブ・ヘヴンの斬撃の軌道をわずかに変えた……踏み込みを緩め、イヴさん本人でなく炎の槍を狙ったのだ。

 

 身体機能においては、精霊知能たる彼のほうが格段に強い。未だ低いながらも、レベルによる強化補正が加わればなおのことだ。

 まっすぐ伸びる突きの一撃が横合いから薙ぎ払われる。攻撃より防御を優先した、そう取れる動きだがもちろん違う。

 

 神奈川さんの手札はそこまで少ないわけでなく、また戦闘時に取れる手段は何でも取るタイプでもある!

 

「聖剣の、真の光を今────!」

「…………ッ!? ば、抜刀した! 鞘付き!?」

「なんと! 聖剣のイメージとずいぶんかけ離れた武骨さだと思っていたが、よもや納刀状態だったか神奈川千尋!」

『そうだよ最高神! ここからが千尋の、千尋と私の真なる《星明かりの聖剣》ッ!!』

 

 イヴさんも織田も、こればかりは純粋に驚いた様子を見せた。彼らはタイミング的にここで初めて聖剣の正体を知ることになったわけだしそりゃあ驚くよな。

 星明かりの聖剣。一見して武骨で大柄な、斬るというより叩きつける使い方のほうが似合いそうな形をしているが……実のところそれは納刀状態にすぎない。今振るわれているあの姿は、鞘に納まったままの戦闘形態なんだ。

 

 槍を打ち払った、と同時に鞘側にある取っ手を掴み抜剣する。聖剣の、真の姿が眩い光とともに抜き払われる。

 同時に今度こそ神奈川さんが踏み込んだ。槍使いにとって致命的な弱点に近しい、至近距離まで一気に距離を詰めたんだ。ひきつるイヴさんの顔。

 槍を盛大に打ち払われて間もなくの接近に、そして聖剣の予期せぬギミックに気を取られすぎた。対応できない!

 

「し、ま────っ」

「これで終いだ! パス・オブ・ヘヴン/ダブル・アップ!!」

「っ、うああああああっ!?」

 

 そして姿を見せた、本身の聖剣。やはりまばゆく輝き光を放つ真なる聖剣が、イヴさんに返す刀の刃を立てた。

 大斬撃。鞘で敵の動きを止めてからの、息もつかせぬ抜剣およびパス・オブ・ヘヴンの二度打ち──ダブル・アップがクリーンヒットしたんだ。

 

 とはいえ戦闘訓練用に非殺傷モードでの一撃だ、実際には傷一つないままに吹き飛ばすだけ吹き飛ばした形になる。怪我もまるでありはしないだろう。

 けれどそれは、裏を返せば非殺傷にしていなければ危うかったということに他ならない。荒野に天高く舞い、そして地に落ちるイヴさん。

 誰の目にも勝負は明らかだった。神奈川さんの勝利だ。

 

「がっ!? …………あ、ぎ……ま、参り、ました」

「っ──ふ、ぅう。あ、ありがとうございました。さすがは概念存在だぜ、ダブル・アップまで使わなきゃ危なかった」

『お疲れ様、私の千尋……リーベさん、レギンレイヴと千尋の救護をお願いできますか』

「はいはいはーい! 二人ともよく頑張りましたー! えいっ《医療光粉》ーっ!!」

 

 敗北を受け入れ、悔しげにつぶやいたイヴさんへ、神奈川さんも敬意を払いつつも勝利の感触を味わう。

 ステラがリーベに治癒を頼むなか、俺と織田はお互いに顔を見合わせて今しがたの戦いについて言葉を交わす。

 

 良い戦いだったと思う。特にイヴさんの戦闘力が思いの外、高くてそこが嬉しい誤算だった。

 織田も、厳しめに評価していたのを覆された形になるため興味深いと笑っている。精神性から来る底力の発露を、よもやイヴさんがこの戦闘訓練で見せつけてくるとは思っていなかったんだろうね。

 

「いやはや、面白いものを見れました。レギンレイヴの予想外の敢闘もそうですし、神奈川千尋の《星明かりの聖剣》の機能もそうです。クククク、実に興味深い」

「イヴさんには悪いけど、今の神奈川さん相手にあそこまで食い下がれるとも思ってなかったから驚いたよ。というか、モチベーションであそこまでポテンシャルを引き出せるタイプなのが予想外だった」

「ええ、そこは私もです。大体その手のタイプは直情的に多いのですが……レギンレイヴ、意外に激情を秘めていたのですね。インターフェイサーに我らが北欧の威を示すことに、これほど意欲があったとは」

「オーディン神、そして北欧神話圏に対する忠誠と矜持。さすが戦乙女ってだけはあるよ。インターフェイサー加入にあたって、彼女は壮絶な覚悟を背負ってやって来たんだな」

 

 俺も織田も、イヴさんはクールで淡々と実力を発揮するタイプだと思っていた。安定して力を引き出すゆえにその分、爆発力には欠けるタイプだと。

 それが蓋を開けてみれば、彼女はクールな素振りと裏腹に熱い忠義とプライドを秘めた激情型の戦士だったのだ。そのギャップは神奈川さんにもあったんだろう、突然の爆発力に当初、明らかに困惑していたからね。

 

 これもインターフェイサーに入るにあたって、敬愛するオーディン神や名代ともなる北欧神話の沽券を損なわせないための覚悟によるものか。

 いずれにせよ驚くべき健闘ぶりだったよ。




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