攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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レギンレイヴ─忠誠篤き戦乙女の激情に賞賛を─

 概念存在、戦乙女レギンレイヴことイヴさんの実力が一旦ここで明らかになった。

 俺や織田でさえ驚かされた、まさかの激情型……モチベーションとテンションによって秘めたる力を引き出すタイプの戦士だったことが、まずは興味を引くところだね。

 

 漫画とか創作だと主人公にありがちなタイプなんだけど、実際のところやる気次第で戦闘力が大きく上下するなんてことは、少なくとも探査者界隈ではあまり見かけない気がする。

 もちろん、そういう探査者もいなくはないだろうけどね。ただ戦闘行為が探査業という形で、結局お仕事としてルーティン化してる御時世だからどうしても日々のテンションが一定化するところはある。

 

 毎度毎回モンスターとの戦いで、やれ世界の危機だ! 命を守るぞ!! とかテンションマックスで戦える人もなかなかいないのだ。

 そういえばGWでの探査者ツアー中、そんなタイプの超熱血探査者が一人いたことを思い出しつつ俺はイヴさんを見た。

 神奈川さん相手に予想外の健闘をしてみせた彼女に、精霊知能達が次々と労いの声をかけているね。

 

「お疲れ様だぜ、レギンレイヴ! 予想以上に神奈川とまともにやりあえててすごかったんだぜ! さすがは戦乙女ってやつなんだぜ!!」

「うむ……特にパス・オブ・ヘヴン/エレメンタルのビームを防いでみせたのはワタシとしても驚かされたな。ああした槍技は、戦乙女の流派のようなものなのだろうか」

「あ、ありがとうございます。ええ、私の扱う槍技はみな、戦乙女が北欧大神の矛と盾たるべしと磨き続ける天槍技。先ほどの熱放射線もどうにかいなせましたが、しかしあれが限界でした。直後に身動きが取れなくなった時点で、私の敗北は決まりきっていましたね」

「それでもだ。神奈川千尋のあの聖剣に、あそこまで対応できたことをまずは誇るべきだろう。期待以上の敢闘に敬意を、戦乙女レギンレイヴ」

 

 まずは何より今しがたの戦いぶりについて、シャーリヒッタとヴァールが讃える。本当に、精霊知能相手によくあそこまで互角に渡り合えたもんだよ。

 ヴァールなんかは殊更、聖剣ビームを咄嗟に受け流した技量に着目しているね。もっとも当の本人はあの時点で負けが決まったようなものだと自嘲しているけど、たとえそうだとしてもあれをあの形で応対できたことは十分にすごいことだよ。

 

 しかもその後、トドメに走った神奈川さんに対しても真っ向から踏み込んだからね。

 エレメンタルを受け流したことによる硬直、特大の隙を晒してなおいささかも衰えることのなかった闘争心。それもまた見事なものだった。

 

『レギンレイヴ……最後のあの踏み込み、凄まじい気迫だったね。もちろん私の千尋も負けてなかったけど、あの一撃はもしかしたら負けかねないかもって一瞬、ヒヤッとしたかも』

「ステラの言うとおりだ、ゾッとしたぜイヴさん。確実に行けると思って向かったら、まさかそこから技を出してくるなんてなあ」

「あれは……無我夢中でした。とにかく無様な敗北は晒せない、たとえ死んでも一矢報いねばオーディン神にお仕えする値打ちがないと、そう確信しておりましたので。ええ、まさに死に物狂いでした」

「極端ですねー。意外と熱血さんなイヴイヴちゃんに、リーベちゃん結構ビックリですー」

 

 絶好の隙を見逃さず、即座に攻撃に移行した神奈川さんの判断は見事だったし間違っていなかった。

 だけどそこからまさかの気合で硬直を解いてカウンターを試みるイヴさんのほうが今回、度肝を抜いた印象はある。

 

 予想外のタイミングでのカウンター狙いほど怖いものはないからね、実際。

 相手が自分よりリーチの長い槍だったこともあって、神奈川さん的にはあの最後の一撃はさぞかし背筋が凍る動きだったろう。

 

 それを成さしめたのが、他ならぬ織田……オーディン神への忠誠と戦乙女としての矜持、北欧神話圏そのものへの想いからってのも驚きだ。

 もちろんそれは素晴らしいんだけど、まさか想い一つで肉体的な硬直さえ無理矢理解き放つなんてなかなか考えられない話だ。ましてや戦闘訓練なのに。

 あの時のイヴさんは、明確に精神力で肉体的な現象を凌駕していたんだものな。

 

「そこまで忠誠を誓える最高神さんってのもすごいですねえ。私だったらさすがにそこまでは無理無理無理茶漬けでしたかもです。まあ、私のとこの最高神さんがアレだったのでアレがコレソレドレがアレってなもんですが」

「えぇ……?」

「ミュトスのなかの最高神のイメージについては、以前あれこれ伺いましたのでさておき。レギンレイヴに限らず戦乙女とは忠誠の強い個体が多いですからね。とはいえ、レギンレイヴがあそこまでの激情を発露してみせるとは、まさか思っていませんでしたが」

 

 そして相変わらず、魔天世界の最高神を引き合いに出しているミュトスちゃん。

 彼女からすると最高神のイメージが基本、ド鬼畜ブラック上司みたいなものらしいから忠誠とか言われてもピンと来ないのは理解したい。

 

 まあ、織田曰く戦乙女ってのがそもそも忠義に厚い概念存在らしいからね。イヴさんも例に漏れずってことだったんだろう。

 まさかその忠義ひとつであそこまで食い下がるとも思っていなかったみたいだけどね。まあそれは俺も同じか。




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