攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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二人の精霊知能vsシステム・コマンドプロンプト

 さておき、見事な戦いぶりを経て初めての戦闘訓練は終わった。本来ならここで、今しがたの戦闘についての意見や感想を言い合う段階だろう。

 とはいえ、素晴らしい模擬戦を見せてもらったってことで正味なところ、今度はこっちも軽く運動したくなってきたところはある。

 

「うーん、どうしようか。一旦全員誰かしらと戦ってみて、そこからまとめて意見交換と行こうかな」

「あっ! じゃ、じゃあオレは父様と戦いたいです! せっかくの機会だ、直接ご指導いただきたいんだぜ!!」

「ふむ? ……ではワタシも加わろう。シャーリヒッタを低く見積もるわけではないが、おそらく単独ではまったく勝負どころか模擬戦の体すら成さんだろう。せめてもの加勢にな」

「えぇ……?」

 

 怖ぁ……ヴァールとシャーリヒッタも似たような感じらしくて、俺達三人で軽く訓練しようかって話になったのは良いんだけども。

 なんか異常に高く見積もられているというか、さすがに模擬戦の体裁になるように調整くらいするよ。まあ、シャーリヒッタとヴァールのコンビは正直見てみたいところはあるため、渡りに船だから良いんだけどね。

 

 まあともかく、不肖ながら俺ちゃんメインにヴァール、シャーリヒッタが戦うこととなった。

 これもなかなか新鮮な体験だね……精霊知能を相手にするなんて、ミュトスの力試し以外だと割とお初かな、これが。

 

「すげえ組み合わせだな、これは……山形さんとヴァールさん、シャーリヒッタさんが手合わせなんて。これもインターフェイサーならではの光景か」

『だね、千尋……模擬戦とは言え間違いなく世界最強クラスの、ぶつかり合いだよ』

「どひぇー……! 数的には不利でも、どうしたってコマンドプロンプト様のほうが圧倒的強さなんですよねこれ、確実に。はてさてどうなるやらぁ」

「思えば山形公平の戦いぶりを間近で見るのも初めてですかね? クククク、実に興味深いですよ」

 

 外野の面々がそれぞれ反応するのも軽く横見つつ、俺達はいよいよ模擬戦の開始あたって構えた。

 その隣ではリーベとイヴさんも、固唾を呑んでこちらを見守っている。まあないと思うけど怪我人が出た場合にはまた、リーベの《医療光粉》に頼ることになるだろう。

 

 ていうか織田の言うように、たしかに北欧神話勢の目の前で戦うのはこれが初めてだったかな。概念存在と敵対したことは多少あれど、肩を並べてって場面もなかなかなかったしね。

 なんだ、こんな程度か──なんて思われない程度には頑張ろうかね。俺個人が侮られても構いはしないが、模擬戦に付き合ってくれるヴァールやシャーリヒッタを舐められるのは良くないし、ね。

 

「よし。じゃあ俺vsヴァールとシャーリヒッタって形で行こうか。よろしくお願いします、二人とも」

「こちらこそよろしくお願いします、コマンドプロンプト──《鎖法》」

「父様の胸をお借りするなんて燃えてくるぜ、これぞまさしく胸熱なんだぜ──《鎌術》!!」

「ニュアンス違くない? ──《風さえ吹かない荒野を行くよ》、しっかり発動してくれているな。一人だもんな、こっちは」

 

 見学組とは少し離れたところで、荒野に佇み相対する俺と精霊知能二人。ヴァールもシャーリヒッタもやる気満々で鎖と鎌を取り出してきているのを見て、俺もスキルを発動させた。

 単なるバフである、俺のファーストスキル《風さえ吹かない荒野を行くよ》だ。

 

 ソロ戦闘時限定でだが、全能力を10倍にするというアドミニストレータ用スキルは当然今回もその威を発揮している。

 おまけに神魔終焉結界ももちろん展開済みだ。これなら百戦錬磨のWSO統括理事に最強の精霊知能が相手でも早々、当たり負けなどしないさ。

 

「ッ! あ、改めて対峙するとすさまじいな。これまでの100年でそれなりにいろいろな強敵や難局を乗り越えてきた自負はあるが、それらがまとめて束になったとて目の前の方の威容には及ぶまい」

「へ、へへへブルっちまうぜェ!! 《風さえ吹かない荒野を行くよ》がなくてもただでさえ至高の御方なのによ、このプレッシャーときたら! そんでもきっちり役目は果たすぜ、妹よ」

「ワタシは妹ではない、どちらかといえば姉だが……! 任せろ、こんなことで腰が引けるような我々ではないはずだ!」

「えぇ……? いやそんなに?」

 

 こっちこそ胸を借りるつもりで行くよーって感じなんだけども、思ったより俺の出力が高かったのかちょっと引き気味になってしまっている二人。

 まあ、これでも一応コマンドプロンプトだからね。精霊知能よりは素の出力が上のところにドドーンと10倍バフとなれば多少、プレッシャーに感じるところはあるのかもしれない。

 

 むしろそれでなお戦意を維持して構えるのがさすがだ。俺も二人相手に気を抜くつもりは毛頭なく、静かに徒手空拳のまま静かに観察する。

 さて、どうやるか……というか、向こうがどう来るか、だな。シャーリヒッタにしろヴァールにしろ、手札はそれなりに豊富だし。

 

「さて……先手は譲る、好きなように来てくれ。二人のコンビネーション、見せてもらうよ」

「っしゃあっ!! ヴァール!」

「鉄鎖乱舞っ!! 山形公平、我が鉄鎖を受けてもらう!」

 

 語りかければすぐに反応、シャーリヒッタが構えてヴァールが鎖を放つ。これまでに幾度となく見てきた、《鎖法》による技か。

 無数の鎖がすさまじい速度で飛来して来るのはかなりの迫力だ。しかも鎖に意気を込めている──魂の力まで込めた、本気で全力の攻撃だな。

 

 しかして避けず、俺は鉄鎖をそのままあえて受けた。手足に絡みつく鉄鎖。視界もほとんど鋼鉄に塗れて、わずかな隙間から相手方が見えるばかり。

 身動きが取れない。ヴァール、やはり初手は動きを封じに来たな。これも毎度ながらの彼女の戦術だ。

 

「!? なんのつも──」

「ちょっとした確認だよ。俺の膂力で……どこまでやれるかなっ!!」

「っ、うああっ!?」

「ヴァールっ!?」

 

 まさか回避も防御もせずそのまま受けるとも思ってなかったんだな。無数の鎖が視界を防ぐ、その間隙の向こうにてヴァールが無表情のまま、微かに目を見開き驚くのが見えた。

 

 だが甘い! 敵の動きを封じるからには、それが叶わなければ逆にやり込められるということだ!

 俺は全身に漲る力を込めて、巻きついた鉄鎖ごとヴァールの小柄な身体を無理矢理引っ張り、振り回してみせた!




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