攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
鉄鎖に巻き取られた俺の手足、身体。それをそのままにヴァールごと振り回す。言うまでもなく力任せの超パワープレイだ。
避けることもできたし防御もできた。なんなら迫りくる鎖をまとめて叩き落とすことだって。けれど、あえて俺はこうした膂力による強行突破を選んだのだ。
それはなぜか。まあ、身も蓋もないことを言えばある種の好奇心だ。
言わずとしれたWSO統括理事、そして100年戦い続けた永遠の探査者少女。そのヴァールのメインスキルたる《鎖法》の、効果と威力をこの身体で体感しておきたかったんだよね、前から!
「いつも頼りにしてるヴァールの鉄鎖、その威力を直接確認しておきたかったのもあれば────こういう対処をできるのかもたしかめたかったしな!」
「く、ううっ!? な、んという力……!!」
「さすがにこういう返しをしてくるの、過去に早々いなかったんじゃないか!? ヴァールッ!!」
「ヴァール! ちいい、デストロイパレード・エレメンタルスライサー!!」
それなりの重量がある鉄鎖を、軽々扱うヴァールはさすがだがこの手の返され方は過去、あまり体験してこなかったみたいだな。明らかに未知の反撃に面食らい、戸惑っているのが見える。
精霊知能の受肉体として、十分な身体能力を備えている彼女が扱う鉄鎖なんだ。そんじょそこいらのテロリストや犯罪者、はたまたモンスター相手にだって早々当たり負けはしてこなかったろう……こう言うのもなんだが、俺を同列に考えないでもらいたいものだな!
両腕に絡みつく鉄鎖ごと、ヴァールを右に左に吹き飛ばす。ダメージを考えれば荒野の岩肌にぶつけるのも有りなんだけど、それはシャーリヒッタが許さなかった。
《鎌術》による遠距離攻撃、デストロイパレード・エレメンタルスライサーだ。無数のビーム円刃が飛来して、俺の周囲を縦横無尽に飛び交う。
不規則な軌道のそれらが、鉄鎖さえ切り裂きながらも徐々に俺へと襲い迫る!
「ヴァール! 一旦《鎖法》を解けェ! 分かってたこったろーが、父様相手に通り一遍のやり方してっとこうなっちまうんだよ!!」
「くっ!? 鉄鎖、パージ! ……ワタシとしたことが、一瞬のことで完全に意気を呑まれた。まさか、ここまで強硬な手段で鉄鎖乱舞を突破するとは……!」
「オレも驚いたぜ……! だがよ父様、こっからはオレのターンだぜ!!」
「みたいだな……っ!」
同時にヴァールへ声をかけ、我に返らせているシャーリヒッタ。良い気付けだ、魂の圧も駆使して落ち着かせたんだな。
《鎖法》を一時解除させたことで、俺に巻き付いていた鉄鎖は雲散霧消する。だが当然エレメンタルスライサーは健在で、いよいよその回転ノコギリめいた光刃を俺へと差し向けているな。
こちらもこちらで試しておきたかった。最強の精霊知能シャーリヒッタ、その力がどれほどのものかを。
出力は既に最大のようだ。《異分子処断権限》……現世や概念領域への絶対権限は俺には関係ないものの、付随する戦闘能力バフが彼女を後押ししている。
相手にとって不足なし、としておこうか!
俺は《あまねく世界の明日のために》による山形くんビームを放ち、エレメンタルスライサーへと対応した!
「山形くんビームソード! さて、綱引きの次はチャンバラごっこだな!」
「っ!? エレメンタルスライサーまで、容易く落とされるかよ!?」
「数が多いし、シューティングってのも良いかな──拡散山形くんビーム!!」
右手からはソード状のビームを形成してエレメンタルスライサーをまとめて切り裂く。さらには左手からは放射状に拡散するようにビームを放射する。
自由自在に加工可能なこのビーム、威力も当然折り紙付きだ! 極限倍率でなくとも10倍バフもある、対処するには十分だな。
瞬く間に数を減らしていくエレメンタルスライサー。こちらも先の鉄鎖同様、まともに受けたとてダメージは早々なかったろうが見た目がもう痛そうだしね。受ける前に対処させてもらうよ。
カトンボを落とすようにサクサク処理する俺に、シャーリヒッタは次々と追加のエレメンタルスライサーを出していく。しばらくは、ヴァールが態勢を整えるまではこれで時間を稼ぐつもりか?
当の本人、ヴァールが立ち上がり、畏怖を隠さず俺を見ているのを視認する。
「今しがたの鉄鎖へのアレを綱引き呼ばわりか……! まったく、認識がまだまだ甘かったようだな、ワタシも!」
「だがまだやれんだろォ? このまま終わっちゃ、オレらまとめて良い笑いものなんだぜ!」
「分かっているさ……! 不甲斐ない姿を晒しては、ワタシばかりかソフィアや彼女以前のアドミニストレータ達まで低く見られかねん! たとえコマンドプロンプト相手とてそれは、それだけは断じて認められるものかッ!!」
「オレだって粛清担当が、こんな程度でへこたれてちゃいられねェんだぜッ!! こっからが本番だ、行くぜヴァール!!」
「任せろ! ここに、我が罪業の鎖の本領を示す!!」
鉄鎖を逆手に取られたことへのショックもそこそこに、しかしそれ以上に闘志を燃やしている。
自分の振る舞いに、かつてのアドミニストレータ達の沽券まで関わっているのだと叫びながら。
さすがにそこは、決して低く見たりはしないんだけどね。そも、今のやりとりだって鉄鎖乱舞は見事な技だった。
あえて受けてみせたけどその威力はすさまじいものだし、100年の年季の籠もった良い技だったよ。不甲斐ないだなんて誰が思うものか。
シャーリヒッタも己の役職を交えて気炎を吐いている。二人とも真面目な子だからな、私を前に醜態を晒せないと考えていてくれるのだろう。
再度鎖と鎌を構える二人。俺もエレメンタルスライサーを片付け終えて、これでウォーミングアップは終わった。今度こそ十全な形での連係を取ってくるだろう彼女らを待つ。
さあ来い、精霊知能達。
お前達のありとあらゆるすべてを受け止め、そして言祝ぎながらもそれを凌駕してみせよう!
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第二部・第二次モンスターハザード後編─犯した罪に、等しき罰を─
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