攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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しれっと冷静に外野の反応まで確かめる主人公。やはりラスボスでは?

 普段から、俺こと山形公平の戦闘スタイルのなかに脚技、いわゆる蹴り系の動きは基本的に一切取り入れられていない。

 これは意図的なことだ。コマンドプロンプトに覚醒する前、アドミニストレータでしかなかった頃に得たスキルの効果が、俺から足を用いての攻撃を封印させていたのだ。

 

 《救いを求める魂よ、光と共に風は来た》。素手でモンスターを倒した際、その魂を確定で浄化し輪廻へ向かわせるモンスター特効効果を備えるスキルだ。

 これがあるため俺は称号効果で武器の使用を事実上禁じられ、また徒手空拳以外の戦法を取ることが相対的に効率が悪い状態へと至ったのである。

 

 その関係からある種必然的に、俺は蹴りを用いない徒手空拳あるいはプロレス技スタイルを身につけた。もっと言うとコマンドプロンプトに覚醒して、ある程度そのへんの縛りを無視できるようになった今でも変わらない。

 培ってきたスタイルを変える必要性もなかったもんだから、ここに至るまで蹴り技なんてのはそもそも使ってこなかったわけだね。

 

「そもそも脚技も、まあ外にいる時は靴なんて履いちゃうわけで、そいつが武器判定されちゃってるもんでなあ。だから必然的に脚技なんてのを使う機会はなかったんだよ、これが」

「せ……星界拳だと……山形公平が、まさかあの流派を」

「無論、見様見真似だけどな! ヴァール、隙だらけだぞ!」

「ッ!?」

 

 ぼやきながらも鉄鎖を断ち切る脚。ヴァールにとってはまさしく驚天動地だろう。自分とも縁深い星界拳を、こともあろうに俺がいきなり使用してみせたんだもんな。

 ぶっちゃけこんな機会でもなければ俺だって使うことになるとも思ってなかった。

 

 リンちゃんやランレイさんの動きから一応模倣できるくらいには習得していたわけだけど、先述のとおり俺のスタイルには明らかに適していない動きや技なわけで、披露する機会なんてあるはずもなかったのだ。

 それを今回こうして実戦レベルで使ってみせたのは……ひとえにヴァールの予測演算に、確実に例外事項であろう因子を仕込んで動揺させることを狙ってのものだ。

 ほんのコンマ数秒だけだが大きく隙を晒した彼女に、荒野を強く踏みしめて飛び込み距離を詰める。

 

「しまっ──鉄鎖防壁ッ!!」

「前から思ってたけどその《鎖法》。距離を詰められるとちょっとしんどいよな。明らかにレンジが中距離から長距離だから無理もないけど、そら。この状態で何をどうする……っと!?」

「エクスターミネートォッ!! ヴァールにゃ近づかせねェ!」

 

 瞬間移動に近い速度で接近した俺に、咄嗟に鉄鎖で防備を固めようとするヴァールだが間に合うまい。鉄鎖は射程が長い分、密接されるとできることが限られてくるな。

 おそらくは体術にも多少心得はあり、それをもってカバーもしてくるだろうが、その前に沈めさせてもらう!

 

 すかさずダブルアームの体勢に入るべく、その両腕を取って引き込もうとした、その矢先だ。鋭い戦意が伝わってきて、俺は即座に大きく退いた。

 途端に元いた場所に奔る斬撃、シャーリヒッタが間に合ったのだ。ヴァールと俺を分断し、彼女を護りつつ反撃可能な距離をも確保したんだな。

 やるなあ!

 

「ちいっ、シャーリヒッタ!」

「エレメンタルスライサーッ!! お互い距離も良い、こっからが本番だぜェッ!!」

「鉄鎖乱舞! ギルティチェイン・インピーチメントッ!! 手数の多さで攻め立てるッ!!」

「ヴァールもか! コンビネーションも本格的だなぁ!」

 

 微かに怯む俺を逃さず、無数のスライサーを形成して追い立ててくるシャーリヒッタ。

 自身も鎌にて斬撃を仕掛けて突進してきており、ここにきていよいよ全力突撃って感じだな。

 

 しかも後ろからは即座に態勢を整え直したヴァールが、右手からギルティチェインと左手から鉄鎖を、それぞれ無数に放ちこれまた俺の退路を遮る。

 シャーリヒッタに俺への道筋を示しつつ、俺自身には回避先を狭める包囲網……荒野がまるで鎖の園だ、全力だとここまで展開できるのか、あの鎖。

 

「め、目まぐるしすぎてついていけない……!? わ、我が偉大なる主オーディン神よ、御身におかれましてはいかがでしょうか!」

「攻防の全容程度は見えている。だがすさまじいな、これがシステム領域の戦闘とは……! 我々概念存在では、おそらく初手のシャーリヒッタやヴァールの攻撃の時点で詰められているだろう。それをいとも容易く突破し今もまだ余裕だろう山形公平も含め、あまりに次元が違うな」

「織田は見えているのか、ここまでのことをある程度。さすがだな……」

 

 着実に迫るシャーリヒッタとヴァールの攻撃、しかし聞こえてきた外野のイヴさん、および織田の主従のやりとりに俺は少しばかり興味を引かれて反応した。

 戦乙女とはいえやはりイヴさんにはこのあたりの攻防はまだついていけないようだけど、織田は多少でもついてこれているみたいなんだな。

 

 オーディン神ったら戦神と聞くし、やっぱり最高神のしかも戦闘系の概念存在ともなるとそのくらいはできるようだ。

 おそらく創造神ともなるとそれ以上だろう。副産物的ではあるけど、今回の戦いで概念存在側の戦闘面でのラインをある程度割り出せた形になる。

 

 これはこれで収穫だな。

 そんなことを考えながらも、さておき俺は目の前の状況を打破すべく動いた。




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