攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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決着、真っ向勝負の果てに!

 冷静に、眼前に迫る脅威を見る。

 シャーリヒッタのエクスターミネートとヴァールのギルティチェイン・インピーチメント、いずれもまともな存在なら人であれモンスターであれ概念存在であれひとたまりもない威力に見える。

 視界も周囲全面的にほぼほぼ鎖で覆われており逃げ場もなく、唯一確保されている道筋からは極大エネルギーを放つ鎌の斬撃が襲いくる始末だ。

 

 うん、やっぱりこの二人の組み合わせはこれが一番理に叶っているな。ヴァールが足止めと牽制、および補助を行いシャーリヒッタがそれに乗っかり攻撃に全振りする連携。

 どう凌ごうか考える、までもなく俺はあえて一歩前に出た。何でもありならそりゃいくらでもやりようはあるけどこれは模擬戦、さすがに因果操作だの世界停止だのするのはあまりに前提を無視しているからね。

 

「となれば結局、真っ向勝負──真正面から相対するしかないってことだな、シャーリヒッタ!」

「父様! コマンドプロンプトッ!! オレの全力、受け取ってくれェェェッ!!」

「どれだけあなたが演算しようが、この条件下では取れる手段も限られる! 未来予知の封じ方だ……未来を見たとて変えられない現実をここに示す!」

「ヴァールもさすがだな! そうだ! 取れる選択肢がなければそもそも未来など、どれだけ見たとて変えられない!!」

 

 全力の咆哮で鎌を振りかぶるシャーリヒッタ、そして鉄鎖を繰り出し俺の現実を固定化させるヴァール。いずれも現状、取り得る手段のなかでは最適解に近いんじゃないかな。

 未来を見られる演算能力。まあ便利は便利なんだがしょせんは予測でしかないからね。取れる行動の幅が狭ければ当然観測できる未来も少ない。

 

 たしか第二次モンスターハザードの折、エリスさんとともにヴァールは未来予知能力者を相手取って戦ったんだったな。ええとオーヴァ・ビヨンドだっけ。

 その時に未来予知対策について、それなりに練り込んできたのが今活きているのかもしれない。このへんの積み重ねは、私にさえないヴァールだけの素晴らしい財宝であり強みだろうな。

 

 だがしかし。俺はいよいよエクスターミネートを迎え撃つ。

 光さえ放ち軌跡を遺す速度の斬撃に、今度は力任せに殴りつけることはせず刃の部分に手をかけた。まともにやると手をも切断されかねない、危険極まる行為。

 ────そして満身の力を込めて指先の力で掴み、俺は体勢を入れ替えた!

 鎌を持ったまま身を翻して、背負い投げのような動きでシャーリヒッタの懐に背中から突っ込んだんだ。

 

「うおおっ!? ンだこの動き!?」

「人間の動きさ……! 誰よりも努力と修練を積み重ねた偉大なる格闘家の、ほんの上っ面だけだが技術の一欠片だ」

「──鎌から離れろシャーリヒッタ!! それはサウダーデの!」

「遅いっ! でぁああああああっ!!」

 

 密着する身体。意味不明な動作ででも懐に入られたことに驚愕するシャーリヒッタの、動きが微かに止まった。

 このへん、格上相手の戦闘経験の浅さが滲み出ているな……今この場にて彼女のすることは、もはや一も二も無く引き下がり俺から離れることだけだろうに。

 

 気づいたヴァールが叫ぶももう遅い。そうともこれは、俺が信じるこの世で一番の近接格闘者の技法、その断片。

 修めたとか模倣したとか、そんな烏滸がましいことは決して言えないがそれでも見様見真似でも放てるくらいにはしておいた、彼の動きだ。

 

 サウダーデ・風間!

 《格闘術マスタリー》を身につけるほどに多種多様な流派を体得した彼の、技を上辺だけでも今、真似る!

 瞬間的に爆発的な踏み込みをもって、シャーリヒッタの胴体に背中から体当りする。骨に護られていない、やわらかな部分への衝撃に息が漏れるのを刹那、俺はたしかに至近距離から耳にした。

 

「カハッ────!? が、く、ぅ」

「今から鎌を放したとてな。腕はもう取ってる……せいっ!!」

「あぐぁっ!?」

 

 物理的痛みとショックにより、鎌を持つ手が緩んだ。ヴァールの叫びを聞いてのこともあるだろうが、いずれにしてももう遅い。

 俺も掴んでいた刃を手放し、すぐに彼女の細腕を取る。そしてそこから背負い投げだ! 腰を落として、そこを軸にシャーリヒッタを前方へと投げ下ろす!

 

 綺麗な縦の円の動きで勢いよく、荒野に叩きつけられる背中。高レベルの探査者かつ精霊知能だ、こんな程度で損傷はしないがやはり衝撃は内部に突き抜けている。

 それなりの痛みに顔を歪める、シャーリヒッタの腕をさらに引き寄せて身体ごとホールドする。後ろから胴体部を抱え込み、そのまま背後に投げ飛ばせる体勢に至ったのだ。

 

 いわゆる水車落とし。あるいはバックドロップでもいい。

 とにかくさらなる投げ技への移行に足る、十分な体勢に至ったわけだね。

 ここまでだ。俺はシャーリヒッタに話しかけた。

 

「……こんなもんだな。これ以上は止めとこう、さすがに」

「くっ……はぁ、ふう。ですね父様、さすがにここまでやられてまだ足掻けるわけねェです。へへ、父様に初めて投げ飛ばされちまいました」

「もちろん全力じゃなかったけど大丈夫か? あとでリーベに思いっきり治癒してもらうといい。頑張ったな、シャーリヒッタ。すごく強かったぞ」

「えへへ! 父様に褒めてもらえて嬉しいぜ!」

 

 ニッコリと、頬を赤らめて笑う彼女は戦闘直後とは思えないほどに嬉しそうで楽しそうだ。決してバトルジャンキーとかではなかろうが、まあ親子間の軽いスキンシップくらいの感覚なのかね?

 ともあれシャーリヒッタのほうはこれで終わりだ。今の体勢をもって仕留めた扱いとし、その場で座り込んどいてもらう。

 

 さて。残るはヴァールだ。

 とはいえシャーリヒッタがやられたのを確認した時点で、ヴァールも戦意を霧散させて肩をすくめているけどね。




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