攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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双方、得るものの大きかった戦い

「降参だ、コマンドプロンプト。さすがにこれ以上、無駄な足掻きは見苦しい」

「そうか? 俺が言うのもなんだけど、シャーリヒッタにしろヴァールにしろ想像以上に強くて驚かされたんだけどな」

「驚かされた、止まりだろう? それで虎の子のギルティチェインを粉砕され、シャーリヒッタとの連携も真っ向から潰され、あまつさえ返り討ちに遭ってはどうしようもない。こちらの負けだ、完膚なくな」

 

 シャーリヒッタを下してすぐ、相対した俺とヴァールだが……決着は静かに、彼女の降伏という形で迎えることもなった。

 《鎖法》を解き、両手を挙げて降参の意を示す。どこかやりきった感も漂う、やれるだけのことはやったのだという爽快さのある雰囲気だ。

 

 まあ、それなりに好き放題やらせた上で返り討ちにしてきたからな。シャーリヒッタにしろヴァールにしろ、その実力を俺としては見たかったもんだから基本受け身に回っていたところはある。

 彼女らももちろんそこは理解していて、だからこそ今、シャーリヒッタを倒して一人きりになったこの段階にあってはどうしたところで勝てないと悟ったのだろう。

 仮に戦闘を続けたとして、どうなるものでもないと分かりきってるからね。

 

「自分で言うのもなんだが、シャーリヒッタとの連携は非常にやりやすいものだった。うむ……戦闘スタイルが真逆ゆえにひどく噛み合う場面が多々あったな」

「それ、オレも感じたんだぜ! お互い苦手距離への対策も人並み以上に備えてるけど、やっぱ本領を発揮できる間合いでやりてェもんな! それがヴァールとだとお互い食い合うことなかったから、まあやりやすいのなんのって!」

「加えてヴァール、お前の後方支援が的確だったのも大きいと思うよ。シャーリヒッタほどの実力者なんてフォローやサポートも大変だろうに、難なくやってみせてさ」

「それはこちらの台詞だろう。舐めていたわけではないが小手調べのつもりで放った鉄鎖が、そのまま致命打になりかねないとは思わなかった……そこを助けてくれたシャーリヒッタはやはり、戦闘力面では最強の精霊知能なのだと認めるしかない」

 

 戦闘終了の気配が漂い始めた、俺も《風さえ吹かない荒野を行くよ》を解いてシャーリヒッタに手を貸して立たせてやる。

 そして近づいてきたヴァールと三人、軽く感想なんかを言い合うんだけど……やはりシャーリヒッタとヴァール、讃え合うだけはあるように連携がすごくよくできていたよね。

 

 そも、精霊知能の演算能力がある時点で可能な限り理想的な形での連係は確定でできるものなんだけど、この二人は特に戦法の噛み合い方が尋常じゃなく良い分、余計に相乗効果で互いの力を高め合っていたと思う。

 近距離のシャーリヒッタ、遠距離のヴァール。どちらも苦手距離への対応策は備えているんだけど、本来のメインレンジがそのへんだからね。コンビネーションするのも実にやりやすい土壌があったわけだ、元から。

 

「二人から、あるいは周囲から見ると一貫して俺が圧倒していたように見えるだろうけど……最後あたりの鉄鎖で退路を塞ぎつつ鎌で斬り掛かってくるコンボは正直唸ったよ。シンプルだけど強力無比だなーって」

「そこはさすがに、な……あなたが相手でなければほぼほぼ、アレで倒せるだろう威力と流れ、範囲だったろうからな。とはいえ、体術一つで覆されたのも事実だが」

「サウダーデさんの技がああいう場面、とにかく強いからなあ。俺の猿真似でもあれだけ効果があるんだから、御本人の技はどれだけのものだろうって使う度に慄くよ」

「父様がすげェのは当然の理だけど、父様がそこまで仰るサウダーデもまた、すげェやつなんだぜェ」

「その前の、フェイリンから模倣したのだろう星界拳もみごとだった。アレで完全にワタシの演算の、前提を根底から覆されたわけだからな」

 

 俺からも二人を讃えつつ、しかしやはり俺に関しては俺自身よりも賞賛すべき人がいるだろう。今回技を使わせてもらったリンちゃんと、サウダーデさんのお二人だね。

 模擬戦にあっては因果操作はさすがに無法ってことで、だったら肉弾戦やなって考えて使うことは前から想定していたんだけど、みごとにヴァールの鉄鎖を星界拳にて砕き、シャーリヒッタの斬撃を合気と中国拳法にて返り討ちにできたよ。

 

 つくづく人間の体術、技術ってものの凄さを思い知らされるよね……なんと言ってもあのお二人ほどの武技でさえ、今後まだまだ発展の余地があるんだ。

 それは当人だけでなく、受け継がれていく流派や血統、文化伝統のなかでさらに磨かれていく。時間が経つほどに、系譜や命脈をつなげていくほどに技はさらなる進化を遂げていくのだ。

 どこまでも高みを目指して。個人の強さを追求する果てに、全体の底上げにすらつながっていくある種の奇跡的な軌跡。

 

「ワタシはある程度近接格闘術も習得しているが、シャーリヒッタもそのあたりを多少身につけてみてもいいかもしれんな。今でもシンプルなスペックですべてを圧倒できるのだが、伸ばせる余地があるならば伸ばしておいても損はなかろう」

「だな。それにさっきみてェな場面でも、オレのほうに心得がありゃあもうちょい打てる手はあったかもしれねェ。ったく、大いに得るところの多い模擬戦だったぜ!」

「俺も、やっぱりコンビネーションとか連係面は意識していきたいよなあ……割となんでもできる分、味方のサポートやフォローで良い動きができるようになるともっと誰かの助けになれると思うし」

 

 各々、教訓を多く授かる模擬戦だったと思う。それはこうして新たな課題とか意欲を見出だせていることからも明らかだ。

 これだけでも十分以上に収穫がある。想定以上に値打ちのあるイベントになってくれてると思うよ、今回の模擬戦は。




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