攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

2088 / 2088
双方、得るものの大きかった戦い

「降参だ、コマンドプロンプト。さすがにこれ以上、無駄な足掻きは見苦しい」

「そうか? 俺が言うのもなんだけど、シャーリヒッタにしろヴァールにしろ想像以上に強くて驚かされたんだけどな」

「驚かされた、止まりだろう? それで虎の子のギルティチェインを粉砕され、シャーリヒッタとの連携も真っ向から潰され、あまつさえ返り討ちに遭ってはどうしようもない。こちらの負けだ、完膚なくな」

 

 シャーリヒッタを下してすぐ、相対した俺とヴァールだが……決着は静かに、彼女の降伏という形で迎えることもなった。

 《鎖法》を解き、両手を挙げて降参の意を示す。どこかやりきった感も漂う、やれるだけのことはやったのだという爽快さのある雰囲気だ。

 

 まあ、それなりに好き放題やらせた上で返り討ちにしてきたからな。シャーリヒッタにしろヴァールにしろ、その実力を俺としては見たかったもんだから基本受け身に回っていたところはある。

 彼女らももちろんそこは理解していて、だからこそ今、シャーリヒッタを倒して一人きりになったこの段階にあってはどうしたところで勝てないと悟ったのだろう。

 仮に戦闘を続けたとして、どうなるものでもないと分かりきってるからね。

 

「自分で言うのもなんだが、シャーリヒッタとの連携は非常にやりやすいものだった。うむ……戦闘スタイルが真逆ゆえにひどく噛み合う場面が多々あったな」

「それ、オレも感じたんだぜ! お互い苦手距離への対策も人並み以上に備えてるけど、やっぱ本領を発揮できる間合いでやりてェもんな! それがヴァールとだとお互い食い合うことなかったから、まあやりやすいのなんのって!」

「加えてヴァール、お前の後方支援が的確だったのも大きいと思うよ。シャーリヒッタほどの実力者なんてフォローやサポートも大変だろうに、難なくやってみせてさ」

「それはこちらの台詞だろう。舐めていたわけではないが小手調べのつもりで放った鉄鎖が、そのまま致命打になりかねないとは思わなかった……そこを助けてくれたシャーリヒッタはやはり、戦闘力面では最強の精霊知能なのだと認めるしかない」

 

 戦闘終了の気配が漂い始めた、俺も《風さえ吹かない荒野を行くよ》を解いてシャーリヒッタに手を貸して立たせてやる。

 そして近づいてきたヴァールと三人、軽く感想なんかを言い合うんだけど……やはりシャーリヒッタとヴァール、讃え合うだけはあるように連携がすごくよくできていたよね。

 

 そも、精霊知能の演算能力がある時点で可能な限り理想的な形での連係は確定でできるものなんだけど、この二人は特に戦法の噛み合い方が尋常じゃなく良い分、余計に相乗効果で互いの力を高め合っていたと思う。

 近距離のシャーリヒッタ、遠距離のヴァール。どちらも苦手距離への対応策は備えているんだけど、本来のメインレンジがそのへんだからね。コンビネーションするのも実にやりやすい土壌があったわけだ、元から。

 

「二人から、あるいは周囲から見ると一貫して俺が圧倒していたように見えるだろうけど……最後あたりの鉄鎖で退路を塞ぎつつ鎌で斬り掛かってくるコンボは正直唸ったよ。シンプルだけど強力無比だなーって」

「そこはさすがに、な……あなたが相手でなければほぼほぼ、アレで倒せるだろう威力と流れ、範囲だったろうからな。とはいえ、体術一つで覆されたのも事実だが」

「サウダーデさんの技がああいう場面、とにかく強いからなあ。俺の猿真似でもあれだけ効果があるんだから、御本人の技はどれだけのものだろうって使う度に慄くよ」

「父様がすげェのは当然の理だけど、父様がそこまで仰るサウダーデもまた、すげェやつなんだぜェ」

「その前の、フェイリンから模倣したのだろう星界拳もみごとだった。アレで完全にワタシの演算の、前提を根底から覆されたわけだからな」

 

 俺からも二人を讃えつつ、しかしやはり俺に関しては俺自身よりも賞賛すべき人がいるだろう。今回技を使わせてもらったリンちゃんと、サウダーデさんのお二人だね。

 模擬戦にあっては因果操作はさすがに無法ってことで、だったら肉弾戦やなって考えて使うことは前から想定していたんだけど、みごとにヴァールの鉄鎖を星界拳にて砕き、シャーリヒッタの斬撃を合気と中国拳法にて返り討ちにできたよ。

 

 つくづく人間の体術、技術ってものの凄さを思い知らされるよね……なんと言ってもあのお二人ほどの武技でさえ、今後まだまだ発展の余地があるんだ。

 それは当人だけでなく、受け継がれていく流派や血統、文化伝統のなかでさらに磨かれていく。時間が経つほどに、系譜や命脈をつなげていくほどに技はさらなる進化を遂げていくのだ。

 どこまでも高みを目指して。個人の強さを追求する果てに、全体の底上げにすらつながっていくある種の奇跡的な軌跡。

 

「ワタシはある程度近接格闘術も習得しているが、シャーリヒッタもそのあたりを多少身につけてみてもいいかもしれんな。今でもシンプルなスペックですべてを圧倒できるのだが、伸ばせる余地があるならば伸ばしておいても損はなかろう」

「だな。それにさっきみてェな場面でも、オレのほうに心得がありゃあもうちょい打てる手はあったかもしれねェ。ったく、大いに得るところの多い模擬戦だったぜ!」

「俺も、やっぱりコンビネーションとか連係面は意識していきたいよなあ……割となんでもできる分、味方のサポートやフォローで良い動きができるようになるともっと誰かの助けになれると思うし」

 

 各々、教訓を多く授かる模擬戦だったと思う。それはこうして新たな課題とか意欲を見出だせていることからも明らかだ。

 これだけでも十分以上に収穫がある。想定以上に値打ちのあるイベントになってくれてると思うよ、今回の模擬戦は。




「大ダンジョン時代クロニクル」
https://syosetu.org/novel/362785/
第二部・第二次モンスターハザード後編─犯した罪に、等しき罰を─
完結しました!第三部は2026年の7月から!
よろしくお願いしますー


「大ダンジョン時代ヒストリア」100年史編完結!
https://syosetu.org/novel/333780/
よろしくお願いいたしますー

【お知らせ】
「攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」コミカライズ発売中!
ぜひともみなさまお求めよろしくお願いしますー!

コミカライズ版スキルがポエミーも好評配信中!
下記URLからご覧いただけますのでよろしくお願いします!
 pash-up!様
 ( https://comicpash.jp/series/d2669e2447a32 )
 はじめ、pixivコミック様、ニコニコ漫画様にて閲覧いただけますー!
 
 加えて書籍版1巻、2巻も好評発売中です!
 ( https://pashbooks.jp/tax_series/poemy/ )
 よろしくお願いしますー!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

芸術的で文化的な異世界生活を目指して(作者:生しょうゆ)(オリジナルファンタジー/日常)

異世界に転生したからといって冒険する必要はない。▼転生者ジョット・ブレイクはそう考える。別に自分は戦いたくもないし苦労したくもない。好きな時間に起きてオペラなり博物館なりを見に行く生活が理想である。その横にこの世で最も美しい少女を侍らせれば、そこは地上の楽園だろう。▼しかし現実は厳しいのだ。魔術の才能があったばかりに帝国学院に通わされるし、絵画や彫刻を手に入…


総合評価:27928/評価:8.97/連載:76話/更新日時:2026年06月19日(金) 22:06 小説情報

望まぬ知恵の王 ~冒険者に憧れた蟲がやがて魔城の主と呼ばれるまで~(作者:SIS)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

▼ 最終章、開幕。▼ 希望の函は、無理解によって魔城へと堕ちた。▼ 救世の魔王は、諦めによって城を闇に閉ざした。▼ 横たわる、終わりなき永遠の闇。愚かさが全てを手遅れにする前に、黄金の魔女が立ち上がる。▼ 全ては、己が想いが為。▼ いざ行かん。望まぬ知恵の主の元へ。かつて冒険者に憧れた、魔城の主の御許へ。▼ それは。始まりと終わりが交差する、叡智と希望の物語…


総合評価:5704/評価:8.92/完結:266話/更新日時:2026年06月24日(水) 06:00 小説情報

自分の事を主人公だと信じてやまない踏み台が、主人公を踏み台だと勘違いして、優勝してしまうお話です(作者:流石ユユシタ)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

書籍化決定!! 2月10日からTOブックスより発売です!▼神「こいつ、主人公キャラに転生させるとか嘘ついて、噛ませキャラに転生させたお(笑)」▼ 漫画、アニメ、ラノベ、ありとあらゆる物語に出てくる主人公キャラに憧れる男子高校生はトラックに引かれて死亡してしまう。そんな彼の前に神が現れ、ノベルゲーの世界に転生させると言うのだ。喜びに打ち震える主人公……だが、転…


総合評価:55952/評価:8.74/連載:75話/更新日時:2023年11月16日(木) 17:04 小説情報

【一巻8月20日発売予定】裏切りや絶望が溢れるゲーム世界で、鬱展開全てぶっ壊す(作者:棘棘生命)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

(旧題:裏切り・絶望がテーマの同人ゲー世界で、全てぶっ壊す)▼ニッチな需要のあるゲーム世界で、鬱展開を破壊する話▼鬱を破壊した分、様々な種類の闇は主人公に降りかかるものとする▼※四章の更新が完了いたしました▼オーバーラップノベルス様から、8月20日に第一巻が発売予定です!皆様のおかげです。ありがとうございます!▼


総合評価:15745/評価:8.88/連載:119話/更新日時:2026年06月25日(木) 20:59 小説情報

【完結】俺は死んだはずだよな? (作者:破れ綴じ)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

「なのになんで生きてる? しかも全く違う体で?」▼ 処刑された盗賊崩れの男アシェルが、何故か全く知らない肉体・全く知らない場所で目覚めて、何とか生き延びるために奮闘するお話です。その過程で色んな人の脳を焼いたり、因縁を作っていったり、修羅場に巻き込まれたりします。▼ 全10章100話完結+おまけ20話+設定です。


総合評価:9970/評価:9.1/完結:121話/更新日時:2026年06月24日(水) 12:15 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>