攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
第三次モンスターハザード前編─黄金の胎動─
日本は中部地方を舞台にした、葵の祖父が主役の物語ですー
よろしくお願いしますー
次なる模擬戦はリーベとミュトス、ということになるんだけれどさすがにそれは戦闘力面で差がありすぎる。
ところがリーベはやる気満々で、というのも探査者として近接格闘術を勉強中らしくそれを磨く意味でもこうした機会は活かしていきたいのだとか。
そういうことなら俺としても構わないんだけれど、その勉強中という近接格闘術の仔細が気になったので聞いてみる。
ミュトスも相応に加減するのを見越したうえで、それでどうにか新スタイルの練習ができるだろうか前もって確認しておきたかったからね。
「というわけで新スタイルについて一つ、お聞かせ願いたいんだけどリーベさんや」
「そーですねー……えーっと、ズバリ! こんなのお持ちしましたー」
「……うん? 折りたたみ式の武器か。杖?」
「モーニングスターみがあるぜェ」
みんなが見守るなか、手持ちのバッグから白い手のひら大の棒を取り出すリーベ。見るからに折りたたみ式の武技で、それを展開していく。
ずいぶんコンパクトに畳んでいたようで、あっという間にリーベの背丈くらいの長さに伸びたそれは、言うなら杖だ。頭頂部が一際大きな金属の塊で、そこから先端部にかけて鋭く細くなっていっている。
モーニングスターっぽいとシャーリヒッタが言うように、たしかにそれはモーニングスター的だ。
本来なら頭頂部の金属に棘とか付いてたらもっとそれっぽいんだけど、そうでもない分殺傷力はマイルドな印象を受ける。
これが、リーベの新しい武器か。
へえーって目を丸くして見ていると、彼女は不敵に笑ってドヤ顔で俺達へと答えた。
「いかにもこちら、杖となっておりますー! かわいいかわいいリーベちゃん、アイドルとしてのイメージを損なうことなく震えるパワータイプの武器とはなんぞやと考えた結果、この通りの魔法少女スタイルになりましたー!」
「……魔法少女? たしかにこう、イメージ的には魔法使いっぽい杖ですけど」
「パワータイプの魔法少女ですかねえ。ほら昨今の、魔法カッコ物理カッコ閉じーみたいな魔法少女モノアニメ的な」
「アイドルイメージは崩したくないのですね。いえ、シンプルに鈍器を振り回す姿がかわいいかわいいという形容詞に該当するかは存じませんが」
「かわいいかわいい! ですよーイヴイヴー?」
魔法少女モノ、というか戦いのなかで友情を深めるタイプの女児向けアニメのイメージを模索しての杖というチョイスらしい。
よく分からんけどたしかに近年のその手のジャンルは割と、ミラクルパワーでなんでもキュートに解決! というだけでなくいざとなれば物理パワーでやってやる! みたいな印象のものもなくはないと聞く。ファンシーバイオレンスな方向性ってことで良いんだろうかね。
そのへん、神奈川さんやミュトス、イヴさんも若干首を傾げている。特にアイドルイメージっつってやることが魔法(物理)かよと事実上ツッコんだイヴさんには、リーベもちょっぴり黒い笑顔を向けている。おお、かわいいかわいい。
しかしまあ、今は手持ちの武器のデザインが市販っぽい無骨さなだけであって、今後オーダーメイドで可愛いデザインにしたらちょっとは戦うアイドル感も出るんじゃないかな。
「もちろん練習中なので、こうして市販の探査用ロッドを用いてますけどー。ゆくゆくはかわいいかわいいリーベちゃんにふさわしい、ファンシーキュートでバイオレンスな撲殺マジカルロッドちゃんをオーダーメイドする予定ですよー。あ、ちなみにこれはミッチーの協力も取り付け済みですねー」
「えぇ……? いや、たしかにあの人そのへん、なんか企業とかにも顔が利くから正解の選択肢だろうけど」
「アイドルとしてのイメージに絡めてのことならば、当然救世の光として例の伝道師も出張るものか……ううむ。理屈に沿うがイマイチ不安ではある。何しろあの伝道師だからなあ」
「コマンドプロンプトとWSO統括理事が揃って慄くとは、クククク……どうも私の想像以上かもしれませんね、御堂香苗は」
しれっと救世の光案件として、香苗さんまで絡ませているリーベちゃんには脱帽だ。たしかにあの伝道師さん、探査関連企業に割と顔が利くんだよな。
A級トップランカー、あるいはS級としての顔の広さを惜しげもなくカルト宗教の伝道に使うのか……とヴァールともども若干戦慄を禁じ得ないものの、一方で織田などはすごく愉快げに笑っていらっしゃる。
言うてこいつもたぶん、そのうち他人事じゃなくなるんだけどね。主にイヴさんがインターフェイサーに加入した時点で、香苗さんが彼女にロックオンしててもおかしくないし。
さすがに宗旨変えとかって話にはしないだろうにせよ、気づけば謎の美人メイド使徒扱いで例のチャンネルの動画に引っ張り出される可能性だってなくはないんだ。
「織田……第三者でいられるのも今のうちかもだぞ。伝道師さんの伝道は、すごいんだ」
「しみじみ言ってきますね……クククク、期待しておきましょう。どうあれ私も概念存在、人の成し得るすべてのことは、基本的に喜ばしく眺めているべき最高神ですから」
お前もそのうちこっちや……と、生暖かい目で織田へ言葉をかける。やはりクククと笑う織田の様子は余裕綽々で、最高神らしい威厳に満ちているよ。
まあ、いずれその時が来るから楽しみにしていてほしい。やはり生暖かい目でそんなことを思う、俺ちゃんでした。
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第三部・第三次モンスターハザード前編─黄金の胎動─
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