攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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最古の精霊知能vs最新の精霊知能

 まさかの先手はリーベから。まばゆいばかりの6枚の光翼で高速移動する彼女は、手にした杖を華麗に可憐にクルクル回している。

 こんな時でもかわいいかわいいカルト宗教系アイドルを自認してそうな動きでそれは何よりなんだけど、思いの外、堂に入った動きで接近戦を仕掛けているように思えるな。

 

 これはどうも、本当に探査活動のなかで練習していたみたいだ。同期とかパーティの方々と切磋琢磨してたって言ってたもんな。

 元よりスピードにかけてはインターフェイサーにあってもかなり速い方の彼女が、ミュトスに肉薄して杖で狙い撃つ!

 

「とぉりゃあー! 《杖術》、エレメンタルラブリー・ハートヒット!!」

「名前がファンシーでもやることは殴打!? うわわわ、防御防御!」

「シンプルに殴りに行ったのか。名前はともかくスキル、《杖術》だと? 練習していたというのなら、備えていても不思議はないが」

「ハンマーみてェだぜ!」

 

 可愛らしい名前とは裏腹に、超スピードでミュトスに突進しながら頭を狙い撃っての杖による殴打は絵面が暴力的すぎる。シャーリヒッタも言ってるけどほぼハンマーじゃねーか、怖ぁ……

 しかし《杖術》か。杖を使った技術の習熟速度に補正がかかる基礎スキルの一つだけれど、ヴァールもつぶやくように練習していたならその過程で身につけていてもおかしい話ではないよね。

 

 対するミュトスもさすがに対応していて、目にも止まらぬ速度のリーベをしっかり視認したうえであえて杖を受け止めた。

 右腕での頭部ガード、そこに叩き込まれる強打。元より頭頂部には重しめいた塊のある、トゲなしモーニングスターみたいな見た目してるんだ。そんなのが遠心力と超スピードで打ち出されたんだから、それなりに衝撃はあるだろう。

 

 俺の隣に移動していた、イヴさんと織田がそれぞれコメントした。

 

「威力はともかく速度が……! 先ほどのシャーリヒッタ様、ヴァール様よりはまだ見えますが、それでもすさまじい速さですね、お師匠様。リーベ様は支援特化で戦闘向きではないと聞いておりましたが」

「え? え、ええ。元々リーベは支援タイプですけど、それはそれとして割とスピードに能力が偏ってるところありますから。ていうかお師匠様て」

「そこはそろそろ受け入れていただきたいものですね、山形公平……さておき、たしかにリーベ・山形のスピードもまた大したものだ。しかしあれでも最高速度でないようにも思えますが。余力が明らかに残っている」

「おお、さすがだな織田。そうだな、あの娘の限界速度はここからが本番だ」

 

 戦乙女として、最高神としてそれぞれの視点からのさすがの感想。

 リーベの精霊知能としての性能に着目して、特にスピードについてはもう一、二段階ギアがあることをも推察してくるのはさすがだ。

 

 彼女は支援タイプ。ゆえにパワーや戦闘技術はインターフェイサー内では乏しいほうだけれど、代わりに唯一無二の支援、サポート、回復役という役割を負っている。

 だからこそのこのスピードなんだ。誰よりも早く現場に駆けつけ、何より早く治療やフォローを行えるように。つまり本来は《医療光粉》や《破砕光粉》をより有効活用するための速度なんだけれど、それを今、リーベは攻撃に転化しようとしているんだね。

 

 さらにそれだけに留まらない。リーベの強みは単なる速度だけではないのだ。

 杖をガードしたミュトスが、衝撃に片目を瞑りつつもニヤリと笑った。引き戻して続けて二発目を放たんとするリーベの胴体へ、空いている左腕を伸ばす。

 捕らえる気だな。

 

「イタタタ、すんごいショック! ですがさっそくのチャンス、きっちりバッチリはっきりクッキリ捕らえま────はにゃあ!?」

「残念! ミュトスちゃん相手に出し惜しみなんてできませんからねー、ここからは何でもありでいきますよ、《空間転移》! ミュトスちゃんの伸ばした手だって、どこか適当なところにつなげて往なしますー!」

「ワームホール!? え、アレこれ私の背中だこれ! うわ、背中掻くのに便利そう!?」

「えぇ……? いや、これはリーベがナイスだ!」

「いやに生活臭の漂う発言だな……」

 

 掴めば即、そこからなんなりと体術につなげるつもりだったんだろう。そもそも実力差があるため、スキルを使用していないままのミュトスであっても掴まれればそこでリーベの敗北は半ば確定する。

 ……それを演算していないわけでもないのだ。彼女は即座にスキル《空間転移》を発動した。自身の目の前に小さなワームホールを展開し、ミュトスの伸ばした腕をそこへと引き入れさせた。

 

 つなげた先は、ミュトスの背後。

 結果として自分で自分の背中をつまむ形になった彼女が素っ頓狂な声をあげるのをヴァールともども呆れて眺めつつも、しかし俺はリーベを賞賛した。

 

 単なる移動手段としての運用が多いけど、ワームホールの本質は異なる2点をつなげる空間の穴だ。であれば、やろうと思えば攻撃にも防御にも応用できる懐の広さがある。

 ヴァールやシャーリヒッタといった、空間転移を扱えるモノにとっては標準的なテクニックかもだね……攻防自在の万能補助ツール。ワームホールにはそんな側面もあるのだ。




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