攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
「ワームホールで攻撃を逸らさせた! あんなことも、そりゃまあできるだろうけど」
『リーベさんのワームホール生成は早くて正確だからね。仮に私が同じことをやろうとしても、瞬間瞬間で素早く動き続ける戦いにはむしろ遅すぎると思う』
神奈川さんの驚きの声。本来移動用の手段である空間転移のワームホールを、敵の攻撃から身を守るための回避策として転用してみせたリーベに対する一言だ。
当然、彼の背後に寄り添うステラがそれに反応するんだけれど……それもつまるところはリーベの性能の高さ、理論上はできるだろう程度のことでしかなかったワームホールの戦闘中の活用を実現してみせたことに対する、感嘆の念が強く感じられる。
そう、今みたいなことはたとえ精霊知能であってもなかなか難しい。というか普通に高等技術だ、戦いながらワームホールを形成するなんて。
異なる2点をつなげる扉。その形成は当然ながら因果操作のなかでも高等技術に該当する。スキルの形に落とし込まれている分、受肉した精霊知能達が行うにあたっては多少緩和されているところはあるものの、それでも自分が矢面に立って戦うなかでの行使なんて正気の沙汰とは言い難い。
「えいえい、えーい! ミラクルラブリー・キュートアグレッション!!」
「キュートアグレッション!? 知ってますよソレ、なんかやたら物騒な意味ですよねソレー!?」
「ネーミングはかわいさ重視なので悪しからずー! ……っとと、ワームホール生成! ミュトスちゃんの攻撃は通しません!」
「嘘ぉ〜ん!? ちょ、ちょっと早すぎませんかねそのワームホールの作るスピード!?」
それを、いとも容易くあっさりやってみせたのがリーベだ。
彼女はさらに杖を振り回し、ミュトスに連撃を仕掛け続けている。時にミュトスも応戦するけど、やはりワームホールに阻まれ攻撃が通せない状態に陥っているな。
大した手際だ。
これにはヴァールやシャーリヒッタも、率直に賞賛のコメントをつぶやいていた。
「アレは、さすがにワタシでは無理な芸当だな……遠く離れた地点の敵にワームホール越しに攻撃するくらいのことはしたこともあるが、アレとて落ち着いた状況での先制ないし奇襲が常だった」
「すげェぜ、姉貴! オレもやろうと思えばできるかもしれねェけど、さすがに速度が遅すぎてあんなピンポイントで活かしきれねェ。精々罠代わりに仕掛けとくくらいが関の山なんだぜ! ちなみに父様的にはどうです、あのテクニック」
「んん……いやスゴいことしてるなって、マジで。直近で言うとプレーローマ・アンドヴァリがああいうことをしてたけど、アレだって乱戦のさなかとかじゃなかったし。自分があそこまで近接戦闘している時に、通常の戦闘手段としてワームホール生成を組み込むのは並大抵じゃない。俺だってリスク面から考えて、なかなかやる気にはなれないよ」
「ふむ? やろうと思えばできるのですね、あなたも」
「そりゃまあ、コマンドプロンプトだからね一応」
コメントを求められたのでざっくり感想を述べるけど、まあこういうことだ。
俺やシャーリヒッタも似たようなことはできるけど、俺はリスク面を考えてやらないしシャーリヒッタは生成速度がリーベよりか遅いのでやれない。
こと演算速度に長けており、かつ回避や防御手段としてワームホールを採用するほうがメリットの大きい彼女だからこその選択であり戦法なんだろうさ。そしてそれを実際に実現できる手腕を、俺は手放しでみごとだと褒めてみせる。
織田も好奇心を覗かせつつ俺に尋ねてから、そう言えばと重ねて質問してきた。この荒野に来る時の、ワームホールについての問いかけだ。
「この領域に来る際、あなたは同じ空間転移でも我々概念存在のものとあなた方のそれとで扱いが異なると言っていましたね。そのあたりを伺いたいのですが構いませんか?」
「ああ、もちろん。えーと、空間転移技術そのものは、システム領域であっても概念領域であってもやることそのものは変わらない。因果を操り異なる2点をつなぐ、これだけだな」
「プロセスとしてはそうでしょうね。ですが精密性、速度、何より質の高さでは圧倒的に精霊知能達のほうが上です。このへん、どういった仕組みになっているのでしょうね?」
「それは私も気になります。概念存在のはるか上をいくクオリティの空間転移技術、その断片でも我々に活かせるところがあればなお良いのですが」
まだ見ぬ知識への渇望にギラつく織田の眼差し。怖ぁ……最高神からの質疑応答、何がなくともなんとなく緊張しちゃうよ。
とはいえ、これについては半ば俺自身のことでもあるんだ、説明は容易い。イヴさんも興味津々だし、北欧神話圏には常からお世話になってるもんでもったいぶる必要もない。
そんなわけで俺はざっくり端的とだけど、空間転移についての仕様やシステム領域と概念領域とでの違いなどを説明していく。
概念存在と精霊知能、立場違えど空間転移という行為においてなされることは大差がない。けれどそのプロセスにおいて、決定的な違いが隠されているのだ。
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