攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
空間転移という能力は、権能という形で精霊知能のみならず概念存在の少なくない個体も持ち合わせているものだ。
異なる二つをつなげる手法。システム領域のそれはワームホール生成という形で統一されているけれど、概念存在のほうだといろんなやり方が編み出されていたりするのが大きな違いだろうか。
たとえば、そうだな……自身の身体の座標を変動させて転移するやり方とか、時間を停めてその間に移動するとか。一時的に自身を粒子に変換して、超スピードで別の場所に移動し再構築するとか。
そんな感じで過程はいろいろあるにせよ、最終的に結果が同じならそれらはすべて空間転移という枠組みに収まる。その上でいろんなやり方があるのが概念存在で、ないのがシステム領域という区分がこの際、できてしまうというわけだった。
「概念存在はそれぞれの個体が、それぞれ異なるやり方で空間転移現象を引き起こせるだろ? けれどシステム領域の場合、因果律管理機構コマンドプロンプトをダイレクトに介してそれを行うわけで、概念存在よりも画一的かつ高度なクオリティで平均化できているんだ」
「質は低けれど多様性に富んだ概念存在と、裏腹に高品質ながら均一的な手法での精霊知能、というわけですか」
「そうそう。だからまずはそこが異なるんだけど、受肉した精霊知能達についてはさらに特殊でな。その空間転移技術を、わざわざスキルと言う形にパッケージングして備えている。ここがミソだ」
「パッケージング、ですか? ……それはつまり、平均化された技能としての空間転移生成技術を、さらにコンパクトに効率化したという解釈でよろしいでしょうか、お師匠様」
イヴさんにうなずく。花丸満点に近い解答だ、さすがというべきかな戦乙女。織田もだけど理解が早くて非常に説明しがいがある。
多様性の概念存在とシステム的に統一化された精霊知能、という差異を基盤として、さらに受肉した精霊知能は一歩踏み込んでそれをスキルの形に効率化を追求して備えている。
これこそが決定的な違いなんだよ。
スキルとは元々、魔天世界に存在していた巣立ちのためのスーパーパワーだ。その世界の知的生命体が各々備えていた、魂の力を引き出して扱うことのできる特殊能力。
そしてその設計思想は、言うなれば効率化に重きを置いたものになっている。
習熟速度を高める、威力を高める、敵の気配を察知するなどなど。
通常身につけるのに時間がかかる、発揮するのに手間がかかる行為を、スキルの存在が手軽にカバーしてより効率の良い成長や生存行動を行えるようにするための力と言って良い。
あるいは魔法系や魔導系スキルのように、引き起こすのに道具が必要な現象を道具なしで行えたりするような、サポートツールとしての側面もあると言えよう。
「その設計思想に照らして、精霊知能用スキル《空間転移》は創り出されたんだ。本来精霊知能がワームホール生成において普段行なっている動作……コマンドプロンプト呼び出しからワームホール生成プログラムの代入、編集、実行に至るまでをあらかじめスキルにセッティングしておいて、スキルを発動すればタイムラグなしでそれを行えるようにしているってわけ」
「なるほど、ある種のアプリケーションのようなものなのですね、まさしく。しかしそのスキル《空間転移》も、今しがたのやりとりを見るに精霊知能の間でもクオリティに違いがあるようですが」
「それこそ個体差だな。《空間転移》は保持者がある程度、プログラムを編集できる余地があるからそこでクオリティの差が出てくるんだ。今で言えば生成速度特化のリーベみたいに」
「最低限でも概念存在以上の空間転移能力ですが、それぞれの精霊知能ごとによってさらなるブラッシュアップを施す余地があるということなのですね……!」
俺の説明にある程度納得したのか、織田とイヴさんが揃って感嘆の吐息を漏らした。ざっくり説明の割に長々語った気もするけど、うまく話せたようで口下手山形くんとしてはホッと一安心だ。
《空間転移》というかこれも結局精霊知能の権能由来なんだけど、自身が保持するスキルについてはある程度、各個体それぞれコマンドプロンプト呼び出しを使って編集することができるんだよね。
まあ中核になる効果部分は弄れないし、そもそも大体のスキルは弄る必要がないくらい完成されているわけなんだが、ことワームホール生成となるとやはりこだわりたい精霊知能はこだわるんだろう。
そもスキルでなく権能としてワームホールを操るシステム領域内の精霊知能達でさえ、半ば粘土をこねるみたいにワームホールを弄くり倒してる節があるし。
精霊知能三姉妹なんかは俺の見立てでも結構、独自に好みのカスタマイズを施しているように思うよ。生成速度から大きさ、潜る時の質感など各人違うしね。
このへんは俺自身、ワームホール生成にはそれなりに気を遣う派だから分かりみしかない話だ。やっぱり使うからには使えたら良いや! じゃなくて気持ち良さとか追求したいものなー。
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