攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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餅は餅屋に。適材適所が一番大事

 予想外の善戦。しかし全体通してみればやはり、戦力差はいかんともしがたいものだった。

 そう評価するしかないだろう模擬戦が終わった。リーベvsミュトス、その結果を踏まえての観客一同の感想会である。

 

「リーベの回避力はすさまじかった。本当にすごかったけど、それだけで終わっちゃった印象はどうしてもあるかな。攻撃面がまだまだって感じというか」

「ワームホールを駆使してあらゆる攻撃を往なす、そちらは相当に高レベルかつ洗練されていたように思うが……山形公平同様の感想になるな、攻め手に欠ける。結局やっていたことが杖で殴りつけるだけなのだから当然なのだが、発展性がないと感じた」

「まァ、スタイル構築中だろォからしゃーなしだとは思うんだぜ。でも欲を言うならもうちょい積極性は欲しかったかもだなァ。途中から若干、心折れてたろ姉貴」

「ううっ、自分でも理解していた弱点を客観的に指摘されてますー! ……ええまあ、正直後半は体力気力ともにヘバッてましたねー」

 

 俺、ヴァール、シャーリヒッタの立て続けのコメント。異口同音に言うことは結局同じで、つまるところ回避技術はすごかったけどその分、攻め手に欠けていたって感じか。

 特にシャーリヒッタの指摘はだいぶ鋭くて、リーベが図星を突かれたようで胸を押さえて苦笑いしている。その隣ではミュトスもにゃるほどーとうなずきつつその背中を擦っていて、なんだか和む光景ではあるかな。

 

 そう、実際リーベは後半明らかに消耗していた。ワームホール生成による完全回避を繰り返しすぎたせいで演算能力が追いつかず、徐々に体力も気力も削がれていったのだ。

 それに伴い攻撃回数も露骨に減りだして、最終的にはミュトスの攻撃をひたすら必死に避けるだけになっちゃっていたからね。それでも権能発動までは凌いでいたのがさすがだもんで、そこは褒めどころでもあるだろうけど追い詰められた末って話なのも事実だ。

 

 これについては明確に、ミュトスの作戦勝ちって面もあるだろう。リーベの回避テクが思いの外、桁違いなのを最初に確認した時点であの子、フェイントを多用して消耗を誘う戦法に切り替えてたものな。

 そんな彼女には神奈川さんにステラ、織田、イヴさんがコメントを送っている。勝者を讃えつつも、気になるところを質問する形だね。

 

「にしてもあのリーベさんのワームホールを、あんなやり方で突破するってのはすごかったですよ、ミュトスさん。お疲れ様でした」

『本当、三界機構抜きにしても相当なんだねミュトス。ちなみに最初からリーベさんの消耗を誘う戦法は考えたりしたの?』

「いえいえ、戦闘中ですとも! 最初にワームホールで凌がれた時にはどうするかなーこれとかって思ったもんですが、だったら手数で攻めればいけそうかなーって。消耗狙いってのもありましたけどワンチャン、掠りでもしてくれたらそこからいけるかもって!」

「結果的にそれがリーベ・山形にはプレッシャーとなったのでしょうね。一撃でも食らえばやられる威力の連打乱舞、ならば無理でもすべて躱すしかない、と……」

「我らが北欧神話圏にもそうしたタイプの戦士はいますね。技術をも踏み倒す力の嵐。ミュトス様がそのようなパワータイプというのも予想外でしたが、今しがたの戦いを見れば納得しかありません」

 

 ワームホールを多用させてリーベを消耗させる、という理屈も込みで、しかも少しでも触れればそこから一撃必殺をかますつもりだったと吐露するミュトス。

 なるほど、リーベにはプレッシャーだったはずだよ。三界機構なかりとて戦闘特化の精霊知能がそんな気構えを剥き出しに仕留めに来るんだ、矢面に立つ機会の少ないあの子じゃ気圧されても無理はない。

 

 言うならばパワータイプと評するイヴさんに俺も同意だ。ミュトスの基本的な戦闘スタイルは、やはりスペックを前面に活かしてのパワープレイなのだろう。

 そこに上乗せして水の権能やら、三界機構の力が発動するわけだね……これは現状のリーベじゃどうもできんわ。むしろよく頑張ったよ。

 戦闘の余韻からもクールダウンして、ホッと一息ついたリーベの頭を撫でる。

 

「ん、公平さん……リーベちゃん、ちょっとは頑張りましたよー」

「ちょっとどころじゃないだろ? よく頑張ったよ。ミュトスもだけど、お互いがルールの範囲内でできることをやりきってくれたよ。みごとな模擬戦だった」

「えへへー! ……でもやっぱり思いましたけどリーベちゃん、近接戦は不得手ですねー。自衛程度に持った《杖術》はそれなりに機能しそうな手応えもありましたけどー、これで調子に乗って前線に立つとかはあり得ないとも思い知りましたねー」

「お前の役目はやっぱり補佐、サポートにフォローがメインだろうしな。そしてそれは、矢面に立つ探査者達にとってどんなことより頼りになる命綱とも成り得る。責任重大だぞ」

 

 くすぐったげに目を細めつつ、所感を述べるリーベ。

 どうしたところでこの子のスタイルは後方支援だ。今回はスタイルを改善したこともあって試しがてら杖をメインに接近戦で行ったわけだけど、やはり本来の姿からは程遠いものだったのは否めない。

 

 それぞれの探査者にはそれぞれの活躍の場面、距離感があるんだ。それを、今回の模擬戦でこの子はきっと再確認しただろう。

 俺の言葉に、情熱を宿した瞳でうなずき応える姿がそれを何より証明していた。

 

「はいー……! 大事なことを教わりましたー! ミュトスちゃんに感謝、感謝! ありがとうございますー!」

「こちらこそありがとうございました、勉強させてもらいましたリーベさん!」

 

 最後にリーベとミュトス、握手をして礼を述べ合う。

 清々しい姿だ……お互いに学ぶべきを学び、高め合うためのヒントを得た姿が、たしかにそこにあるのだった。




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