攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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システムさんは言っている、ダンジョンに潜れと

 今日は土曜日、学校は休み。昨日はクラスメイトたちとカラオケ行って楽しかったから、今日はその分、ダンジョン探査と参りましょうか!

 

「さぁて、さて。今日のお題は〜っと」

 

 予め手配していた資料を眺める。今回挑戦するダンジョンは3つだ。

 住宅街の一軒家の庭先にできたダンジョンと、工場の中にできたダンジョンと、郊外にある小高い丘にできたダンジョンである。

 その中でも庭先と工場のダンジョンは、調査の上で判明した深度と部屋数から、F級探査者でも探査ができると判断されている。比較的危険の少ないところだな。

 一方で丘のダンジョンの方はちょっとリスキーだ。資料によると全部で地下3階層、部屋数は全部で10にも及ぶ。本来ならばE級探査者が攻略のメイン層として乗り出すくらいの代物らしい。

 

 未だにF級の俺が、なんでそんなおっかねえところに突撃するのか?

 まあ一言で言うとお上の都合、だったりするんだなあこれが。

 

 自分で言うのもアレな話だが、俺ってもう、実力だけで言うとF級探査者の領域を遥かに超えちゃってるみたいなのよね。スキルやら称号やらで各種ブーストやボーナスをこれでもかと累積してるんだから、さもありなんわけだけど。

 で、だ。

 探査者組合本部長の広瀬さんくらいの立場からすると、そんなインチキ野郎をいつまでもF級にしとくのはあんまりにも惜しいんだそうで。本来なら最低でも探査者として一年の経験を積んでなきゃ受けられない昇級試験を、急ぎ受けるように要請されたのだ。

 

 俺としても別に、F級が好きだからF級探査者をやっているわけじゃない。昇級したら探査できるダンジョンの幅も広がるし、それに伴い金も稼ぎやすくなるし、色々、福利厚生の面で優遇されたりもするし。

 何より上級探査者ともなればモテるし。有名になったりして、チヤホヤされちゃったりなんかしちゃったりするし。

 機会があれば昇級するかな〜くらいの心持ちではいたのだ。

 

 俺の意向と広瀬さんの要望と。両者がガッチリ噛み合った形となり、俺は特例として探査者歴わずか半月ほどにも関わらず、昇級試験を受けることとなったのであった。

 そしてその試験の内容ってのが、E級相当のダンジョン探査とその踏破だったというわけである。

 

 朝10時、市内の高級住宅街の、とあるご家庭を訪ねてやって来ました庭先ダンジョン。ご立派な庭園にまあなんてことでしょう、丸々ポッカリ大穴が。

 さっそく探査すっべと準備に取り掛かる俺。こんな子供で大丈夫か? と不安がる、この庭の持ち主佐々木さん御一家の皆さまに、大丈夫です、問題ありませんなどと撮影係の御堂さんが俺より先に断言する。

 

「ご安心ください、佐々木さん。こちらの公平くん……山形くんは探査者として経験は浅いですが、既に並み居る上級探査者たちにも決して劣りません」

「そ、そうなんですか?」

「そうですとも。これは幸福なことですよ? これからの世界を、時代を担っていく至高の探査者の若き日の姿と伝説を、あなた方は今、目撃しているのですから!」

「はい一旦カメラ止めてー。すみません佐々木さん、この人ちょっと、年下趣味が行き過ぎまして」

「は、はあ?」

 

 思ったとおりだ、さっそくやらかしてるよこの人。

 俺の探査活動に、組合本部で待ち伏せしてまで引っ付いて来て、半ばライフワークみたいに扱い始めたことまではまあ、まだ良いんだが……質が悪い話で、隙あらば今みたく、まるでアレな勧誘を始めるんだ。

 これがあるから正直、一緒にいてほしい気持ちといてほしくない気持ちとでちょうど、半々なんだよなぁ〜、御堂さん。

 

 もちろん彼女のことは決して嫌いじゃない。むしろ好意を抱く部類の人ではあるんだが、とにかく狂信者なのがネックすぎる。

 関口くんみたいな手合が来た瞬間、信仰に殉じて参りますみたいな面されたら、それがたとえどんな美男美女だとしても、普通にドン引きもんだよ?

 

 ただ……とはいえ残念なことに。

 俺、割と御堂さんがこんな風に近くにいることを、当然だと思い始めてるんだよなあ。

  

「なんか、スマホ構える御堂さんと一緒なのが当たり前のことに思えてきました」

「当たり前のことでしょう? 私は救世主様の御業を世に広める伝道師ですから」

「怖ぁ……」

 

 そんな彼女は今日も今日とて、俺の探査を動画に撮って配信する気満々で信仰を脳にキメていらっしゃる。

 そろそろこの狂信ぶりにドン引きはしても不自然さを覚えなくなってきたあたり、俺もヤバくなってきてないだろうか。さすがに見て見ぬ振りをし過ぎたのか、感覚が麻痺しているのかもしれない。

 ほら、佐々木さんのご家族様方が揃って3歩くらい引いてる。ダンジョンから距離を置くのは適切な判断だが、今回はそういう理由から退いたわけじゃないのは明白だね。

 

「……まあ、良いか。行こうか、御堂さん」

「そろそろ香苗と呼んでくださっても良いのでは? 分かりました、公平くん」

 

 こっ恥ずかしくて名前でなんか呼べるか! そういうところだけはやけに疎いな、あんた!

 内心でツッコみながらも、俺は本日一つ目のダンジョン踏破に乗り出したのだった。

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