攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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S(スゴイ)F(不思議)

 そもそも、邪悪なる本体はどこにいるのか。俺たちは決戦の際、どこへ向かえば良いのか。

 最初の一歩からの疑問に、リーベは冷静さを取り戻して答えた。こいつにしろシステムさんにしろ、どうも邪悪なる思念が絡むと瞬間湯沸かし器になるんだよな……怖ぁ。

 

「決戦の地へは、このリーベが転移スキルでお連れいたしますー。場所は、この世界の一番外側。他の世界があまねく揺蕩う空間と直接的に接している、そんな部分ですねー」

「……ファファファ、よく分からんね。具体的な地理で言ってくれんかえ、リーベ嬢ちゃん」

「今、みなさんの目に見える表面上の世界にはありませんよー。システム側の領域……時間と空間、そして概念存在も含めた高次次元の空間に位置しますー。分かりやすく言えば、世界の裏側ですねー」

「そうなんだ、すごいね!」

 

 思わず思考停止して、とりあえず褒めてみる。ちんぷんかんぷんだ、少なくともこの場にいる人間全員、はあ? みたいな顔をしている。

 それに対して、まさかのガチ焦りを見せたのがリーベだ。こいつ、今の説明でいけるとか思っていたのか、もう他に言えることないよと言わんばかりに言葉に迷っている。

 

「え、あ……えー、と。困りましたー。どう説明したものでしょうー」

 

 かーっ、これだから頭の良いやつは! 難しい単語で難しい理屈を捏ねて、それで分からせた気になってんだもんなあ!

 とまあ、情けないやっかみはさておくにしてもだ。これではちょっと、認識の共有にもならない。とにかくなんか、世界の裏側的などこかが、目に見えないところにあったりするんだろう。そう解釈しとくか。

 

 探査者一同が、微妙な顔でまあ、そういうもんなんだろうという空気を醸す中。ヴァールが微かにため息を吐き、おもむろに話し始めた。

 

「……平たく例えるが、まずはプールを想像すると良い。サイズは適当で構わん」

「プール……?」

「ああ。そして、そのプールにはいくつもボールが浮いているものと考えろ」

 

 ヴァールに言われるがまま、ちょっと想像してみる。

 俺の家から少し南にある、小山の上に建てられたごみ焼却施設。そこは温水プールが併設されていて、ゴミを焼却することで発生した廃熱を利用して年中、市民向けに開放されている。無論、有料でだが。

 

 俺も毎年必ず一回は向かうそのプールを思い描いて、さらに大小彩り様々のボールがぷかぷか、浮かんでいる様もイメージする。

 なんか、縁日のスーパーボールすくいを規模でかくしたみたいな光景になってきたなぁ。

 

 一同が、差はあるにせよ概ね似たような光景を思い浮かべたのだろう。タイミングを見計らってヴァールは、続きを語る。

 

「ここで言う、ボール一つ一つがそれぞれ、担当するワールドプロセッサが作り上げた世界だ。さしずめボールの中に入った砂だか小石だろうかな、この星や宇宙空間のあれこれは」

「……ふむ。となると、プールと言いますのは」

「様々な世界が揺蕩う、波動の海のような空間だ。決まった名称はないが、まあ波動空間とでもしておけ。決戦の場所とはこの世界と、波動空間が接している地点で行う。いわばボールと水の、接地点の極一部だな」

「なるほど……」

「ちょっと、理解」

「ファファファ、SFみたいな話だねえ」

 

 例え話だから、完璧な理解とは程遠いだろうけれど。リーベのよく分からん説明よりかは、イメージができたと思う。

 やれやれ、とヴァールが肩をすくめた。リーベを見ているあたり、俺たちの理解力の低さに呆れたというよりは、後輩精霊知能の説明下手さに嘆いている気がする。

 あ、リーベが震えてる。悔しいよね、そりゃ。

 

「ぐ、ぐぬぬぬぬ……っ! ま、まさか先代とリーベの間で、こんなに説明力に差があるなんて……っ!!」

「これでも一応、ワタシはソフィアまでの歴代アドミニストレータ全員に色々、教え込んできたからな。この程度は容易いが……後釜よ、お前は噛み砕いて説明することに留意すべきだな。システム側の視点でのみ語るだけでは、人間には分からない」

「…………肝に銘じますー」

 

 がっくり項垂れるリーベ。その頭をリンちゃんが撫でて慰めている。良い子だ。

 悪いとは思うけど、いくらなんでもあの説明では分からなかった。マリーさんやベナウィさん、香苗さんですら困惑していた以上、俺やリンちゃんが勉強できない子ってわけでもないはずだ。

 

 こほん、と、反省した素振りのリーベが話の主導権を取り戻した。大まかな決戦の地点は分かったが、今度は具体的にどういう環境で戦うのか。それを知りたい。

 

「えー、さっきの例えで言う、プールとボールの接地点ですね。そこには実は、ダンジョンがあるんですー」

「そんなところにも!?」

「というか、そんなところゆえ、でしょうかねー。何しろこの世界で、最初に発生したダンジョンですから」

「…………!?」

 

 ダンジョン? それも、世界初の?

 以前聞いた話では500年前、邪悪なる思念が最初に侵攻してきた際に侵食される形で、ダンジョンが発生したのだという。

 その第一号が、この世界の内側と外側を隔てる壁にある? もしかして、それって。

 

「……邪悪なる思念が500年前に、侵攻に使ったダンジョンなのか?」

「御名答ー! もっと言えばそこから350年間、ソフィアに至るまでの歴代アドミニストレータがひたすら、モンスターを食い止め続けてきたダンジョンでもありますー」

「セーフモード起動後に、やつが改めて侵攻してきた地点でもあるな。やつにとっても、出入りしやすい場所らしい」

「最後の決戦を、最初のダンジョンで行うってかい……! ファファファ、こいつはまた」

 

 何という巡り合わせ、いや、成り行きを考えれば必然だろうか?

 始まりと終わりの地、なんてフレーズが思い浮かんだ俺だった。

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