攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
受付で無事、依頼も受けたのでさっそく全探組を出て現地に向かう。
今日のダンジョンはここからそう遠くないところにある高校の敷地内だ。東クォーツじゃない、よその高校にお邪魔できるのも地味にすごい話だよ。さすが探査者。
香苗さんにもすでに連絡済みで、正門前で落ち合う予定になっている。つまり6人での探査とそれなりの規模ではあるんだけど、基本的にはおかし三人娘が前面に出るべきF級ダンジョンだからね。
今回はやはり、俺も香苗さんも関口くんよろしく後方見学となるだろうさ。
「2階層6部屋、F級のなかではスタンダードな規模みたいですね。事前調査ではなかにいるのもゴブリンやスライムと至って普通の範囲内です。楽勝ですけど、油断しないようにしましょう二人とも」
「もちろん! 油断一瞬怪我一生、だもんね!」
「気をつけます〜」
全探組からもそう離れていない距離だ、歩いていくんだけど道中にてガムちゃんがチョコさん、アメさんにダンジョンの仔細を軽く話していく。
このへん、ちょっぴりややこしいかもだけどおかし三人娘の体制的にはリーダーはチョコさん、指揮役はガムちゃんだったりするんだよね。
パーティ全体を引っ張るムードメーカーとしての役割をチョコさんが、実働的な方向での指揮官としての役割をガムちゃんがそれぞれ分担していると言っていい。
だからさっき、代表して依頼を受けたのはチョコさんだけど今、こうして仕切ってるのはガムちゃんなんだ。
コミュ力強めだけど指揮力はあまりないほうと、指揮官適性がありつつも尖りすぎててコミュニケーション面で不安のあるほうとで補い支え合っている構図になる。
これもなかなか面白い構図だね。関口くんが後方で、隣で歩く俺に軽く話しかけてくる。
「三人のパーティとしての役割もそれなりに形になってきたろ? 特にチョコとガムの噛み合いが結構良い……信頼関係ができているとこんなにシナジーあるんだな、この二人」
「そうだね。元々はチョコさんがぜんぶ仕切ってリーダーやってたわけだけど……性格的に交渉役はできても指揮役は難しかったもんね」
「反面、ガムは地味に人当たりに癖があるから交渉に向かず、しかし視野が広くて頭も良いから指揮役に向く、と。両者の一長一短を考えると、こうなって然るべきではあるよなあ」
「だねえ」
関口くんも今のチョコさん、ガムちゃんの関係性を評価している。
出会った頃に比べて信頼関係がダンチだし、それゆえにお互いが自分の役割を自覚的に発揮できているわけだからね。当然良いムードで良い動きにもなるよ。
当初はリーダーとしての働きをすべてチョコさんが担っていたんだけど、前衛としてあまりに視野が狭くかつ、猪突猛進な性格ゆえに指揮どころじゃなかったのが実際だった。
それを見かねて香苗さんの提案により、実務面をガムちゃんが担うことになったんだけど……さすがの采配というしかないね。完全に相互作用が生まれているんだ。
で、こうなると残る一人のアメさんのパーティ内での立ち位置なんだけど。これについてはもはや語るまでもないだろう。
ある意味おかし三人娘の戦術の基礎基盤だ。彼女の召喚スキルを前提に今、ガムちゃんは戦い方を構築しているわけだからね。
「戦法はまあ、いつも通りで私とアメ姉の《召喚》で斥候。部屋に出てモンスター戦になったらチョコさんを支援って感じで」
「任せて! よーし、がんばるぞおーっ!!」
「始原さん達に頼るのは最後の2戦だけってことで。アメ姉、よろしくね」
「もちろん! 始原の四体の御方々は先生とお話があると思うから早めにお呼びするけど、基本的には後ろで見守っておいてもらうわ〜」
召喚体を駆使しての斥候と支援。および現状におけるおかし三人娘最大の切り札、始原の四体を呼び出しての戦法。
それらの要であるアメさんが、いつものことらしいやり方におっとりと返すのを見る。うん、こちらも良い感じに力が抜けているね。
この人はこの人で、平時はなんら問題ないものの戦闘となると途端にパニック気味になるという一面がある。性格的に咄嗟の対応が苦手で、そうなると自分の身を護ること以外の行動を取れなくなりがちなのだ。
無論、自己防衛を批判するわけでは決してない。しかし完全に安全な位置にいるにも関わらず、自身の武器ともいえる召喚体を仲間のために使えなくなってしまうのはさすがに探査者としては問題があると言わざるを得なかったのだ。
そこを補うのもやはり、ガムちゃんだ。常に俯瞰的に全体を見ることができる彼女が、的確なタイミングで適切な指示を出すことでアメさんはスムーズに正しい行動を起こせるようになる。
アメさん単体では活かしきれない御自身のスペックを、ガムちゃんが最大限効率的に活かす。そういうスタンスに現状では落ち着いているんだね。
「……こう考えると今のおかし三人娘、三人それぞれが上手く役割を担った上でよく噛み合ってるね。誰一人欠けても、三人の実力は発揮しきれない」
「今、指示を出してるガムくらいかなソロでもまるで問題ないのは。チョコとアメについては完全にそうだ。そこもゆくゆくはどうにかなってほしいもんだけど」
「まあ、道のりは長いから。経験を積んでいけばどうとでもなると思うよ、俺は」
関口くんと総評するに、今のおかし三人娘はそれぞれ歪なピースが3つ、寄り集まって綺麗な真円を描いているような形だと言っていい。
一つでも欠ければ途端に瓦解しかねない危うさはあるものの、強い信頼関係の下で成り立っているトライアングル。
探査者としてのそれぞれの行く末を考えれば、いずれは各人自立してもやっていけるようになるべきなんだろうけど……
デビューして半年ほどだもの。むしろ上手く行きすぎてるくらいまであるほどだと、今のところはそういう評価に落ち着くのだった。
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