攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
音楽室に入ると、まあまず真っ先に目につくのはやはりダンジョンの入口だ。
全体的にはあまり変哲のない教室だってのに、隅っこのほうには深淵めいた地下への階段があるんだから風景としてはそりゃ、違和感しか覚えないよね。
とはいえこれこそ探査者にとっては日常とも言える。それ以外の人達にとっては非日常と化したこんな光景を、いつも通りの日常に戻すのがお仕事なんだから。
というわけでさっそく潜入だ。ダンジョンに潜って早々、斥候役兼指揮役のガムちゃんが先導してチョコさんアメさんに指示を飛ばしていく。
「じゃあさっそくやりましょうか。アメさん」
「分かったわ〜! 条件は一つ、ダンジョン内であること……スキル《召喚》発動! どうかお出でください超常なる御方! 火の精霊、サラマンダー!!」
『くきゃーっ! くきゃーっ!』
「おお、火の精霊。久しぶりに見た」
『くきゃっ!』
もはや以心伝心って感じで、一声かけられれば即座に召喚スキルの行使に移行したアメさんに成長を感じる。
普段から繰り返し行っているいつもの段取りってのもあるんだろうが、それ以前にガムちゃんとのコミュニケーションがうまくいっていることを如実に感じるのだ。
前から指示さえあればそれをこなす人ではあったけど、今ではきちんと自分で考え、可能な限り即座に行動に移せるよう普段から努力しているのがわかるよ。
そして《召喚》の発動もずいぶんスムーズになったのもね。久々に見た概念存在・火の精霊サラマンダーは、アメさんの呼びかけに呼応して即座に現れていた。
背中から火を噴いている子供サイズのトカゲが、かわいらしくも雄々しく鳴いている。
チョコさんもすっかり馴染みらしく、気さくに話しかけているね。
「サラさん、今回もよろしくね!」
『くきゃーっ!』
「続けて行きます、二体目の《召喚》! 条件は一つ、ダンジョン内であること──お出でください超常なる御方! 水の精霊、ウンディーネ!」
『ららー! らーらーらー!』
「おお、二体目。召喚条件達成可能上限数が増加したんですね、アメさん」
「はい、先生! レベルが20を超えて、一つ上限数が増えました〜!」
さらにそれだけで留まらず、続けてのアメさんが《召喚》を行使した。概念存在召喚の前提事項である、先方が提示した条件を満たせる上限数が一つ増えたんだな。
すなわち召喚条件達成可能上限数、略して条件達成数。これってのは召喚スキル保持者によって千差万別で、増加タイミングもレベルの上昇だったり特定条件を満たしたりと人によって異なるわけだけど、最大でも9つまでという天井は設けられている。
現状のオペレータだと、S級であり史上最高峰の召喚スキル保持者だろう愛知さんがそこまで到達してるかな。それを思うとアメさんはやはり新人さんらしく、2つが限度のようだ。
それでも枠が一つ増えたことでサラマンダーのサラさんと同じ格である水の精霊、ウンディーネを呼び出せたのだ。単純に戦力的にもこれは、大きな向上を果たせたと言えるだろう。
水でできた小さな女の子のぬいぐるみのような姿で、幼気な声で歌うように鳴いているその概念存在がふよふよと浮かんでいる。
あっ、サラさんとじゃれだした。揃って鳴きながら前足やら手やらをふにふに寄り合わせてタッチし合っている。なんだか和むなあ。
そんなウンディーネにも、チョコさんやアメさんは挨拶を交わしていた。
「ディーネちゃん、サラさんともどもよろしくね!」
「お二方、いつも通りに先行してダンジョンの様子をお探りくださいませ〜!」
『くきゃ』
『ららー』
「ずいぶんメルヘンな光景だろ? アメの召喚スキルは次の段階に進んだことで、喚び出せる召喚体の幅が一気に広がったんだ。たぶん今回の探査でそのへんも見られると思う」
しっかりとアメさんやおかし三人娘に懐いているようで、素直に言うことを聞く二体の精霊。その姿は関口くんが言うようにどうもメルヘンだ、巫女さんの周りを火と水の精霊が駆け回ってるんだもんな。
もうこの時点でアメさんの進歩の大きいことは分かりきってるんだけど、彼曰くまだまだこんなものじゃないらしい。まあ条件達成数が二つになれば当然、喚び出せるモノのランクも一つ上になってくるからね。
おかし三人娘達もレベルが相応に高まっているようで、この調子だとアメさんばかりかガムちゃん、チョコさんも新たな手札を得ていることだろう。
探査者としての弛まぬ歩み……努力を続けているのは、俺の目から見ても明らかだ。それを今日は見させてもらえるんだから、なんとも楽しみというか期待できるよ。
「よっし行くよサラさんディーネちゃん! とりあえず最初の部屋まで先んじる!」
「頼むねガムちゃん!」
「気をつけて〜!」
ガムちゃんがサラさんとディーネちゃん──サラマンダーとウンディーネを伴い速度を上げて先行していく。
まずは最初の部屋前まで行って偵察、モンスターの様子の確認と場合によっては足止めや牽制を行うようだ。
これもまた以前よりもスピードが早くスマートさに磨きのかかった動きだ。あっという間に一人と二体、疾風のように駆け抜けていくのを見つつ俺達も歩き出す。
さあ、探査開始だ!
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