攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
ガムちゃんおよびサラマンダーのサラさんとウンディーネのディーネちゃんが颯爽と駆け抜けた後を追う。
道中何もないにせよ、この段階でもうおかし三人娘は次の段階に移行していた。
戦闘準備だ。斥候組が部屋内のモンスターの確認と牽制を行っている間に、パーティの戦闘担当たるチョコさんが追いつき次第すぐに斬り込める段まで持っていっておく。
それが最近のおかし三人娘の探査スタイルらしい。それなりに無駄のない、探査者パーティとして洗練された流れを確立しつつあるんだね。
「さて、と……ひとまずは始原さん抜きにして、今の私個人の実力を見てもらいますね! 良いかな、アメさん」
「もちろん! 始原様方はもう少ししてからお出でいただくわね〜」
「ああ、毎回《武装化顕現》を使ってるわけでもないんですね。まあ当然ですか」
「アレは正直、今の私にはもったいないくらい強すぎるところはありますから。天狗にならない程度に頼らせてもらうくらいがちょうど良いのかなって。ほら、私調子乗りですし」
意外なようなそうでないような、いきなり始原の四体と《武装化顕現》のコンボでフル武装するかなと思っていたところにひとまずは自分だけの力を示すと腰に佩いた剣を抜き放つチョコさんに、俺は納得と感心の意を示した。
武器化した始原の四体達は威力をセーブしているとは言え、強度と威力だけで言うならこの世における最高ランクだ。下手すると聖剣さえ超えている。
そんなチート武装に頼りっぱなしだと、肝心要の自分自身の実力向上にはつながらない。そうチョコさんが危惧するのはある種当然のことだろう。
そしてその上でひとまずは自分自身の力で戦い修行し、いざとなれば始原の四体を喚び出して協力してもらうやり方を選んだ。彼女やおかし三人娘の判断は、地に足のついた実直なものと言えよう。
自らを調子乗りと言うチョコさんだけど、むしろよくここまで手にした力を自制できていると思うよ。
これには関口くんも香苗さんも感心してうなずいているね。探査者としての徳島千代子が、気高く誇り高い戦士の矜持を持ち合わせているのは誰の目にも明らかだった。
付随して関口くんが、準備するチョコさんを指して俺達に説明する。
「チョコは武芸百般スタイルだから、携帯式の槍や弓も隠し持っているんだ。状況に応じて剣と槍、あるいは弓でレンジを切り替えて攻撃するやり方も今現在、模索中だ」
「《武装化顕現》にも対応してるね。弓はアレだけどたしか……四体揃って武器化するゴンベの剣が遠距離攻撃手段持ってたしそれ用かな。ノナメの槍が自在に動く、フルオートスピアリングシステムだっけか」
「そう、それ用でもあるな……ていうか改めて聞きたいけど山形、あの始原の四体ってのはなんなんだ? こないだ初めて見た時いろいろビックリしたぞ、おかし三人娘があまりにも強力な存在の後ろ盾を得ているっぽいことに」
「あ、あはは……それはそのう」
不意に聞かれて口籠る。始原の四体については当然、関口くんももう知っているんだけど具体的なところは当然、何も知らされていないんだろう。
それでも俺経由で身につけたことや、今のようにやたら詳しいことに訝しんで尋ねてくるのは必然といえば必然だ。
さて、どう答えたものか。システム領域については当然教えるつもりはないものの、そうなると俺が始原概念を知っているのがなんで? って話にもなる。
……まあ、こんな時には決まって頼れるあの方のお名前をお出しするしかないんだけどね。苦笑いしつつ、彼に応える。
「お、俺もソフィアさんから聞かされた話を伝えてみただけなんだよ実際。そんでもって始原の四体とも多少やりとりがあって、その縁でちょっぴり詳しいだけなの」
「それでか。統括理事も大概謎な存在だよなあ……お前がスキル博士かってくらいスキルに詳しいのも統括理事経由か?」
「え? あー、そこはちょっとだけかな。そっちは興味があって独自に調べてるってだけだし」
「自前かよ! ……ま、そのおかげでアメやガムは助かってるんだ。感謝してるよ」
うーむ、困った時のソフィアさん。いやマジでシステム領域由来の知識について突っ込まれた際、基本的にあの人の名前を出しておけば大体納得されちゃうから逆にすごいよね、どんだけだよあの人。
そもそも本人が社会的にもあまりに神秘的な存在すぎて、ソフィア・チェーホワならあらゆることをどんな範囲でも知っていてもおかしくないってナチュラルに思われてるからこその隠れ蓑なんだね。
とはいえなんでもソフィアさん頼りにしてるとボロが出かねないし、擦るのはある程度までにしておきたいところだ。スキル博士なのは俺自身の自主勉強の結果ってことでも説明つくからね。
関口くんもそれで納得してくれたみたいだ。良かった良かった……細かいところをあまり問い質されるとしどろもどろになりかねないからね陰キャ的に。
そもそも説明することそのものにうっすら苦手意識はあるのだ。ぼっちだったもの。
「……と、見えてきた。部屋の前、ガムちゃんにサラさんディーネちゃんがいる」
「なかには突入してないのね。足止めするほどでもないのかしら」
「ふむ? ……ですがすでに行動は起こしているみたいですね。部屋内、火が撒かれていますよ」
「あっ、ホントだ。まあまあ燃えてる」
話しているうちに見えてきた最初の部屋。その前に陣取る一人と二体、ガムちゃんと火と水の精霊達だ。
斥候の都合上、内部にいるモンスターに対して何かしらアクションを起こしているのか……香苗さんが言うように彼女らの向こう、モンスターがいる部屋にはたしかに火が起こされていた。
まあまあ燃えてる。
到達した矢先にバーニング着火部屋を見せつけられた形になる一同に、振り返って覇王忍者ガムちゃん様が満面の笑みを浮かべた。
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