攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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天才特有のなんかふわっとした表現

「ふふふ……内部にゴブリンが5体、陣取っていたので先んじて仕掛けておきました、ドーモ覇王忍者です」

「ど、どうも」

「ちなみに部屋内の光景は私の《忍術》、火遁とサラさんの炎とのコンビネーションで消火、鎮火はディーネちゃんに任せるのが最近のセオリーです。いぇい」

『くきゃ』

『らら』

 

 そうですか覇王忍者すごいですね、と言わざるを得ない光景だった。追いついたガムちゃんとサラさんとディーネちゃんのさらにその先、ダンジョン最初の部屋内がまあまあ勢いよく燃えているのだ。

 《忍術》と概念存在たる火の精霊とのコラボレーション・アタック……以前にも見たことがあるけどその時とは比べ物にならない規模と威力になっているね。

 

 そんな炎に燃やされて、たしかにゴブリンが逃げ惑っているのが俺の目にも映った。こちらを視認して突撃しようと棍棒を構えているのもいるけど、特に部屋の入口付近が念入りに燃えているので近づこうにも近づけないでいる。

 完全に火攻めの構図だ。覇王忍者さんによる身も蓋もない先制攻撃が、完全にクリーンヒットしていた。

 

「ぐぎゃぎゃ!? ぐぎゃぁーっ!!」

「うわー、滅茶苦茶熱いね相変わらず。ガムちゃんとサラさんの連携攻撃って、互いに互いの威力を増幅し合うからなんかすごいことになりがちだよね」

「まあ、そうなるように私側で調節してますんで。サラさんの吐く炎はちょっと粘度があると言いますか、ネットリ感があるので……持続性が高いですけど広がりは良くないんですよね。そこに私の火遁をサラッと感強めにして導火線よろしく部屋中に撒いて、誘引させる形で大惨事にしてみた次第です」

「粘度? ネットリ感とかサラッと感とか……ガムの表現は感覚的だな。山形、理解してやれるか?」

「ま、まあニュアンス程度には……か、香苗さんはどうです?」

 

 どうもガムちゃんが意図的にサラさんの炎を増幅させるように火遁を使ったようだけど、どうも感覚的な物言いが目立つ。

 関口くんは理解しかねるとばかりに首を傾げるけど無理もないよ、炎に粘度とか意味不明だし。つまりガムちゃんの主観による、完全に彼女だけの物差しでの話をしているわけだしね。

 

 なんとなしニュアンスくらいはわかるけど、正味俺としても共感は難しい。

 そんな覇王忍者さんに伝道師さんこと香苗さんが、ふむと顎に手をやり感心して応えた。

 

「天才にありがちなファジーな表現ですね。新潟さんはどちらかと言うと理論派の傾向がありますが、口下手……言語化しての出力に難があるところは以前から見受けられます。おそらくは彼女のなかに確固たる理屈があった上での行動なのでしょうが、それを本人でも正しく表現できないゆえにそうした曖昧な物言いになるのでしょうね」

「んぐっ……!? き、急に刺してきますね御堂さん。自覚はある分、ダメージが……毒舌だとかそのへんも含めて、どうにかしたいとは思うんですけどね」

「他意はそこまでありませんよ、悪しからず。そうした部分はあなたの課題と言えますが、反面、立派な個性だとも思います。難しい塩梅なのを承知で、うまく折り合いをつけていってほしいと思いますよ」

「な、なるほど〜……たしかにガムちゃん、自分の想いを伝えきれてなさそうな時があるものね〜」

「んぐぐぐ……っ! ご、ごめんねいつもアメ姉、チョコさん……!」

 

 怖ぁ……冷静かつ的確な指摘にさしもの覇王忍者ガムちゃん様もダメージを禁じ得てない。

 間違いなくこの子は天才に分類される感性の持ち主なんだけれど、それゆえか言語化が適切でない場面が多いってのは俺としてもいくらか思い当たる節はある。

 

 ふとした拍子に出てくる毒舌なんかも、もしかしたらその範疇に入るのかもしれない。自分の想いや考えは確固たるものとしてそこにあるのに、どう表現したら良いか考えあぐねて結果的に直截的すぎる言い回しになっている、とか。

 本人も気にしているあたりその可能性は高いので、やはりここは香苗さんの言うように今後の課題として少しずつでもうまく折り合いをつけていってほしいと思うよ。

 

 ともあれ、攻撃は続行中だ。ゴブリン達もそろそろ炎に巻かれて抵抗するのがしんどくなってきたのか動きが鈍って来ている。

 それを頃合いと見たのか、ガムちゃんはウンディーネのディーネちゃんに指示を出した。鎮火するのだ。

 

「そ、そろそろかな……ディーネちゃん、鎮火よろしく!」

『ららっ! らーらーらー!!』

「ん……水の精霊だけあってやっぱり水を放出するんだ。シャワー程度の勢いだけど消火はきっちりできてますね」

「今さらですが、こうして見ると特殊能力を用いる頭数を増やせる召喚系スキルはやはり便利ですね。手札を増やせば増やすほどできることが広がりますから」

 

 気合をふんすと入れた水の精霊が、手からおもむろに部屋全体に向けてシャワーを放った。勢いこそそこまででもないのだが、水自体に力が込められているらしくあっという間に炎を打ち消していく。

 香苗さんが改めて感心したふうに零しているけど、そうなんだよこれが召喚スキルの強みなんだ。喚べる概念存在が増えれば増えるほどできることが多種多様になっていく。

 

 何しろ今回のように複数体呼び出せば組み合わせは無限大だからね。その極限が愛知さんなわけだ、彼女のやってることも相当多岐に渡っていたし。

 翻ってアメさんはまだまだ初歩の初歩ではあるんだけれど……火と水を同時に扱えるだけでも、もう便利だってのは分かる話だからね。

 

「チョコさん、出番ですよ! 弱ったゴブリン計五体、煮るなり焼くなりしたので後はご随意にお願いします!」

「了解! ガムちゃんとサラさんとディーネちゃんが整えてくれたこの機会、後は徳島千代子が引き受けます!」

 

 あっという間に部屋内の炎が消え、残るは水に濡れた土塊の部屋とそのなかで、燃やされて息も絶え絶えのゴブリン五体。

 矢継ぎ早にガムちゃんが指示を放った。ここから先はチョコさんの独壇場だ。剣を構えて部屋に踏み出す、彼女のお手並みをさあ、拝見しよう!




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