攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
初戦は問題なしの完全勝利。
五体のゴブリンなんてのはかつてのおかし三人娘からしてみれば、決して楽勝ってわけでもない規模の敵構成だったろうに、今となってはまるで危なげない連携と実力で難なく突破できていた。
チョコさんの奮闘ももちろんながら、そこに至るまでのガムちゃんとアメさんの活躍も見逃せない。
斥候として先行しつつサラさん、ディーネちゃんと連携して先制攻撃しておいたのが特に大きかったからね。あらかじめ消耗させて置かなかった場合、チョコさん一人で五体のゴブリン相手ってのはなかなかシビアだったんじゃないかってのは思うよ。
「おかし三人娘の基本戦術は大体、こんな感じですね。私やアメさんが喚び出した概念存在さん達で先回りして偵察やら奇襲やら足止めやらして、そこを切り込み隊長チョコさんが突撃してトドメを刺す、みたいな」
「ただ、毎度毎回やってるわけでもないですね〜。戦術のバリエーションを持ちたいってガムちゃんが言うので、いろんなやり方を今も模索中なんです〜」
「実際、前に見たけど別の戦法もいくつか編み出してるしな。斥候や先制に頼らない形での戦いの組み立て方もいろいろ、考えているみたいだ」
「なるほど……戦術の起点がワンパターンだと、それができないって時に慌てちゃうかもだしね。さすがだよ、ガムちゃん」
「覇王忍者ですから。ふふん!」
今しがたみたいなやり方のみならず、三人一組のトリオだからこそ取れる様々な戦術戦法を模索中だというおかし三人娘。
特にガムちゃんがやはりこのへん、指揮役として様々考えているみたいなんだね。覇王忍者として胸を張る意味はよく分からないけど、自分達のできることを常に模索しようって考え方はすごいよ。
何しろ今はまだまだだけど、今後アメさんが召喚できる概念存在を増やしていけばその分だけ手札も増えていくからね。
それを毎度毎回、同じようなやり方だけで使い続けるのももったいない話だろう……手札が増えればコンボも増える。コンボが増えればあらゆる場面状況に応じてその都度最適な戦術を取る必要が出てくる。
たぶん、ガムちゃんもそこを踏まえて今のうちから考え始めているんだろう。高い向上心とモチベーション、何より指揮役としての頭脳や判断力あっての先を見据えた動きと言える。
覇王忍者は伊達じゃないな、いやマジで。内心にてやはり感心する俺の傍らで、香苗さんも香苗さんでチョコさんの槍捌きについてコメントしていた。
「徳島さんの槍術もみごとでした。葵さん直伝の、祖父から伝わる技とお見受けしましたが」
「はい! 早瀬さんが槍を使うならどうぞ参考にーって、早瀬流って言うらしい流派の技をいくつか教わりました!」
「相変わらずはっはっはーとか独特の笑い声してましたけど、さすがA級だけあって実力はガチなんですよねあの人。おかげさまでチョコさんが強化されたので、非常に大助かりです」
「早瀬光太郎さん……探査史にも残る大英雄だよなあ。今もあの人が創り上げたクラン、早瀬会の後継クランがいくつもあるし。その孫の葵さんも若くしてA級だしで、すごい血筋だよ」
葵さんの祖父、光太郎さんから続く槍の流派その名も早瀬流。その技のいくつかを伝授されたそうで、チョコさんもある意味早瀬流の人になった形だね。
関口くんも光太郎さんに関しては結構、知っているようで何やらしみじみリスペクトしているよ。探査史にその名を刻む英雄だし、同じように現代の探査者達からは相当な敬意を寄せられているんだろう。
その孫である葵さんから技を受け継いだチョコさん。血筋によらずこうして、過去からいろんなものが受け継がれていき、そしてまた未来へといろんなものを受け継いでいくんだろう。
歴史というものの積み重ねを垣間見た気分になりつつも、俺は最後にアメさんを見た。いつの間にやら肩にサラさんとディーネちゃんを乗っけて、なんだか和む光景になってるよこの人。
「アメさんもおみごとです。サラマンダーとウンディーネを二体、同時に召喚しての連携はあなたの召喚者としてのレベルアップを如実に物語っていましたよ」
「ありがとうございます〜! サラさん、ディーネちゃんもありがとうございます、おかげで先生に褒められたわ!」
『くきゃくきゃ! くきゃきゃ、くきゃ!』
『ららら〜。らーらー、らー!』
「うふふ、くすぐったいわ〜」
妖艶なスタイルの巫女服お姉さん、そんな見た目のアメさんだけど中身は清楚というか幼気が勝つ。俺の言葉に無邪気に喜び、サラさんとディーネちゃんに頬擦りされて嬉しそうにしている姿はほのぼのって感じだよ。
しかし、この気質こそが彼女の一番の特性なんだろうな。純真無垢で清楚な気性にして、概念存在に対してリスペクトを欠かすことなく丁寧に、しかし柔らかな気さくさで接する自然体のスタンス。
始原の四体達が揃って首ったけになるほどに、彼女は概念存在からのウケが良い条件を揃えているのだ。
たぶんだけどオーディン神やイヴさんばかりか、悪魔セーレやオノスケリス、アドラメレクなんかもこの人を見れば気に入るんじゃないかな。契約の対象として見るかは別にしろね。
個人の好みに依ることのない、概念存在が共通して持つ人間に対して好ましいと思う本質的な部分。
それが詰まったチート級の愛され体質なのが、この鹿児島天乃という召喚スキル保持者なわけなのだった。
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