攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
もはやF級探査者パーティの域には、まったく収まらない器へと昇華したと言えるだろう。
おかし三人娘の実力は各個人の高さもそうだけど、連携することで何倍にも高まっているように思う。
ガムちゃんの《忍術》とチョコさんの《弓術》がコラボレーションした連携技、シノビブレイバーなる新流派がその象徴と言えた。
二つ目の部屋、モンスターが消えてがらんどうになったところで軽く小休止を挟みつつ今しがたの戦いについてコメントする。
「ガムちゃんの各属性攻撃をチョコさんの武器に宿して攻撃する。ゆえにブレイブブレイバーならぬシノビブレイバーなんだと思うんですけど、今現在はどのくらいまで技や連携を構築できているんですか?」
「えーっと、私のほうは剣と弓矢を使う時に限って、ガムちゃんのほうで火遁と風遁を付与できる感じです、山形さん」
「ふむ。徳島さんのほうは察するに、扱い慣れた関口譲りのブレイブブレイバーを用いる武器だからこそできることなのでしょう。新潟さんのほうは水遁、土遁の付与はまだ難しい塩梅なのでしょうか? 《忍術》の感覚はさすがに分かりかねますので、一応ながら聞いておきますが」
「そうですね……シンプルにどう付与するかがイメージしづらいところがあるんですよ、水とか砂岩とか。炎とか風は何となく、刃物の部分にまとわりつかせておく感じで成立できましたけど」
何をおいても先ほどのバトルにおいてシノビブレイバーが目玉だったもんで、俺も香苗さんも興味津々に尋ねては反応からアレコレ考えていく。
チョコさんが現状、合体攻撃を剣と弓矢でしかこなせないのはそれが元々、関口くんから受け継ぎ使い慣れたブレイブブレイバーを扱う武器だからだってのは分かる。
つまり今後、慣れていくにつれてほかの武器で扱う別の流派と技とかでも《忍術》との連携は可能だろうね。
他方、ガムちゃんのほうはちょっと難しい話かもしれない。各属性を付与できるっても、水と土に関してはどういう形でエンチャントすればいいのかイメージしにくいと本人が困っているためだ。
言われてみればたしかに、炎とか風を纒った武器で攻撃! なんてのは漫画やアニメなどでもよくある話なんだけど、水や土を! なんてのはなんとなし、前者に比べてそう見かけないイメージはあるよね。
どちらかと言うと水は癒しとか、土は防御とかって方向が多い気がする。いや、それで言うなら風も速度とかなんだけど……炎も風もなんとなし、攻撃用って印象は個人的にはあるかな。
彼女も似たようなものなんだろう、それゆえに現在でもどういった形でチョコさんと連携するのかを模索中とのことだった。
「いろいろ候補は浮かんでるんですけどね、そもそも連携関係なしにまだまだ《忍術》の各属性遁術を扱いきれてないところもありますから。こればっかりは今後の課題ですね」
「私も……剣と弓矢だけじゃなくてそれこそ槍とかでも、ガムちゃんの後押しを受けつつ技を放てるようになりたいですね。そこからどんどん別の武器術にもつなげていって、自分の可能性を広げたいです」
「あ、課題ということでしたら私も、その〜……今後いろんな概念存在さん達とお知り合いになって、そしてお力添えいただけるようになりたいです。あと最低限自己防衛用に、何かしらの技術も身につけたいですね〜」
「なるほど。三者三様に自分達なりの課題を見つけ、その克服に取り組むつもりなのですね。素晴らしい姿勢です、探査者としてその向上心は、率直に敬意を持てます」
スキルに対する理解の促進と習熟。扱える武器の幅と技術の深化拡大。そしてさらなる未知の概念存在との接触と自己防衛の取得。
おかし三人娘はすでに、自分達で自分達の現状と今後の課題を見つけ出し、それに向けて取り組む気構えでいるみたいだ。香苗さんがその姿に微笑み仰るけど、俺も同感だよ。
よりよい自分を夢想し、それに向かって取り組めることは素晴らしい。時には挫折したり疲れて立ち止まることだってあるだろうけど、それさえ含めてそこには必ず意味と価値があるんだ。
おかし三人娘もまた、時には行き詰まったりすることも今後あり得るだろうけど……けれど必ず、その経験すべてが彼女達の人生を素敵に彩ってくれると信じたい。
そのあたり、自分自身で思うところもあるんだろう関口くんが一歩前に出た。
優しい眼差しで三人を見やり、そして声をかける。
「少しずつで良い。そうやって考えながらいろいろ試していけば、そのうちにでも何かとっかかりはきっと見つかるさ。俺だってそうだったからな」
「関口さん……」
「数年もの間、腐ってみんなに迷惑をかけたようなやつでもどうにかやれてるんだ。ひたむきな想いでまっすぐ前を向ける三人なら、もっともっと、どこまでも進んでいける。だから自分を信じて、無理しすぎないようにな。時には、足踏みすることだって大事なんだと思うから」
「…………そうですね。それは関口の言うとおりです。一時、停滞していたとしても生きてさえいればいつか、どこかで何かがきっとあります。それだけは忘れないでください」
香苗さんも併せて、ひどく実感の籠もった言葉だ。俺もおかし三人娘もただ、二人の想いをしかと受け止める。
事情はそれぞれながら、彼も彼女もいろいろあった末にここにいるからね。それを踏まえて、後進の俺達に教えてくれているんだ。
たとえ立ち止まったとしても、行き詰まったとしても、生きていればいつかどこかで何かがきっとある。
良いことでも、悪いことでも。畢竟、そんなことの繰り返しこそが人の世の生というものなのかもしれないね。
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