攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
10分ほどの休憩を挟んでいざ、次なる部屋へゴー……なんだけども。その前にそろそろ頃合いということで、アメさんが《召喚》の体勢に移行した。
彼女らおかし三人娘にとっての現状、一番の武器にして切札、奥の手。そして俺にとってもゆかりあるモノ達を喚び出すのだ。
すなわち始原の四体。始原概念ネムレス、ノナメ、ムメ、ゴンベ。
それはこの世界における一番最初の概念存在にして、以降ありとあらゆる概念存在達のオリジンたるモノ達だ。
そしてその最大の特徴はやはり、召喚に際してノーコストで喚び出せるという点にあるだろう。
「三人から少し話を聞いただけでも、あまりに異様な話だと俺にもすぐ分かったよ……召喚条件がなく、けれどアメにしか喚び出すことができないモノ達。その存在についての知識を知らなければ喚び出しようがないモノだなんて、なんで山形がそれを知ってたんだか」
「い、いやあハハハ。その、まあ知り合いの方から与太程度に聞いてまして」
「そういうところもお前の人脈のヤバさなんだよなあ……どうあれおかげさんでおかし三人娘に、桁違いに強力な武器が手に入ったんだから指導教官としては感謝してるんだけどさ」
さわり程度には話を聞いていたんだろう、関口くんの問いかけにちょっとオドオドしつつ誤魔化し笑いの俺ちゃん。
そこそこ親しい、けれど突っ込んだところまでは知らないような間柄の彼みたいな人からこのへん突っ込まれるのは結構緊張するんだよね。うっかりボロを出したりしないかなーって。
まあ、向こうもいい加減俺の人脈がヤバいことはご存知なので、その関連で納得してくれてはいるみたいだけれど。
やはりソフィアさん筆頭に世界的権威のネームバリューってすげー! と感心するやら慄くやらだよ、実際。
さておき、アメさんが祈るように手を組みスキルを行使する。ノムくんシーぴょんも戦闘終わりに還っていったので、ここからは始原達の力を借りて戦うつもりみたいだね。
神秘的な空気さえ醸し出しつつ、彼女はそして祈り奉る。
「条件は1つ。その名、その存在を存知すること──お出でくださいませ。ありとあらゆるモノの根源、原初の概念。願わくば矮小たる我が身に寄り添い、何卒お力添え賜りますようお願い申し奉ります」
相変わらず真面目で丁寧、かつ誠実で真摯な口上だ。生まれ育ちが神社関係で、御自身も巫女として信心深いアメさんならではの姿勢だろう。
彼女のこうした態度こそ、召喚スキル保持者として何よりもの才覚才能と言える。概念存在はどうしたところで人からの畏怖、信心を求めているモノが多いからね、こんなにもまっすぐな想いを向けてくる人間には、できる限り応えたくなるものだろう。
あるいは現状最高峰の召喚者、S級の愛知さんにさえ持ち得ない愛され資質。
それを生まれながらにして備え育った鹿児島天乃の、切なる祈りが今、次元を超えて彼らの元へと届く。
「どうか、どうか、お助けくださいませ──始原の御方々様!」
『────聞き届けたり! 我ら四体、召喚者の下にて集うこと厭わず!!』
助けてください。力を貸してください。お慈悲を、どうか──そんな健気な求めに応じ、現世にソレらは降臨する!
光の柱とともに現れる、異様なまでの魂を持つモノ四つ。それぞれ1mほどの大きさの犬、猫、インコに少女の姿を象り姿を見せた。本来は形なきモノ達なんだが、アメさんが好きそうな姿でやってきたのだ。
犬の姿のネムレス。猫のノナメ。インコのムメ。そして少女の姿のゴンベ。
いずれも桁違いの魂を備え、そこに在るだけであまりに強い存在感を放つ。戦闘力こそ皆無ながら魂の質だけは創造神すら超えてるからな、こいつら。
『始原概念ネムレス、ここに推参ワンワン!』
『始原概念ノナメ、同じく来臨ニャンニャン!』
『始原概念ムメ。やってきたよピーピー!』
『始原概念ゴンベ。召喚者の求めに応じて参上したりゅんりゅん!』
「待てや」
なんだその語尾、お前らマスコットのつもりかもしかして。
思わず山形くん渾身のツッコミを入れてしまうほどのトンチキな口調。語尾は分かりやすく個性が表せられるけどあんまり雑だと適当感あふれるって知らんのか、こいつら?
ワンニャーピーりゅんと、まあ出てきた瞬間やかましい四体組。言ってて信じがたいことに思われるかもだけど、コイツらこそがこの世すべての概念存在達の始祖にして原始概念存在なんだよね。
あっけにとられる香苗さんと関口くんはともかく、おかし三人娘は特に反応することもないあたりすでに三人にはやってるんだな、この挨拶。
そのへんも含め俺は、ネムレス達に呆れながらも声をかけた。
「久しぶりだな、始原達……なんなんだその語尾、キャラ付けのつもりか?」
『おう公平! 久方ぶりだな、会えて嬉しいぞワン! ……この語尾、そんなに変か?』
『よりアメやおかし三人娘に愛される概念存在となるため、目下のところ個性を模索中なのよねえ、あ! ニャンニャン!』
『正直自分でもどうかと思ってるんだけどねピー。まあものは試しでやってみないと分かんないかなってピー』
『ところで犬のワン、猫のニャー、鳥のピーは分かるが我のりゅんりゅんはちょっと無理矢理過ぎたろうか? 少女の語尾など分からんのでなあ』
「そもそも語尾で独自の個性を得ようとするんじゃないよ……」
なんとも力が抜ける話だ。
おかし三人娘に気に入られたい気持ちは分かるけど、だからって無理くり自分らに個性付けせんでもいいだろうに。
これには一同あっけにとられるやら呆れるやら微笑むやらだ。ま、相変わらずノリの軽い4人組ということで良いかもねー。
いや、語尾はさすがにないけども。
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