攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
始原の四体を喚び出してそのまま進んで3つ目の部屋。やはりいるのはゴブリンが2体だ。
F級って基本、そんなにモンスターの種類もないからね。ゴブリンとスライムが基本で、後はマイナーチェンジ版みたいなやつとそんなに出てくることのないレア種がいくらかって程度らしいよ。
だからこそ新人探査者にとっては都合が良いんだけどね。このへん、ダンジョンの規模に紐付けして発生するモンスターの傾向を絞ったシステム領域側の配慮を感じる。
モンスター生成プログラムはどうともできないが、それをダンジョン生成プログラムのほうで多少の指向性を持たせることはできるってわけだ……もちろんそんな無茶な真似するから、各種エラーやバグが起きちゃってるって側面もあるんだけどね。
『よし! あの程度の雑魚ならば我だけでいけるな! チョコよ我を振るうが良い、この始原概念ネムレスの剣をな!!』
『あっ、ズルいこの犬! チョコちゃん我よ我、ノナメ様の槍をこそ選ぶべきよ!!』
『猫も大概じゃないかなあ。あっ、ちなみにこの始原概念ムメはガントレットってことで防具でもあるからね、チョコには確定で装備してもらえるんだ、羨ましがってくれたまえ!』
『代わりに武器遣いにも適さんがな……やれやれ、大ボス相手でもなければ我は選択肢に挙げるべきではない。量より質を選んだとは言え、こういう時には少し悔やまれるな』
「怖ぁ……」
「頭がおかしくなりそうな光景だ、犬に猫にインコが誰が武器になるかで言い争ってる……」
いざ戦うぞ! という段になってじゃあ最初は誰がチョコさんの力になる? ってところで言い合いが始まった。
ネムレス、ノナメが主に剣と槍ってことで争い、それを煽りながらドヤ顔してるガントレットのムメがいて、それらを後方からしょんぼりしているゴンベがいるのだ。
それぞれ1mくらいの犬猫インコがワンニャーピーと喚きまくっている姿は見るに堪えないというか、大分狂気寄りの世界にも思えてしまう。関口くんなんか若干ドン引きしてるしね、分かるよ。
おかし三人娘もあーあーまた始まったよ、みたいな顔してるしこれはいつものことなんだろうな。アメさんばかりか三人そのものを気に入ったこともあって、こいつらこういう時には我先に使われたがってるんだなあ。
「始原さん達、仲良いよねなんやかやと。誰が真っ先に武器になるかでここまでコントできるのって相当だよ」
「あ、あわわはわわわ。し、始原様方どうか落ち着いてくださいまし〜」
「うーん、ゴブリン2体だとどっちでも良いというか、どちらにせよ修行にはなるからねー。私はそんなだけど、始原さん達には最初の出番だし張り切っちゃうのかな」
「バラエティ番組などで前のめりに爪痕を残そうとする芸人さんみたいですね……」
香苗さんまでもが微妙に言いえて妙な例えを用いだした、たしかにこう、出番への執着は感じるよねこの動物王国の連中。
おかし三人娘としてもどっちでも良いやって感じで、だからこそ割って入りづらくて眺めてるだけなんだろうけど……さすがに進行の邪魔は良くないな。
こういう時にはおかし三人娘がやはり主体となって決めるべきだし、始原概念達はそれを請われたとおりに力になるべきだ。それが召喚する側、される側の正しい態度というものだろうしね。
というわけで俺は前に出た。始原達とおかし三人娘、それぞれにこういう場合に取るべきスタンスを告げておく。
「はいストップー! 始原達、気持ちは理解するけど誰がどの順番で振るわれるかを決めるのはお前ら自身じゃない。おかし三人娘だ」
『うっ。つ、鶴の一声……』
「そしておかし三人娘も。始原達を尊重してくれてることには感謝しますが、それでも彼らを振るって戦うのが他ならぬあなた達な以上、主体として誰の力を借りるか決めるのはあなた達です。それこそが振るう側の取るべき態度であり、引き受けるべき責任だと知っておいてほしいです」
「そ、それは……たしかに。実際に始原さんを振るうの、私だもんね……! じゃ、じゃあ今回はオーソドックスに剣でいきます! 防具としてガントレットも!」
いつまでも言い争っていても埒が明かんので、勝手ながら仲裁に入る。俺がしゃしゃって何様なんだって感じもあるけど、始原をおかし三人娘に引き合わせたのも俺なのでこれくらいは堪忍してほしい。
ものの道理、責任の所在。それらを語れば始原もおかし三人娘も反論する余地はないようで、反省するようにうなずいた。
別段、仲が悪いとかでなくてむしろ仲良しだからこそのこれだからね。ちゃんと筋を通すことを理解すれば、当然ながら彼らも彼女らもちゃんとやってくれるのさ。
そして今回のところは結局、チョコさんの一声でネムレスとムメが選ばれることになった。そうそう、やっぱり実際に戦う現場の声で彼らは力を引き出すべきだからね。
「や、山形お前……すごいな。よくあんな場面に割って入ったもんだよ」
「始原概念を諌めつつおかし三人娘に対しても正しい態度を指南する……おおこれぞまさしく救世主様による教えそのものと言えましょうやはりおかし三人娘には使徒としての資格がありますねすでに使徒たる天乃だけではありません徳島さんも新潟さんも大いにその可能性はあると言えましょうそもそも新潟さんについては以前から救世主様とのふれあい方がまるで兄妹のようでしかし肝心なところでは敬意を持つ後輩というべき振る舞いが多くかねてより可能性を感じていたのですがもはや今回の探査をもって確定と言えるでしょうそうでなくともスキルの関係ですでに救世主様の弟子とも言えるのがおかし三人娘なのですからこれはもう救世の光としても使徒天乃のみならず他の二人もまとめて帰依していただいて救世の三使徒としてかわいいかわいいアイドルリーベちゃんにも負けないトリオとして押し出していくのが良いと思うのですがいかがでしょうか救世主様」
「怖ぁ……」
「香苗さんもすごいな……急にギアが上がってきた……」
なんとか仲裁できた俺に感心する関口くんだけど、直後に例によって伝道師さんがハッスルしだしたのでそっちにもある意味感心してるのがひどい。
なんだろう、今度はどこ行ってるのかな句読点さん達。万里の長城とか見に行ったのかもしれないね。
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