攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
鶴の一声ってのも変な話なんだけど、俺の提案を受けてチョコさんは即断でネムレスの剣とムメのガントレットを選択した。部屋内のゴブリン二体を倒すため、彼らの力を借りるんだね。
それに伴い、いよいよアメさんのスキルが発動する。召喚系スキルの派生、概念存在を武器へと変換して顕現させる《武装化顕現》だ。
「それでは、参ります! ──スキル《武装化顕現》発動! 対象は始原概念ネムレス様、ならびに始原概念ムメ様!!」
『うむ!』
『任せたまえ!』
「我が願い、我が求めに応じて御身の力を武具と成されませ──お願いします! 私に力を貸してください、私達を助けてください!」
切なる祈り、弱き我らにどうか力をと希う声。それに呼応して犬のネムレスとインコのムメが、光となって姿を消していく。
《武装化顕現》発動にあたっての処理だな。喚び出した概念存在をそのまま武器化させるのでなく、一度元いた領域に帰還させてそこから武器化した状態で喚び出すのだ。
今回の場合は概念領域でなく、始原概念が普段存在している専用領域、システム領域に最も近しい"始原領域"とのアクセスだ。
言うまでもなくこれは現状、アメさんにしかできない行為だ……始原概念を喚び出せるのが彼女だけだからね。こればかりは愛知さんにさえ及ばない、鹿児島天乃だけのオンリー・ワンだろうさ。
さて、来るぞ。小さなワームホールがチョコさんの両腕と眼前に展開され、そこから武装が飛来する!
『──求める声に応えたり! 始原概念ネムレス、剣の姿にてここに顕現せり!!』
『同じくここに、始原概念ムメ! 手甲の姿にてここに顕現!!』
「うおおっ!? あ、相変わらず出鱈目な風格の装備だ……」
「名のある武器のなかには、自ずと力を発揮する妖刀魔剣の部類があるとは聞きますが……武器化した始原概念の方々は、それらに類する存在なのかもしれませんね」
黒い刀身に華美な装飾の、きらびやかな印象を受ける大剣。チョコさんの身の丈よりも少し大きな、剣となったネムレスだ。
そして彼女の両腕にも装着された、白銀のこれまたゴージャスな意匠のガントレットのムメ。思うにこいつら、おかし三人娘を盛り立てたいからって見た目派手にし過ぎである。
そんな二つの武装からは、関口くんや香苗さんをして慄然とせしめるほどの威容、風格が放たれている。犬やインコの時にはなかったエネルギーを、燦然と纒っているのだ。
《武装化顕現》と始原概念のシナジーだね。武器化の際に参照する項目が魂の格だもんで、そこについては創造神さえ超えている彼らとの相性は抜群なのだ。
武器としてならば間違いなく、この世においてトップクラスだろう。神奈川さんの聖剣さえ超えてしまっているように思う。
そんな武器化ネムレスとムメを装着して、振るうチョコさんはそのまま一気に部屋内へと躍り出た!
「武器化始原さん達の顕現時間は、まだまだそう長くはない! だから一気にケリをつけます──《剣術》! オリジンブレイバー・ネームレスソニック!!」
「っごげぎゃあっ!?」
「ぐぎゃぎゃ!? ぐぎゃぎゃぎゃあっ!!」
「剣風を飛ばした!? 最近よく見るな剣からなんか飛ばすの! 若干常識離れしてないみんな!?」
「平然とビームをぶっ放すやつが言うことか!」
ネムレス剣を振るってのオリジンブレイバー。その初撃はなんと、斬撃を飛ばすという漫画で見かけるアレだった。
思わず叫んじゃったよ俺ちゃん、いやマジで最近結構見るようになったな、剣からビームだ衝撃波だぶっ放す人! いやまあ、そしたら即座に隣の関口くんからマジレスツッコミ食らっちゃったのでぐうの音も出ませんけども。怖ぁ……
しかし、まだまだF級な実力の段階でもうこんな芸当ができるのかチョコさん。武芸百般にしてバトルセンス抜群の天才とは理解しているけど、それにしてもすさまじいな。
とはいえ威力はそこそこ止まりで、ネムレスを持ってしても衝撃波は著しく斬れ味を落としたらしい。直撃させた一体目がギリギリ倒せた程度ってところで、ゆっくりと光の粒子に変わっていくのが見えた。
その隣の二体目のゴブリンも、面食らいつつ激昂してすぐさまチョコさんに飛び掛ってきているね。
さあ、どうする? 襲いかかる魔の手に、チョコさんは冷静に向き直る。
「ぐぎぎぎぎゃっ! ぐぎゃあっ!!」
「回転を意識して放つ、オリジンブレイバー! ──ネームレスサイクロォォォォォォンッ!!」
「っ、回った!? いえ、流れるように回り込みながら何度も斬撃を!」
「チョコさんの新技……最近よくダンスの練習してるなと思ったら、あんな流暢でド派手な技を編み出してるなんて。やりますね……!!」
「カッコいいわ〜、チョコちゃ〜ん!!」
放たれる第二のオリジンブレイバー、その名はネームレスサイクロン。ステップを刻みながら体捌きはひらひらと舞い踊るように回転し、そこから何度となく斬撃を放っていく。
正面から袈裟懸け、回り込みすれ違いざまに横薙一閃。さらに回転して逆袈裟、最後に後ろに回り込んで首を刈り取る四連撃。
スピードこそF級相当、はっきり言って速くはない……けれど、すさまじい姿勢制御と多種多様な斬撃を移動とともに行う高等テクニックだ。
一瞬にして四斬撃。しかも動き回りながら、明らかに狙った位置に思い通りのタイミングと軌道で放てている。これがどれだけすさまじいものなのか、門外漢の俺にもわかったよ。
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