攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
身のこなしや膂力、動き方はまだまだ粗が多い。実際、なんだかんだとE級上位くらいの探査者相手と比較すればまだまだ、始原概念の力を借りたとて総合的には劣るだろう。
それでも。チョコさんが今しがた武器化ネムレスとともに見せつけたオリジンブレイバーの剣技は……将来的にはそんな地点などはるかにぶっちぎってしまうんだろうという、すさまじい可能性があったのもまた、事実だった。
「ふぃー、勝利! ネムレスさん、ありがとうございました!」
『うむ、よくやったなチョコ。まだまだ振りも甘ければ動きもぎこちない部分が多々目立ったが、しかし現時点でここまで動ければ我としては問題ない。精進し続けるのだぞ』
「はい! これからも頑張ります!」
ゴブリン二体を剣風による斬撃、および舞いながらの斬りつけ四連斬にて難なく仕留めたチョコさんが、ネムレスと和気藹々と互いに労い合いながら戻ってくる。
そんな姿をおかし三人娘のアメさんとガムちゃんもまた出迎えるけど、俺と関口くん、香苗さんはそれぞれ顔を見合わせて今しがたの一連の動きを見定めていた。
正直なところ、驚くべき成長速度だと言う外ない。剣技の威力や発想もそうだけど、何より馴染み方がしっかりしてるように思えるんだ。
俺が初めて武器を握った時に感じたような、なんかしっくり来ないなって感覚を見てて一切感じなかった。彼女は今のところ相当な親和性でもって、武器化ネムレスを自然に使いこなせていた。
「武器術においては天才的とは思っていましたけど、さすがに成長速度もすごいですね。素の実力の高低とは別に、武器化した始原概念をほぼほぼ手に馴染ませきっています」
「そうですね。通常、F級ばかりかE級の少なくない層であってもなお、自らのメインと定めた武器に対して熟練していないパターンが多いのですが……彼女はネムレス剣に限らず今回の探査で見せた武器群、そのすべてに対して異様なまでに適応しています。これは驚嘆すべきことかと」
「それにオリジンブレイバーですよ、香苗さん。あの子の技、トータルでは荒削りですがもう、元のブレイブブレイバーから完全に変質した自分だけの技になっているように思えます。少なくとも俺には、ネームレスソニックやネームレスサイクロンなんて芸当は扱えない」
こちら三人の見解は概ね一致している──実力自体はまだまだF級。けれど武器の扱いに関してはもう、その域に収まることはない、と。
自分の得物への熟達度ってのは、それが深まれば深まるほどに実力を引き出していけるからね。どれだけ強くとも慣れない武器を振るっていては、馴染んでないのでフルパワーとはなかなかいかないものだろう。
そのへん考えると、ズバリチョコさんは土台がしっかりしているんだ。いかなる武器であったとて、握れば必ず自分の本来の実力を相当発揮できる。
まさしく天才性の発露だ。その結果としてのオリジンブレイバーも、関口くんが舌を巻くほどにオリジナリティに溢れているからね。
「うわわわ! な、なんかめっちゃ褒められてる! ど、どどどうしよう! アメさんガムちゃん!?」
「チョコちゃんの努力の賜物よ〜! いつも本当に頑張ってるもの、評価していただけるのも分かるわ〜!」
「なんです、ちょっと褒められたくらいでテンパるなんてウブな反応しちゃって。こういう時はふんぞり返って天狗になって、オラオラ将来S級になる武芸百般チョコ様やぞサイン強請らんかいオラァくらい言ってやったら良いんですよ覇王忍者的に」
「良くないよ!? むしろガムちゃんだって別にそんな振る舞いしないよね、褒められたらなんやかや殊勝にするよね覇王忍者!?」
「しませーん覇王忍者はしおらしくしませんし悪びれもしませーん天上天下唯我お覇王ー」
「えぇ……?」
天上天下唯我お覇王ってなんだよ。ガムちゃん様の相変わらずな覇王忍者ぶりは、まあそのなんやかや殊勝だろってところまで含めて置いておくとして。
俺達の言葉を受けて照れるやら恐縮するやらのチョコさんを、同じく讃えつつ支える様子の仲間二人の姿は素敵だ。おかし三人娘のつながりの深さ、仲の良さが存分に伝わってくるよ。
優しくて包容力があり、何より武器化した始原概念という強力な装備を工面してくれるアメさん。
自信満々である意味大物、忍術と頭脳と風格で前線から斥候から指揮役までなんでもござれのオールマイティなガムちゃん。
この二人が傍にいるからこそ、チョコさんはなんの憂いもなく前に出ては、自分の持てる力を最大限に発揮してモンスターとも戦っていけるんだね。
それは半年前のような、単なる猪武者スタイルではない。仲間を信じてともに戦う、パーティの一員としての在り方だ。
無論、そこもまだまだ改善の余地はいくらでもあるだろうけど……三人で歩むなかで少しずつ、けれどたしかに経験を積み重ねて新たな境地を見いだしていけるんだろう。
「まったく、なんて先が楽しみなパーティなんだろうね。おかし三人娘ってのは」
「そう思うよな、山形? ……俺も楽しみで仕方ないんだ、あの子達がどこまで行ってくれるのか。俺もまだまだこれからだけど、負けてられないって気持ちにしてもらえる」
おかし三人娘の教官としての関口くんとも語らう。おかし三人娘の未来、歩んでいく道程に素晴らしい展望を期待するのは、俺達だけでなく香苗さんも同じだろう。
見ているこちらも元気づけられるような、どこまでも元気で力強い彼女達三人に、俺はなんだか爽やかな心地さえ抱いていた。
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