攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
召喚スキル保持者にありがちらしい、将来的にどんな探査者になりたいのか微妙にヴィジョンが見えづらい問題。
アメさんもそのへんは絶妙に痛いところだったらしく、あらあらうふふといつもどおりの清楚黒髪巫女お姉さんしぐさを見せつつも一筋、汗を垂らしているのが見える。
無論、将来どうなりたいかが分からないことは別に悪いことじゃない。というか、確固たるヴィジョンを見据えて行動できる人なんてそうそういないと思うよ。俺だってそんなもんないし。
だから別段、これは責め立てているとかって話ではないのだ。誤解を招きかねない流れだと感じ取ったか、香苗さんが少し口早に訂正を入れた。
「少し、語弊があったかもしれません。探査者として目指す地点、なりたい姿というものが決まっていなかったとしてもそれは悪いことではないのを前提として聞いてほしいのです。ただ、方向性というものが大切なのも現実としてありますから参考程度に聞きたかっただけで」
「で、ですよね〜……私もその、実は普段からあの、特にガムちゃんを見ていると自分で自分が不安になる時があって」
「え。私ですか? 類稀なる覇王忍者の才覚ゆえに身近な人の脳を焼いちゃった感じですか?」
「焼かれてないわよ〜!? でも、まっすぐ前を見て歩いてるから、それに比べて私はちゃんとした道を進めているのかしら〜って。ほら、始原様方や概念存在様方を喚び出せたらそれ以後は基本的に、身を守るだけなのが私だから」
「ふむ……」
少し根深い問題かもしれない。要は召喚スキル使用後、基本的に後方で身を守るしか取る行動がない自身と比べて、前線なり斥候なり指揮なりでドチャクソ働いてる覇王忍者ガムちゃん様の姿がまぶしく映っちゃってるんだな。
キョトンとして覇王忍者らしすぎる独特の思考を展開するガムちゃんはともかく、俺は香苗さんと顔を見合わせた。
正直、これはアメさん特有の問題ではない。召喚スキル保持者の大半、あるいは支援系探査者全般に当てはまる話だろう。
戦闘直前まではしっかり仕事があって、そこでこそ輝けるからこそ……いざ戦闘に入った途端に暇を持て余しがちなことで、アタッカーやディフェンダーなど前衛に対して罪悪感を抱いちゃうんだね。
探査者界隈のSNSとか匿名掲示板でもちょくちょくトピックスとして議論があったりするのを見るよ。戦闘中に支援系探査者はどうするべきかって論争を。
基本的には仕事すべきタイミングが戦闘時とはズレているだけなので気にしなくていい、というのが大体の風潮だけれど、当事者からすると居た堪れなさは理屈じゃないんだろうしなあ。
「とりあえず、最低でも自衛はしなきゃということで最近、スキル講習で《合気道》を覚えられるようレクチャーを受け始めてはいます。それと《弓術》とか、遠距離武器を用いて後方支援できないかしら〜、とかも。ただ……」
『そもそもアメの気性として、直接戦闘が向いていないのはあるだろう。この子は健気で優しく賢く素晴らしいが、それゆえに本質的には荒事と無縁なのだ。我らのようなモノを喚び出すだけでも大変なことのように思うぞ。天晴だ、アメ!』
「過保護な幼女だゴンベさん……でも言うとおり、アメさんは召喚スキルで私達に力を授けてくれるから! それが本当に助かってるんだし気にしなくて良いよ! ね、ガムちゃん!」
「それはそう。っていうか、自分の仕事やったうえで空いた時間が心苦しいーとか言い始めたら、誰もがいつでも何かしらやってないといけなくなるじゃん。キリないし疲れ果てるだけだよそんなの。アメ姉ってばオーバーワークしたいの?」
「うっ……それは、ちょっと〜……」
アメさんなりにそのへん、自分なりに解決しようと奔走しているようだけど。ゴンベやチョコさんが言うように、彼女はきっちり自分の役割は果たしてるんだ。
召喚スキル保持者であり、かつ召喚スキルによる味方のサポートをメインスタイルにしているんだから、そこをこなしている以上は文句なく務めを果たしていることになる。
それ以上を求めたくなる気持ちは立派だけど、無理な過労につながりかねないリスクは当然あるからね。
そのへん、ガムちゃんの指摘は的確だ。そんなことやり始めたら、彼女やチョコさんだって戦闘してない時にもいろいろ忙しなく動かなきゃいけなくなる。それこそトラブルの元になりかねないだろう。
緩み過ぎは良くないものの、張り詰め過ぎもよくないのだ。適度に緩急つけてメリハリのある仕事をこなす、それもまた役割の一つなんだね。
『自分で話振っといてこういうのはなんだけど、成長するとか上を目指すってのは、無理して遮二無二突っ走ることとは似て非なるよ、アメ。君は君のペースで、ゆっくりと目指す地点を定めていってくれれば良いんだ。脅かす形になっちゃってごめんね?』
「い、いえ! ご指導ご鞭撻ありがとうございます、ムメ様!」
「それにおかし三人娘は伸び方こそすごいけど、やっぱりまだまだ新人なんだ。目指す地点を定めるよりまず、地に足付けて基礎を固めることが大切ってのは忘れないでくれよ。これはチョコも、ガムもだ」
「関口さん……はい! 肝に銘じます!!」
「……まあ、覇王忍者の道も一歩からって言いますしね。むしろアメさんのペースを見習うくらいが良いかもしれません」
「勝手に諺を覇王忍者ナイズドするのか……」
ムメのフォローに、関口くんからの忠告。目標はそりゃあったほうがモチベーションにつながるけど、なくたってやっていけるしそもそもまずは基礎固めこそが大事な新人さん達だし。
逸ったり焦ったりせず、長い目で見て進んでいくことが結局、一番の近道なんだろうさ。
ところでガムちゃん、しれっと諺を覇王忍者風に改変するのは止めてね?
この子こそ覇王忍者に向かって前のめりすぎるきらいはあるよなあ……と。一直線なところは好感を持ちつつも、若干熱がありすぎる姿についツッコむ俺ちゃんだった。
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