攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
「本当にありがとうございました……! なんとお礼を言うべきやら、さすがは探査者ですね、みなさん!」
「いえいえ! お役に立ててよかったです、はい!」
コアを持ったままダンジョンを出て、入口の穴が消滅するのを確認してからの地上、高校の音楽室。
待機していた教諭さんにチョコさんが代表して報告したところ、先方はずいぶん喜んで大層感謝してくれていた。受け取る側のチョコさんはじめおかし三人娘の、まんざらでもない照れた様子が見ていて微笑ましい。
探査者からするとF級ダンジョンったら規模も小さいし出てくるモンスターもまあ、そんなに強くないしで対処しやすい部類に入る。
ゆえに忘れがちなんだけど、それでも非能力者の方からすると紛うことなく生命の危機なんだ。ゴブリンやスライム相手にも、ステータスがなければまともに戦うことは通常難しいからね。
だからこそ、そんなモンスターを多数潜ませているダンジョンの入口なんてのが日常生活のすぐ近くにあることはそれそのものがリスクなんだ。
そして、それを除去する専門家たる探査者への期待と信頼の大きさもそれに比例する……その分だけ俺達の肩にかかる責任と、使命の重みもね。
おかし三人娘ももちろん、そのことは理解しているんだろう。新規探査者教育でこのあたりの認識とか重みについては、かなり念入りに教わる部分だし。
褒め称えられることに照れはあれど、しかし誇らしく謙虚に。人々の当たり前の日々を護れたことをしっかりと受け止めた彼女らの姿は、まさしく探査者として立派なものと言えるだろう。
「それでは私達はこれにて全探組に戻ります。また、ダンジョンやモンスターでお困りごとがあればいつでも施設にご連絡ください!」
「はい、今後ともよろしくお願いします……おかし三人娘さん達。シャイニング山形さんに関口さんに御堂さんも。本日は大変、お世話になりました!」
高校の正門まで戻り、最後に改めて挨拶して帰路につく。時間的にはぼちぼち夕方、ちょうどいい頃合いだ。
おかし三人娘のたしかな成長、新たな進化を見届けられて大満足な一日だったよ。香苗さんも思わぬ収穫って感じで、伝道師ではなくS級探査者として満足げだ。
そんなわけでサクッと全探組まで戻り、報告を済ます。探査報酬は基本等分で山分けってのがセオリーなんだけど、今回は付き添いに過ぎない俺や香苗さんは遠慮することとして他の四人で分けてもらうことにした。
だって何もしてないし。関口くんは指導教官としての役目を果たしてたから良いけど、俺と香苗さんは見学と軽い助言とかしたくらいだからね。
そんでも探査実績には評価査定もらえちゃうわけだし、このうえ金までもらうのはさすがにどうかという話だもの。
関口くんもそのへんは理解してくれていて謝意をくれたけど、ガムちゃんあたりはちょっと不満げだね。俺の胸元に軽く頭突きめいた突進をかましてきて、甘えるように言ってきた。
「むー。パイセン無欲ですか? さすがにお二人にもお世話になっといてこっちだけで報酬をせしめるってのは、覇王忍者らしからぬ非覇王行為なんですが」
「非覇王行為……? いやいや、付き添いながら実績にはカウントされるわけだしそれだけで十分だよ。香苗さんはどうですか?」
「無論、同意見ですとも。そもF級探査者の探査に同行して報酬まで得るなどそれこそS級としてどうかという話です。どうかお気になさらず、自分達の探査が適正に評価されたことを受け入れてほしいですね」
「こういう場合、報酬を欲しがる先輩方もいるけどいらないって人も当然いる。そんな時は素直にお言葉に甘えるといいさ、三人とも。そこは臨機応変に、いつか借りを返すくらいのスタンスでいい」
またなんかわけのわからない、非覇王行為などという造語が出てきて覇王忍者だなあと思うなどするわけだけども。ガムちゃんのこういう、フェアを重んじるところは好感が持てるよ。
とはいえやはり今回の報酬はおかし三人娘で分け合い、次なる探査活動への励みとしてもらいたいのが本音だ。そこは香苗さんも関口くんも同じだし、揃って彼女らを諭している。
出世払いっていうのかな。今後大成した時、何かあった時に手助けしてくれるのがこの際、よくしてくださった先輩方への報恩だろう。
俺自身、これまで多くの先輩方と探査させてもらってきて、そうした方々にはいつでも報いるつもりでいるもの。
まあ、大半がA級トップランカー以上の界隈上澄みの方々だもんで、そんな機会が来るかはなかなか分からんもんだけれど。
ともかく大事なことは、先達から受けた恩を忘れず感謝と敬意を持つことってところだろうかね。そしてできればそれを、後進へと同じようにしてあげるくらいだろうか。
「……まあ、お二人がそこまで言うなら。でもこの後、軽い食事くらいは奢らせてもらいますよ、ここまでお世話になってるんですから! ね、チョコさんアメ姉」
「もちろん! こっちだって世話になりっぱなしじゃ申しわけないもん」
「先生も伝道師香苗さんも関口くんも、どうぞご一緒にお食事を〜」
おかし三人娘もまた、俺達に対してせめてもの形で報いようとしてくれている。こうまで言われては、断るのも逆に悪いかな。
香苗さん、関口くんと顔を見合わせてうなずく。というわけで急遽ながら、俺達は仕事終わりに軽く食事でも行くことになったのだ。
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