攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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第三段階:一人で邪悪なる思念をやっつけよう!!

 邪悪なる思念との最終決戦、その本懐。

 決戦スキル保持者たちが目指す地点はまさしく俺、山形公平と相棒であるリーベを、やつの本体の下へとたどり着かせることにあると言う。

 

「天地開闢結界と三界機構の無力化。これによって邪悪なる思念は、己の世界を食らった時点の状態にまで弱体化する。その状態のやつを、山形公平が単独で仕留める。これこそがこの世界を救う最後の戦いの、本命だ」

「……えーと。最初から俺とやつをタイマンさせるつもりでいるってこと?」

「そうだ」

 

 そうだじゃねえよ、と言いたいところだが……正直に言うと、そんな気はしていた。

 仲間も何もなし、一騎討ちだ。元々俺がソロ戦闘専門みたいなところがあるスタイルなので、そこは十分にあり得ることだしな。

 

 とはいえ、理由くらいは聞かせてほしい。

 促すとヴァールは、それに応じて話してくれた。

 

「単純な話、山形公平のフルパワーを引き出すためには単独戦闘が前提なのだ。スキル《風さえ吹かない荒野を行くよ》の、発動を妨げることは絶対にしてはならない」

「……えっ? なに、そのスキルになんかあるの?」

「やはり気付いていなかったか。無理もない」

 

 まさかの、俺の最初のスキルに着目しだしたヴァールにビックリ。なんで? って聞くと、なんかしたり顔で笑みを浮かべやがった。こいつ、なにドヤ顔してんだ!

 リーベを思わせる仕草にイラッとする俺に、彼女は驚くことを言い放った。

 

「スキル《風さえ吹かない荒野を行くよ》こそが真の切札だ。邪悪なる思念との戦いを想定した効果を、そのスキルは有している」

「えぇ……?」

 

 あんまり大仰なことを言うもんだからつい、ステータスを開いてみる。

 

 

 名前 山形公平 レベル461

 称号 禁・天地開闢結界

 スキル

 名称 風さえ吹かない荒野を行くよ

 名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た

 名称 誰もが安らげる世界のために

 名称 風浄祓魔/邪業断滅

 名称 ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で

 

 名称 風さえ吹かない荒野を行くよ

 解説 誇り高くも野獣のように。風にはあなたがなるのです。

 効果 一人で戦う時、全能力が10倍になる

 

 

 あいも変わらずポエミーな名前と解説文とぶっ飛んだ効果だなあ。懐かしさすら感じるわ……ここから俺の、探査者ライフが始まったんだ。まだ三ヶ月かそこらだけど。

 で、これがどうしたってんだろう。

 

「無駄に詩的な表現ばかりが目立つからな。全能力が10倍、という文言の本質的なおかしさに気付かないのも仕方あるまい。精々、雑なブーストくらいにしか思っていなかったことだろう」

「いや、だから何が──」

「……公平ちゃん、ちょっとお待ちよ。言われてみればたしかに、おかしい」

「──マリーさん?」

 

 てんでさっぱりな俺をマリーさんが呼び止めた。その顔はどこか、強張っているように見える。

 彼女は震える声で、しかしみんなに聞こえるように呟く。

 

「全能力……どこから、どこまでだ? 何を、どこまで10倍にしている? あまりにおかしい、範囲が広すぎる」

「マリアベール、正解だ。そのスキルのバフ範囲は、それこそ山形公平に纏わるすべてに関わる。他のスキルの──補正値も含めてな」

「…………はぁ!?」

「そんな馬鹿な!」

「いくらなんでもそんなことが!?」

「?」

 

 俺とベナウィさん、香苗さんが唖然として叫んだ。リンちゃんは未だ、意味を理解していないのかキョトンとしている。かわいい。

 いや和んでる場合じゃない。全能力って、俺が持ってる他のスキルや称号効果にすら及んでるのかよ!

 

 たしかに一人で考える時とか、やたらと頭の回転が速くなってる自覚はあったけど……

 そういう思考能力とかにも影響があったのだとしたら、他のスキルとかにも効果が適用されていてもおかしくはない、のか?

 関口くんの《勇者》だって、他のスキルのバフ効果をさらにブーストしてたものな。

 

「《救いを求める魂よ、光と共に風は来た》の邪悪なる思念への特効効果。《誰もが安らげる世界のために》の、戦闘能力向上効果。そして、これらをブーストする……《風さえ吹かない荒野を行くよ》。すべてははじめから、邪悪なる思念を滅ぼすためだけに生まれたものだ」

「リーベ……お前も、このことは」

「当然知っていました。そのスキルは単なるデメリット付きバフスキルなどではありません。この戦いのためにシステムさんが一からデザインした、正真正銘、対邪悪なる思念用の奥の手スキルなんです」

 

 ゾッとする思いだった。

 システムさんは、リーベたちは、本当に邪悪なる思念に打ち克つことにのみ、すべてを注いでいる。

 この決戦に至るためにすべてを計算して、そして最終決戦に俺を至らせるためにすべてを用意した。そこに籠められている深い怒りと憎悪を、否応なしに感じざるを得ない。

 

「一人きりで戦わなければならない効果なのも、ここまで来るともう、余人の助力など逆に邪魔となるためだ。戦闘能力が10000倍になったアドミニストレータの戦闘になど、誰がついていけるものか」

「フルパワーで崩壊していく身体は都度、リーベの回復スキルで癒やします。ギリギリ、共闘にならないラインです……これだけやってようやく、勝ちの目が出てくるんです。公平さん」

 

 ヴァールとリーベの真剣な眼差しが、俺に伝えてくる。

 邪悪なる思念、滅ぶべしと。風さえ吹かない荒野、終わるべし、と。

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