攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
「早瀬会と同じようになったらどうする? ……なんて、そんなの考えるまでもないでしょう。その時に私らがそれを良しと思えるならそれで良し、思えないなら改善するなり解散するなりしてそれぞれ次のステージへ。以上!」
緩やかなクラン──気が向いた時に気が向いた塩梅だけ関わってくればいいような、そんな団体を夢見て行動せんとするおかし三人娘への、俺の質問は少し意地悪なものかもしれなかった。
けれど、いつかは必ず目の当たりにする問題でもあったのは事実だ。すなわちどこかで必ず、そうした方針よりもルールや規則をもって秩序を重んじなければならない日が来るということへの見解。
古くは早瀬光太郎さんもまた、思うところがありつつもそれを良しとするしかなかったデリケートな問題だ。
そのへん問いかけた俺に、ガムちゃんはしかしあっけらかんと答えた。それを良しとできる自分達ならそのままで良し、できない自分達ならばさっさとクランなど改善するか解散するかしてしまうのでそれはそれで良し、と。
いや、まあストレートかつ簡潔でいいけどそれはどうだろう?
そんな簡単に言ってのけるようなもんでもないのではと思う俺は、ついツッコミを入れる。
「えぇ……? ちょ、ちょっとなんていうか、それでいいの? えらく簡単に言ってのけるけども」
「そこまで含めての緩やかさなんですって、パイセン。クランのために私らがいるんじゃなくて、私らのためにクランがあるんです。その私らのためにならないようならそんなもん、変えるなり終わらせるなりしてさっさと次に行けば良いんです」
「な、なかなか傍若無人なことですね。さすがにそれは予想外な答えですが」
「スカウトした人らにも言いましたけどね、次のステージのために活かしてくれたって良いんですよ、なんなら!」
聞きようによっては、というか普通に無責任極まりない発言。しかしそれを胸を張って高らかに言うガムちゃんからは、言葉にし難い凄みというか信念を感じる。
望まぬ方向に進むくらいなら止めてしまえば良い。そして次のステージに向けて歩いていけば良い……その結果、それまでの積み上げたものを崩すことになっても構わない。
しかもそうした想いをすでに、スカウトした人達にも伝達済みという。つまり少なくとも創設メンバーは全員、そのくらいの気構えでいるガムちゃんを承知しているということだ。
さすがの香苗さんもこれには驚き、唖然としているね。けれどそれさえ受け止めて爽やかな笑顔で、ガムちゃんはなおも告げるのだった。
「誰かに決められた道を歩くわけじゃなく、私達が自分で道を作って行くんです。どうせなら楽しいことでも苦しいことでも、私は私の思うままに味わっていきたい。みんなにもそうしていってほしい」
「ガムちゃん……」
「覇道とは己の道を覇すること、覇王忍者とは覇道を究め極める者のことなんですから! そして私や私達の背中を見て、後に続く者達もまたそれぞれの覇道を極める! どこどこまでも己を信じて道を歩んでいく、そんなクランこそが私達の理想です!」
まっすぐな言葉に宿る想い、覇気。微かにでもそこに宿るはカリスマ性の萌芽。
新潟花夢……覇王忍者ガム。ここに来て、まさかの器を見せてきた幼気な少女に俺は内心、感心していた。
もちろん、彼女の言っていることは理想論だ。普通に探査者として社会に参画している以上、そしてクランを取りまとめる立場となる以上、そんな飽きたからやめますバイビー、なんて話はそうそう通るわけがない。
自由にやるからには責任も伴うのだ。必ず彼女もまた、覇王忍者として覇道を歩む弊害としてのそうした責任を突きつけられる時が来るだろう。
けれど。同時に思うのはたしかなまばゆさだ。
どんな未来が待っていても構わない、自分の道は自分で拓き自分で歩むという、まるで開拓者のような精神性。
口だけだと一蹴するにも、ガムちゃんからはわずかながら確実な説得力を感じさせる凄みが出ている……魂からの言葉には重みが宿る。彼女は期せずして、魂の力をほんのちょっぴりとだけ引き出していた。
「ガム……アメやチョコも、同意見なんだな?」
「はい! 覇道とか覇王とかはともかく、私達のことですから私達で決めて歩いて行きたいって想いは一つです!」
「始原様方からもエールを頂戴しております〜。やりたいようにやってみせる、それもまたヒトにとっての歩みの一つだ、と。もちろん私も同じです! 微力ながら、自分の力で進んでいきます〜!」
「……それならば、私としては良いかと思います。自分達の行動と結果、それに伴う自由と責任を、自分達なりに受け止められると言うのであれば」
三人揃って示す、まだ見ぬ未来への意志。それを前にして香苗さんも関口くんも、ひとまず温かな目で見守ろうと決めたみたいだ。
俺も、彼女達を応援したいと思えているよ。その在り方の賛否はきっとあるだろうけど、それでも前に進もうとする想いはそれそのものに価値があるから。
彼女らのクランが成功しても、失敗しても……きっとおかし三人娘の糧になる。
そうしてどこまでも己の道、すなわち覇道を突き進んでいくんだろう。それだけの心の強さがたしかにあると、俺は確信していた。
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