攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
ファミレスで美味しい食事をひとしきり食べ終えて少し。最後にチョコさんが並べられた料理をすべて平らげてから、俺達はみんなで軽くコーヒーを頼んでそれを飲んでから店を出た。
もうこの頃になると外はすっかり暗がりで、今から帰るとまあまあいい具合に夕食時だなって感じだ。
なお、ここに来る時の宣言どおり支払いはすべておかし三人娘がしてくれたよ。F級でも探査報酬はかなりのもので、三人で等分したうえでサクッと払ってくれたのだ。
これをもって今回の俺や香苗さん、関口くんの探査同行報酬ってわけだね。ご馳走様でした、大変おいしかったです。
「それじゃあみなさん、改めて本当に本日はありがとうございました! お疲れ様です!」
「関口くんばかりか先生に伝道師香苗さんにまでお越しいただき、とっても心強かったです〜!」
「次、また会う時にはクランのことも含めてもっと進化したおかし三人娘をお見せできるよう頑張りますよ。そうじゃなきゃ覇王忍者の名に恥じますしね」
「お疲れ様でした、三人とも。こちらこそ、とても有意義な探査に同行させてもらいました」
店を少し歩いて商店街近くの公園にてお開きの挨拶。改めて礼を述べてくるおかし三人娘に俺も香苗さんも関口くんも微笑み、こちらこそと返すばかりだ。
いや、本当に良い探査だった。多少なりとも力添えしている三人が、順調に成長していってる姿を見るのはなんだか甲斐ってものがあるからね。
関口くんや葵さんからの技を受け継ぎ、かつ始原概念達を扱う際のオリジナル技も磨き続けているチョコさん。
新たな精霊を召喚できるようになり、《武装化顕現》も併せて戦術にさらなる幅を持たせられるようになったアメさん。
そして各属性忍術を覚え、元々の指揮能力や斥候としてばかりかカリスマ性の発露さえ見せてくれた覇王忍者ガムちゃん。
それぞれがそれぞれの強みを、より伸ばしていって互いを補い合う素晴らしいトリオ。まさにパーティとして発展していっている姿には、見ているこちらが元気づけられ、負けていられないなと思わせてくれる力強さがある。
……本当に素晴らしい。俺は、努めて柔らかな声音で彼女らに告げることにした。
「ガムちゃん。チョコさんに、アメさんも。えーと、リーベとは今度、話し合うんだよねたしか。あいつのほうの用事と、クランのほうの話もまとめて」
「? ええ、まあ。それがどうかしたんですか、山形さん」
「…………いや、なんていうか。たぶんだけど相当、突拍子もない話を聞かされるかもしれないから。別に三人にとって害のある話では断じてないんですけどちょびーっと、つもりだけしといてもらえたらなーなんて。あはは」
「山形……?」
関口くんがこちらを見ている、怪訝そうにだ。いきなりなんの話? って感じなのは分かるよ。でもまあ、一応言っとこうかなってことで。
リーベとの話し合いを近日中に控えた彼女らは、そこでもしかしたら真実を知ることになるだろう。俺、いや私ことコマンドプロンプトのことやシステム領域のこと、この大ダンジョン時代の成り立ちや、ここに至るまでの諸々を。
アメさんはもう知ってるんだけどね。だけどそこに、チョコさんとガムちゃんも加わることになりかねないのだ……インターフェイサーの協力者となってくれるならば。
まーどう考えても突拍子もないというか、厨二の黒歴史みたいな冗談のような話を聞かされる羽目になるわけだからね。そのへん、実は機会があればちょっとワンクッション入れたいとは思ってたのよ。
それがこんなタイミングになるとは俺自身、思ってなかったので相変わらずノリで生きてるなあと自分でも苦笑いなんだけども。
香苗さんはなんのことだかすでに承知しているので静観、というには瞳が信仰心にギラついている気がするけどまあ見守ってくれている。
ただ関口くんからするもいきなりなんなんだってのはあるだろうからそこは申しわけない。
手早く終わらせるからちょっとだけごめんね、というわけで続けて彼女らへと話しかけていく。
「リーベは、あるいはシャーリヒッタもその場にいて、みなさんに選択をお願いすることになるかもしれません。その選択はどちらを選ぼうと、あなた達にとって損失になるようなことは絶対にないと俺からも先にお約束しておきます」
「は、はあ」
「だから、どうかあの子達の話を聞いてあげてもらえると嬉しいです。あーそれと、あの子達をクランにも誘ってやっていただければ。参加するかどうかは自由意志ですけど、選択肢そのものがあの子達にとって新鮮で、ありがたいことのはずですからね」
「先生……分かりました。よく考えて、私どももリーベ様達もお互いに自分達の意志でもって選択して決断したく思います」
おかし三人娘だけではない。リーベやシャーリヒッタにとっても、クランへのスカウトって話はとても素晴らしい経験になると信じている。
現世で知り合った人達との交流。その選択如何でどう転がるか分からない未知なる無限の未来を、精霊知能たるあの子達も肌感覚として受け取ることになるのだ。
どちらもどう転ぶか分からない。おかし三人娘がインターフェイサーに参加するかどうかも、精霊知能達がクランに参加するかどうかも。
なんならどちらでも構わないさ。大切なのは選択肢が提示されたこと、そして各々が自らの意思で選び決断する経験そのものだから。
それこそがかけがえのない価値そのものだと、俺は……私は信じたい。
事情をある程度知るアメさんが、こちらの思うところを多少受け取ってくれたようで力強い返事をくれる。チョコさんにガムちゃんもどこか戸惑いつつもうなずいてくれた。
これで俺からの話は以上だ。あとのことはそれこそお若い方々に任せるさ、ってね。
かくして俺達はこの日の探査を終わらせて解散した。
思わぬ出会いから一緒に探査をして、ファミレスで美味しいものを食べて。そして最後に言うべきことを言って。
なんだか充実した放課後を過ごした、そんな午後なのでした。
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