攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
「公平くん、すごい! ほとんどの教科で満点じゃないの!?」
「い、いやあハハハ……一応ケアレスミスとかもいくつかあるから」
日本史をはじめ、本日あったいくつかの授業を終えて、昼前。あとはホームルームを終えたら今日も半ドンだわーい! ってな頃合いにて。
さっきの授業でも返却された答案用紙が、100点だった俺ちゃんに対して梨沙さんがくれた言葉と笑顔がまぶしかった。
正直、俺としては赤点を回避できただけで御の字というか。それ以前にコマンドプロンプトとして言わせてもらうなら謙遜とか謙虚とかですらなく、これくらいできなきゃ逆にヤバいと言うべきか……なんだかこういう物言いも偉そうに思えてしまって複雑なんだけどね。
まあ、これでもいくつかケアレスミスがあって全教科満点とはいかなかったのは次の課題だろう。
コマンドプロンプトだろうがアドミニストレータだろうが、今ここにいるアバターたる俺は結局人間だもんで注意不足でミスだってあるってことだね。
しかしそれでも学年トップクラスってことで、先生側からはもちろん同学年内でもちょっぴり話題になっているみたいだ。
「山形くんすげえな、探査者の才能だけじゃなくて頭も良いのかよ」
「神様って不平等よねー……うう、クリスマスが、私のクリスマスが」
「あんたの赤点と補修確定は自業自得じゃないの。まあ、でも山形がすごいってのはたしかね」
「救世主様バンザイ……救世主様バンザイ……! 救世主様バンザイ。救世主様バンザイ! 救世主様バンザイ!!」
「……本当すごいわ、いろんな意味で。遠目から眺めてるぶんには飽きないかもね」
怖ぁ……クラスメイトのなかにも信者がいるぅ……しかもそんな信者さんもろとも俺のことを引き気味に見る別のクラスメイトもいて、もはや何がなんだかワケワカメである。
探査者としては前からずいぶん変な目立ち方してるわけだけど、今回のテストでいよいよ学生的にも若干おかしな目立ち方をしそうな感じが漂ってきたよ。
まあ、正直赤点への不安はあったものの、逆にあまりに高得点を取っちゃって変に目立つって懸念もなくはなかった。杞憂はあれど現実的に演算した時、まず確実に好成績を収められるだろうなってのも分かってはいたし。
そしてそうなった時、探査活動と併せていろいろ言われるんだろうなあって予感もしてはいたのだ。
そういうのを踏まえて、わざとミスして点数調整すればいいじゃないの? という向きも一瞬考えなくもなかったけどね。
それはさすがに、問題を用意してくれている学校側や真面目に勉強している他の学生さん達に対して不誠実だし憚られたよ。なんであれそこは最低限の礼儀だと思う俺ちゃんだ。
「いや実際、マジですげえな山形……えっ、一学期の中間や期末はここまでじゃなかったろ? 二学期から急に伸びすぎだろって」
「あー、まあそのあたりで香苗さんや宥さんに家庭教師してもらってたことがあったからね。アレがきっかけなところはあるよ、探査者だからって学業をおろそかにしてたらいけないなーって」
「なんか聞いたわね、前にそんなこと。今をときめくS級さんとインフルエンサーさんに挟まれて勉強ってすごいなって思ってたけど、それでここまで伸びるんだから改めて本当にすごいわ」
松田くんや木下さんからも賞賛を浴びるわけだけど、さすがに一学期の頃の成績を知る分、あまりに学力が急に伸びていることに気付いてはいるよね。
でもそのへんもバッチリ、アリバイと言うか無理のない言いわけはちゃんとあるのだ。そう、ちょうどその頃に香苗さんと宥さんからお勉強を習ったりしていたという事実を転用したのである。
それっていうのも宥さんをリッチから解放したあとあたりのことだ。当時の成績はまだまだ中の中から中の下くらいだった山形くんを見かねて、我が家の女王こと山形ママ様がわざわざお二人に家庭教師を頼むという暴挙に出たのだ。
当然山形くんは抵抗を試みるも、善意から家庭教師を志願してくるお二人を断ることなど到底できずそのまま、天国なんだか地獄なんだか分からないお勉強タイムをいくらか経験したのである。
その時の経験をきっかけに、俺は学業も必死にやるようになり結果として学年トップクラスになりました──と。
こんな筋書きを用意しているわけなのだ。我ながら良いカバーストーリーだと思うよ、違和感のなさにみんななるほどー! ってなってるからね。
「うう、なんなら私にも勉強教えてもらえないかなぁ? 赤点こそ免れたけど、ううう! テスト前だから外食控えてたせいで脳に栄養がいかなかったみたいだようううう!」
「遠野、俺で良ければ勉強教えるぞ? 山形ほどじゃないけど一応、全教科まんべんなく9割方は取れているんだ。きっと力になれる」
「っていうか別に、外食抜きでもめっちゃ食べてたよね真知子? 私何回も見たよ、帰りに駅前のコンビニでお弁当爆買いしてるところ」
「外食からしか摂取できない栄養があるのーっ! ……片岡くん、助けてーっ」
「怖ぁ……」
一方で遠野さん、テストの点数があまりよろしくなかったようで何やら泣きべそをかいている。
彼女もそこまで普段の成績が悪いわけじゃないんだけど、それだけ今回のテストが難しかったってことか。
片岡くんが助け舟を出す様は良い感じにニヤニヤできるけど、外食しなかったから脳に栄養が足りてなかったってのは純然たる見苦しき言いわけなのでやめてもろて。
まあ、この二人なら次のテストは二人三脚で勉強して、きっと良い点数を取って巻き返してくれるだろうね。
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