攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
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能力者犯罪捜査官のあれやこれやを聞きつつも歩くこと10分くらい。辿り着きましたよダンジョン聖教施設ってか教会。
白を基調とした西洋風の大きめの建築物で、小綺麗な感じを受けるのは清潔感を大切にしているってことなんだろう。
敷地内に入って玄関の前に立つ、もののそこから動きが止まる俺。あの、なんか流れで先頭になってるんだけどここで先陣切って入るのきつくない? 普段まるで関わりない施設なんですけど?
そもそも見知らぬ施設をいきなり訪ねてごめんくださーい、なんて仕事でもない限り躊躇するんですよね俺ちゃん。対応のため出てくる人としっかり会話できるか怪しいから怖いし、もし日程とか住所とか間違ってたらどうしようって杞憂もあるし。
なんならむしろそれこそ、初代聖女のエリスさんとか統括理事のヴァールさんとか特別理事のマリーさんとかが先頭に立つべきなのがカリスマさんの役目なんじゃないかと一般学生探査者くんは思うわけ。
数秒ながらそうした内心での葛藤と苦悩を経る。ここはやはり年長者に託すべきだな、うん!
「……よし! いけヴァール、すべては君に託された!」
「なんだいきなり? 何を託されたのだワタシは?」
「ハッハッハー、エリスさんには今の公平さんの逡巡と決断が痛いほど理解できちゃったよハッハッハー、分かるー」
「先輩、妙なところで公平ちゃんにシンパシーを感じ気味ですねえ……」
ということでおもむろにヴァール! きみにきめた! したは良いものの当たり前のように戸惑われてしまいました。ごめんねなんか。
でもエリスさんはさすが、本質的には俺同様に陰の者であるがゆえに今しがたの高度に繊細で硝子細工のような高校一年生男子生徒の内心を理解してくれたよ。
マリーさんがなんか気の抜けた様子で笑ってる。きっと分からないだろうなこの人には、どう考えても若い頃から陽キャ気質だったろうし。
ええい、とにかくヴァールに頼んじゃうもんね。後ろに並んでいた彼女の手を取り、肩を抱いて前に立たせる。
急なことで驚いたのか、軽く頬を染めて目を丸くする彼女だったけど、まああなたが言うならと一つうなずいてインターホンを鳴らしてくれた。助かる。
「ごめんなー、さすがに外様の俺が取り次ぐのおかしくない? って思っちゃってさ。今回会うことになるアーデルハイドさんは俺以外の三人ともが知り合いだろ? だったら誰かしらに任せたほうが良いかなって」
「そういうことか……こちらも配慮に欠けていたな。とはいえあなたとてシャルロットにとって恩人なのだから外様とは言うまい。もっと堂々としても良いとワタシは思うのだが」
「統括理事と特別理事と初代聖女を差し置いてパンピーが矢面で胸を張れって? ミュトスじゃないけど無理無理無理茶漬けだよ」
「何を言うやら救世主様が、伝道師なり他の使徒なりがいたらそれこそまた句読点が飛んだ異様な捲し立てで反論されてしまうぞ?」
「うっ。こ、怖ぁ……」
困った、容易に想像がついてしまう。なんなら同じく想像したのか言いだしたヴァールまで無表情ながら若干げんなりした空気を醸し出しているのがひどい。
今日は香苗さんはじめ主だった使徒の方々がお越しになられなくて良かった……アーデルハイドさんの知り合い中心に集まる会合ってのもあるし、一応でも他教の信者ってことになるからそのへん加味して控えてくださったのが功を奏した形だ。
救世主思想が絡まなけりゃ常識に沿った判断はできるんだよなあ、あの人達。こう言うとなんか、影響を及ぼしちゃった俺がまるで非常識なカルト宗教の親玉みたいになっちゃいそうで嫌だわマジで。
と、やり取りしているとドアが開いた。清潔感のある中年女性が一人、穏やかな様子で笑顔とともに姿を見せたのだ。
「おはようございます、チェーホワ統括理事と皆様方。よくお出でくださいました、すでに他の方々はお待ちですのでご案内します」
「おはようございます、ありがとうございます。本日はよろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします」
正直なんかこう、ダンジョン聖教の施設にいるって言うからにはなんだろ、法衣とかそういうの纒ってるのをイメージしてたんだけど普通の人が出てきたなあ。
でも思えば救世の光だってパッと見は信者の方々も普通だし、別に珍しい格好してなきゃいけないわけでもないのは当然のことではある。
ともあれ、すでにみなさんお揃いらしいので教会内に入る。ちょっとしたフロント? エントランス? があってそこから奥に進むとすぐ、いかにもな講堂が見えてきた。
やはり西洋的な、真ん中に通路があって左右に木のベンチが並べられている感じの空間。正面には意匠の凝った少女の銅像と、それを彩るオブジェが飾り立てられている。
ダンジョン聖教の、というか西洋の宗教的建築物って見る機会があんまりなかったけどこんな感じなんだなあ……
ほへー、と感心するも束の間。すぐにその銅像近くに屯する人達を俺は見た。揃って知り合いの人達だ。
「やあ、みなさんもお揃いで。特に公平殿とはしばらくぶりかな」
「ミス・チェーホワやミス・モリガナ、マリアベール様とは割とちょくちょく会ってますしねえ」
「サウダーデさん!それにベナウィさんも、お疲れさまです!」
S級探査者、熱き血潮のサウダーデ・風間さん。同じくS級でうっかりベナウィことベナウィ・コーデリアさん。
押しも押されぬ世界トップクラスの探査者がまたもや二人、揃ってここで俺達を待ってくださっていたのだ。
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