攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ナチュラルに視座が高い人

 歴代聖女さんが俺の近くにやってきて、いよいよアーデルハイドさんとの会談というか、話し合いの空気になってきた。

 なんでも先方はこないだの事件に絡み、いろいろ目立つ動きをした俺に興味があるゆえに今回、呼んだらしいんだけど……どうだろうね? お眼鏡に叶ったかな。

 

 何しろヴァールの存在や社会的立ち位置に違和感を覚えて苦手意識を持っているほどに鋭敏な方だ。俺の、いや私の魂が本質的には人間のものではないことに勘付いたとておかしくはない。

 その場合、俺もあえなくこの人からすると苦手なタイプになるんだろう。さて、どうかな。

 70代半ばらしいけど、見た感じもっと若々しく見えるお婆さん。アーデルハイドさんはやはりこちらに視線を向け、何やら唸っていた。

 

「ふーむ……ふむふむ。やっぱりなーんか違和感ありますね、この子」

「マルティナ、それは……統括理事に対するものと同じ、感覚であると捉えても良いのですか?」

「まあ概ねは、ですかね? ぶっちゃけ私ってば昔からソフィアさんもヴァールさんも超絶苦手で、今も薄っすら近付かないでほしいかなって思ってるんですけど」

「怖ぁ……」

「……ですけど。彼に対してはそこまでではないんですよね、まだ。でも将来的にはあの二人よりずーっと苦手に思いそうな気もします。たとえば大人になって、何かしら権威ある立場として世を動かすようになったとしたら、ですけど」

 

 やはり愛嬌のある仕草と声色だけど、放つ言葉はまあお強い。統括理事たるヴァールを目の前にしてそこまで言えるのなんて、この人以外に何人いるかって話だよ。

 そして、俺に対する所感もまたみごとなものだ。間違いなく違和感を覚えていて、けれどまだ先の二人ほどには苦手意識を抱くところまでいってないと来たか。

 

 なんとなし見えてきた、アーデルハイドさんのスタンス、思想。先程のヴァールとのやり取りが顕著だったけどこの人たぶん──人間の枠を超えた存在が人の世を動かす立ち位置にいることを、心底から赦せない質なんだな。

 理屈とか抜きにした本能、それこそ魂レベルで嫌悪感を抱く気性だと見た。

 

 だから人間だけど不老であるソフィアさんや、そもそも精霊知能であるヴァールが統括理事として100年近く君臨してきたことが赦せないんだ。

 そして俺についても、厳密には3割くらい人間やめてる以上は将来、そうした権威的な立場に就くことを危惧しているんだろうね。

 確認がてら、俺のほうから彼女に話しかけていく。

 

「なるほど。アーデルハイドさんは、人間の世はあくまで人間が動かすべきだと考え、いえ、感じていらっしゃるんですね。理屈はともかく、どうしてもそれは譲れないと」

「あくまで個人的な感覚ですから、人に押し付ける気は毛頭ありませんけれどね。統括理事についても、その業績や足跡そのものは間違いなく偉大だと思っていますし何がなんでもとは言いません。ただやっぱり、良いことも悪いことも世のことすべて、みんなの手でやっていくべきとは思いますよ、私は」

「……アーデルハイドのそうした考えは、前から薄々察してはいた。先ほども軽く述べたが、基本的にはワタシとて同感だ。これまではそれでもなお、成すべき使命があったゆえに統括理事などと務めていたが、な」

「そんでもって今も公平ちゃんからヴァールさんと似たような印象を受けて苦手になりそうってかい。ったく変に鼻が利くのも考えもんだねえ」

 

 やはり、アーデルハイドさん的には人間こそが人の世を動かしていくべきだと考えているみたいだ。それは裏を返せば"永遠の探査者少女"の否定であるし、もっと言うと俺のようなモノが政治家になったりするのも忌避感があるんだと思う。

 当のヴァールもうなずくように、それは極めて健全かつフェアな価値観だろう。そも、仕方ないとは言え100年もの間たった一人の統括理事がすべてを牽引してきた時代なんておかしくないわけがないからね。

 

 そのへん、それがすっかり当たり前の常識になっているから誰もが受け入れているだけで、本来あるべき世界の姿とは明確に異なっているのは疑う余地がない。

 とはいえこんな見方もやはり、システム側や概念存在側といった、人外からの視点なわけで……人の身で、しかも若い頃からそんな感性を持ち合わせていたこの人は、たしかにマリーさんの言うように鼻が利きすぎているとも言えちゃうんだろう。

 

 言うなればそう、ナチュラルに視座がね。上位存在寄りなんだろうね、マルティナ・アーデルハイドという人は。

 生まれつきなのか生育過程での後天的要素なのか、はたまた聖女として活動するなかで培われたものなのかは分からないけど。勘の良さも含め、どちらかと言うと"こちら寄り"な価値観を有する人なんだと今、確信できたよ。

 

「あー、なんか45年前だか35年前だかにも言ってましたね。もしかしてその、成すべき使命とやらが終わったから今回の引退宣言なんですか?」

「そういうことになる。それこそこちらの山形公平が、ワタシの使命を遂行させてくれたのだ。もっと言えば、マリアベールやベナウィもそこに関与しているぞ」

「良い機会だしアンタも聞いといて良いかもね、アーデルハイド。元より聖女経験者には話しとくつもりだったんだろ、シャルロットちゃんもさ」

「はい。今回はそのこともあり絶好の機会と判断しています。三代目様にもぜひ、我らダンジョン聖教の新たな、そして極めて核心的な真実をお教えするつもりです」

「それは良い。アーデルハイドさんも今のままではなかなか、統括理事のことにも公平殿のことにも心底から腹落ちはしないだろうからな」

 

 そんでもって話の流れでアーデルハイドさんにもいろいろ、世界の真実とかについて明かそうか的な感じになってるね。

 元々、この場にいる面々はすでに存知のとおりだし、聖女経験者には話しておくとかって前にシャルロットさんも言ってたしね、今回俺がアーデルハイドさんにお呼ばれしたのも良い機会と言えるだろう。

 

 マリーさんやサウダーデさんも賛同を示し、一同そしてアーデルハイドさんを見る。

 何を聞かされるのかとワクワクした様子の彼女へと、そして俺達はあれやこれやと話し始めた。




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