攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

2155 / 2155
好きでも苦手、嫌いでも得意。そういうのってあるよね

 世界の真実まで含めた様々な事柄を、アーデルハイドさんと共有してやり取りできた。気づけば割ともう夕暮れ時で、そろそろ帰らないとお夕飯に間に合わなくなっちゃう頃合いだ。

 そりが合わない、と断言されたもののやはり物腰は穏やかで友好的なアーデルハイドさんとはしばらくお話させてもらっていたけど、そろそろお暇しなくっちゃね。

 

「すみませんが、そろそろ家に帰らないと夕食に間に合わなくて……今日はこのへんで失礼しますね、アーデルハイドさん」

「ああ、そういえばすっかり日も暮れつつありますね。なんだかんだと話し込んじゃいました、こちらこそ気遣いできずにごめんなさい」

「…………といいますか三代目様、ものすごく山形さんと話していましたね。その、こういう言い方は双方に失礼かも知れないのですが、少なくとも御身は苦手意識を抱いておられるはずでは?」

「ハッハッハー、とてもじゃないけどそりが合わない相手とは思えないくらい話し合ってたねー」

 

 失礼のないように挨拶すれば、微笑みをもって応えてくださるアーデルハイドさん。その表情、仕草言動からは、とてもじゃないけど俺やヴァールに対する苦手意識など感じさせないものだ。

 思わずシャルロットさんとエリスさんが聞いてくるくらい、この人は自分の心情とか感覚を隠しきっていたんだ。

 

 これはヴァールも長年関わっていてなお、薄々しか悟れないはずだよ。ものすごい対人スキルに恐れ入る心地だ。

 当たり前だけど人生、生きてて苦手な人とやり取りすることなんてしょっちゅうある。俺だって春先の関口くんとか苦手だし、他にも合う合わないで言うと合わないだろうなーって気質の方は多少はいるよ。

 

 そういう相手に対してまで、なるべく苦手だと気づかれないようにしつつも距離を保って友好的に接することができるのは、シンプルにコミュ力高いんだよね。

 そのへんの態度の極意とかコツとか聞けるのかなと俺も耳を傾けていると、アーデルハイドさんはあっけらかんと豪快に笑ってみせていた。

 

「あはははははは! そりゃあ苦手ですけどシャルロット、それと好き嫌いは別ですよ人間というものは。私はたしかに山形さんのこともヴァールさん同様苦手ですけど、それはそれとして人としては好感に値する素敵な方だと思っています」

「え……え、と。苦手というのは、嫌いというのとほぼ同義なのではないかと思うのですが」

「ノンノン。好きだけど苦手、嫌いだけど得意、そんな事柄はいくらでもあるものですよ? 対人関係にかかわらず私達は、自身の好き嫌いや得手不得手さえまともに制御できないものなんですから」

「昔から自分の気の赴くままに動いてきた、あなたが言うと説得力が違うわね、マルティナ?」

 

 神谷さんのからかうような、親しげな色合いの言葉にも楽しげに笑う。アーデルハイドさんの言葉は明るく元気でシンプルだけど、裏腹にどこか深い人生訓のようなものが潜んでいるように聞こえた。

 混同しがちではあるけど、たしかに別だな……人間関係だけじゃなし、好んでいるけど不得意なこと、厭うているけど得意なことってのは俺にも思い当たるところはある。

 

 今のところ、彼女が俺に抱く感覚もそうなんだろう。コマンドプロンプトであり人間を3割逸脱してる点については苦手だけれど、それはそれとして山形公平個人に対しては好感を抱く、と。そう感じてくださっているんだね。

 ぶっちゃけヴァール並に嫌悪されるまで予想してたからありがたい話だ。一面のみを見て決めるわけでない、視野の広さとどこかフェアネスな優しさがアーデルハイドさんの一番のすごいところだね。

 

「んー、まあ分かるよエリスさんも。そういうのに振り回された人も、いくらか見たことがあるし」

「シャルロットちゃんもこれから先、生きていけば嫌でも分かるだろうねえ。ファファファ! なあに要は自分に素直になることさね。好きでも嫌いでも、とにかくそこが肝心要さ」

「あはは、年の功! ……ま、そういうことですよシャルロット。感情なんてどうしたって裏表あるものなんですから、大事なのはそんな自分をどう解釈するかです。あなたはまだ幼いんですし、ゆっくりと考えていけば良いですよ。自分なりに、自分だけの感覚でね」

「は、はあ。ありがたいお話、どうも」

 

 エリスさん、マリーさんと人生経験豊富なお二人が続けて語れば、シャルロットさんもピンと来ないながらもなるほどとうなずく。

 こればかりは生きてみないと分からないことなんだろう。かく言う俺も、まだまだこれから人生は長いからね。

 

 少しずつでも生きていくなかで、いろんな経験を積めていけたらいい。良いことでも悪いことでも、様々な物事を体験していければいい。

 そのなかで感じたすべてが、また新しい自分を見つけることにつながる。その繰り返しで誰もがみんな、ちょっとずつ前に進んできたんだろうね。

 

「山形さんもですけど、無理しない程度にやっていってくださいね。楽しくても楽しくなくても、やってるうちにそのうち見えてくるものはありますから」

「ありがとうございます、アーデルハイドさん」

「どういたしまして。あはははははは、ヴァールさんよりはやっぱり大分、人間的ですねあなたは。変に人の世を引っ張るとかしださなければ、苦手であっても好きにはなれそうです」

「救世の光……いや、アレは厳密には伝道師と使徒が暴走しているだけだからカウントするのも不憫か……」

「そこには触れないでくれ、ヴァール……ややこしくなるから……」

 

 素敵なアドバイスをいただき、距離感はあれどそれなりに丸く収まろうってところに、ヴァール!

 君と来たらすぐに救世主なんちゃらなんて持ち出すんだ!

 

 幼気な肩を叩いて、ヴァールを静かに穏やかに諌める。二人して例のカルトを思い浮かべて微妙な顔をしていると、それが面白かったのか周囲の人達はみんな柔らかく声を上げて笑うのだった。

 いや当事者からすると怖ぁ……なんですけどもね!?




【ファンボックスやってますー】
https://tentacle-claw.fanbox.cc/
限定スピンオフ「日々是好日、大ダンジョン時代」と無料で設定とか裏話とか見れますー
ソフィア、ヴァールとエリスのほのぼのライフですー(*´ω`*)

「大ダンジョン時代クロニクル」
https://syosetu.org/novel/362785/
第三部・第三次モンスターハザード前編─黄金の胎動─
連載始めました!
よろしくお願いしますー

「大ダンジョン時代ヒストリア」完結!
https://syosetu.org/novel/333780/
よろしくお願いいたしますー

「攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」コミカライズ発売中!
ぜひともみなさまお求めよろしくお願いしますー!

コミカライズ版スキルがポエミーも好評配信中!
下記URLからご覧いただけますのでよろしくお願いします!
 pash-up!様
 ( https://comicpash.jp/series/d2669e2447a32 )
 はじめ、pixivコミック様、ニコニコ漫画様にて閲覧いただけますー!
 
 加えて書籍版1巻、2巻も好評発売中です!
 ( https://pashbooks.jp/tax_series/poemy/ )
 よろしくお願いしますー!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

芸術的で文化的な異世界生活を目指して(作者:生しょうゆ)(オリジナルファンタジー/日常)

異世界に転生したからといって冒険する必要はない。▼転生者ジョット・ブレイクはそう考える。別に自分は戦いたくもないし苦労したくもない。好きな時間に起きてオペラなり博物館なりを見に行く生活が理想である。その横にこの世で最も美しい少女を侍らせれば、そこは地上の楽園だろう。▼しかし現実は厳しいのだ。魔術の才能があったばかりに帝国学院に通わされるし、絵画や彫刻を手に入…


総合評価:28203/評価:8.96/連載:81話/更新日時:2026年08月22日(土) 18:37 小説情報

現代ダンジョン発生初日。世界がパニックになる中、俺だけが攻略wikiの知識で最強ビルドを試している~将来のSSS級探索者? ああ、全員俺の弟子です~(作者:パラレル・ゲーマー)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

ある日の朝、世界各地に「ダンジョンゲート」が出現した。 自衛隊が出動し、人々がパニックに逃げ惑う中、35歳の社畜サラリーマン・八代匠(やしろ たくみ)だけは、震える手で歓喜していた。▼「間違いない。ここは、俺が死ぬほどやり込んだ神ゲー『ダンジョン・フロンティア』の世界だ!」▼初期の混乱期(黎明期)こそが最大のチャンスだと知る彼は、すぐさま会社を辞め、脳内の「…


総合評価:6346/評価:7.66/連載:149話/更新日時:2026年04月05日(日) 22:42 小説情報

全員覚悟ガンギマリなエロゲーの邪教徒モブに転生してしまった件(作者:へぶん99)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

 正教徒vs邪教徒で争ってるファンタジーなエロゲーの邪教徒モブ側に転生したらしい。▼ ただし、戦いに勝つためならガチで何でもやってくるガンギマリな奴らしかいない模様。▼ 俺の人生終わってるかもしれねぇ。▼*2026年1月20日より書籍版第四巻発売中!▼*2026年7月5日よりチャンピオンクロス様にてコミカライズ版配信中です!毎月第一日曜日更新となります!


総合評価:27104/評価:8.55/連載:139話/更新日時:2026年08月27日(木) 21:02 小説情報

【完結】俺は死んだはずだよな? (作者:破れ綴じ)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

「なのになんで生きてる? しかも全く違う体で?」▼ *▼ 処刑された盗賊崩れの男アシェルが、何故か全く知らない肉体・全く知らない場所で目覚めて、何とか生き延びるために奮闘するお話です。その過程で色んな人の脳を焼いたり、因縁を作っていったり、修羅場に巻き込まれたりします。▼ 全10章100話完結+おまけ20話+設定です。


総合評価:10305/評価:9.09/完結:121話/更新日時:2026年06月24日(水) 12:15 小説情報

全滅エンドを死に物狂いで回避した。パーティが病んだ。(作者:雨糸雀)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

 ――だからさ、別に片目片足くらいどうってことないって。俺は平気だから。大丈夫だって見捨てないから。償いとかそういうのもいいから。すべて捧げるとか言われても困るから。重い。重いってば!!▼■カクヨム様とマルチ投稿▼■11/26 コミカライズ連載開始▼■11/29 書籍3巻発売


総合評価:65302/評価:9.14/連載:63話/更新日時:2026年07月08日(水) 07:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>