攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
結局、アーデルハイドさんとの面会もそこそこに終わって恙無く解散という形になった。
初めてお会いして初めて会話したわけだけど、なんというかこれまでにないタイプの方で新鮮な刺激をもらえた気がしたよ。
現地で解散したわけだけど、マリーさんやサウダーデさん、ベナウィさんはアーデルハイドさんや神谷さん、エリスさんとともに最寄りの居酒屋目掛けて直行していった。ある程度予想はしていたけどやはり呑みに行くらしい。
マリーさんの若い頃の酒絡みでの行状を知っているからか、一瞬アーデルハイドさんの顔が盛大に引きつっていたのが印象的だったなあ。まあ、今はさすがに相当セーブして呑んでるから安心してほしいね。
で、一方で帰路に着くのが俺、ヴァール、シャルロットさんだ。俺はもちろん自宅へ直帰、他三人は同じホテルに滞在してるとのことで、途中の駅まではご一緒する形になる。
そしたら道中、シャルロットさんがいきなり謝ってきたからこれまた驚きだよ。
「山形さん、統括理事……三代目様が失礼なことをいろいろ言ってしまいすみませんでした」
「え? あ、いえお気になさらず、ホントお気になさらず。そんな頭なんて下げなくても、シャルロットさん御自身のことですらないのに」
「そうだぞ、シャルロット。ワタシも山形公平も本当にアーデルハイドの発言に思うところはないのだ。それにダンジョン聖教を担う立場とはいえ、君がそんなことまで背負う必要はない」
「しかし……いえ、ありがとうございます。お二人の寛大さに感謝いたします」
どうやらアーデルハイドさんの発言が、彼女からするとずいぶん肝を冷やす程度には危なっかしいものだったみたいだ。
まあ、それなりにザックリ斬り込んできたところはあるからそう思っても仕方はないか。
だけど俺もヴァールも何一つ気にしていないし、あの人に対して何か嫌な気分になったとかもない。
あそこまで自分の軸をしっかり持ち、自分なりの信念や思想信条からこちらを苦手と言うならばそれは尊重されるべきだと思うほどだ。
そもそも、それを踏まえてなお公人としてはこちらに敬意を持って接してくださっていたのがあの人だ。そのスタンスを立派に思い尊敬こそすれど、どうして嫌うものか。
……今や弱冠14歳でダンジョン聖教を担う者として、七代目聖女としてシャルロットさんが気にするのももちろん分かるけどね。
心配することはないと、言い聞かせるように彼女へと告げる。
「今日は俺にとっても素晴らしい出会いでした。何よりシャルロットさんに、神谷さんと並んであんなふうに傍にいてくれる人がいてくれるのがとても嬉しかったんです」
「山形さん」
「ヴァールの言うように、あなた一人でぜんぶ背負うことはありません。というかできませんよそんなこと、やったら潰れちゃいますし。頼れる人、近くにいる人に頼って良いんです」
「もちろん我々も、君が頼ってくれるならば可能な限り力になる。もうあと数年もすれば、ワタシやソフィア、エリスなどはこの近辺でのんびりしているだろうからな」
「引退……統括理事はもちろん、初代様も能力者犯罪捜査官を辞されるのですよね。以前、葵さんから聞きました」
うなずくヴァール。シャルロットさんの言うようにソフィアさんやこの子のみならず、エリスさんまでもが能力者犯罪捜査官を引退するらしくて驚かされたのは、俺にとっても記憶に新しいものだ。
先んじて弟子の葵さんともコンビを解消したからね……葵さんのほうはアンジェさん、ランレイさんとトリオを組んで今後活動するらしいけど、エリスさんはエリスさんでまた別のポジションに着くんだとか。
同じく引退に向けて動いている、WSO統括理事の護衛。なんならお互いに引退した後も、一緒に俺の家の近くに住み着くとのことだ。
ヴァールはしみじみと、暮れてきた空を見上げて感慨深げに語る。
「こんな日が来るとは、な。統括理事を引退することは邪悪なる思念を撃退した時点で、いいやソフィアとワタシがWSOを立ち上げた時から当然織り込み済みだったが……そこにエリスまでもがいてくれる。しかも、そこから先の暮らしにも付き合うというのだから」
「ビックリだよなあ。エリスさんが引退するってのもだけど、お前と合流して今後活動をともにしていくってのもさ」
「ダンジョン聖教としましては、聖都モリガニアにこそお住みいただきたい気持ちはありますが……さすがにそれは高望みというものでしょうね」
「さすがに勘弁してやってくれ、それは。モリガニアは今となっては一大宗教都市だが、元はエリスの故郷、かつては小さくとも温かで長閑な村だったのだ。何かにつけ過去を想起させられては、あの子の心に悪い」
「それは、そうだろうなあ……」
難しい話だ。そもそも自分の生まれ故郷がいつの間にやら、自分を神輿にした宗教の一大都市になっているシチュエーションがまず意味不明だし。
もはや面影一つないんじゃ、仮にふるさとに戻ったって昔年と比較してしまって苦しくなることもあり得るだろうしなあ。
……ないとは思うけど、将来俺の今いるこの町が救世の光の都市とかって扱われだしたらどうしよう。
そんなことも考えちゃって、なおのことエリスさんの複雑な立場が我がことのように思える俺ちゃんであった。
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