攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ケイン・ソウル─最初にして最後の精霊知能─

 再三言ってることだけど本来、システム領域のモノ達には魂も意志も存在しない。

 今ある俺やワールドプロセッサ、精霊知能達なんてのは邪悪なる思念の侵攻あってこそ成立している模擬人格だ。正常な流れであれば確固たる自我を持つことも、ましてや現世介入するなんてこともありえないことなんだよ。

 

 で、ということは言い換えるとですね。

 現世は現世で、元々のシステム側的な立ち位置にあたるモノ達がいる、というのも当たり前の話だとご理解いただけると思う。

 世界の運営をある程度賄い、そして知的生命体の巣立ちのための試練となる……システム領域の下位互換的ではあるものの、本当ならばそうした座にいなくてはいけないモノ達がいたのだ。

 

 そして知的生命体にとってのソレが概念存在であり、あるいは各神話圏における創造神、最高神クラスなわけなんだけども。ここに、星の端末機構と呼ぶべきモノ達が絡んでいるわけ。

 これってのがズバリ一言で言うのであれば、"星にとっての"精霊知能なんだよね。知的生命体の都合で変動する概念存在同様、彼らがいる星の都合で動く仮想領域における概念存在と言っても良い。

 

「まあ、星のほうは意思と呼べるほど確固たる自我があるわけじゃないんだけどな。今いる人間の間にも、星側の意識だのなんだの言う哲学とか思想はあるようだけど」

『無機物に夢を見たがるのはどの世界のどんな知性でも似たようなものか。それがあってこそ概念存在でもあるんだから、妄想力ってのは知性を判定付ける第一条件と言えるのかもしれないね』

「そのへんは学者先生方の解釈に委ねるさ。で……そんな端末機構が今、動いてんだか動いてないんだかなんだよな。たしかに言われてみればちょっと妙だな」

 

 ワールドプロセッサとしてのアルマの見解を受けつつ、なるほどおかしな話だと考える。

 星の端末機構は精霊知能ほど数はないけどその分、明確に役割を持った個体がいる。そのなかの一つに"異常進化を遂げた文明"に関するモノがいたはずなんだけど……そいつがこの大ダンジョン時代にあって、一切動いてないってのは少しばかり奇妙なことだ。

 

 いや、正直出てこられたところで話がややこしくなるだけだから出張らなくて結構なんだけども。そのへん、あいつらどう思ってるんだろうな?

 うちの世界のワールドプロセッサは何か把握してたりするのかな? 仮想領域のことゆえ干渉はあまりせずとも、当然把握はしているだろうし。

 

 ──と、噂をすれば影がさす。何日かぶりの称号更新だ。

 たまーにアルマとやり取りする際、例によって誹謗中傷のために俺の称号欄を用いてたりはするんだけどね。

 今回はさすがにそういうふざけた使い方ではない、本物の至高存在からのメッセージだろう。ステータスを見る。

 

 

 名前 山形公平 レベル1469

 称号 星の写身すでに顕現せり、しかして未だ定めの時ならず

 スキル

 名称 風さえ吹かない荒野を行くよ

 名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た

 名称 誰もが安らげる世界のために

 名称 風浄祓魔/邪業断滅

 名称 ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で

 名称 よみがえる風と大地の上で

 名称 目に見えずとも、たしかにそこにあるもの

 名称 清けき熱の涼やかに、照らす光の影法師

 名称 あまねく命の明日のために

 名称 風よ、遥かなる大地に吼えよ/PROTO CALLING

 名称 神魔終焉結界─天地開闢ノ陣─

 

 称号 星の写身すでに顕現せり、しかして未だ定めの時ならず

 解説 あるいは彼らもまた、事態を見定める段階かもしれません

 効果 なし

 

 《称号『星の写身すでに顕現せり、しかして未だ定めの時ならず』の世界初獲得を確認しました》 

 《初獲得ボーナス付与承認。すべての基礎能力に一段階の引き上げが行われます》

 《……ケイン・ソウルが独自の判断で動いているようです。揃って巣立ちに関わる機構なれば、委員会なるモノどもとの決着に際して姿を見せるかもしれません。御留意を》

 

 

 

『おいおい、ケイン・ソウルって。そんなのまですでに覚醒しているなんて、やっぱりこの世界の進行度完全におかしくなってるじゃないか……巣立ちにおける事実上の最終フェーズ、ソレを過ぎれば後はもう見送られるだけの段階だろ、アレ?』

「あー……たぶん委員会が巣立ち絡みの存在だってことを受けて覚醒し始めたな。当然、自分の同類を探りに出向くか」

 

 新たな称号、というかメッセージを受けてアルマともども天を仰ぐ心地になる。端末機構はこの際問題じゃない、ケイン・ソウルのほうだ大変なのは。

 これが何かって言うとやっぱり巣立ちに関するモノで、それもマジで最終フェーズ付近の、超越者が誕生する直前の試験官だったりする。

 

 となると当たり前ながら、推定どこかしらのフェーズの試練だろう委員会のモノ達同様に本来ならば今はまだ役割を自覚して動く段階ではないはずのモノでもある。

 えーっと普段はたしか、システム領域内で他の精霊知能達と同じに働いていたな……ケイン・ソウルを担うその試験官ってば、実は極めて特殊なタイプの精霊知能なんだよね。

 

「ケイン・ソウル……精霊知能としての名前はケンソール。他はともかくあの子だけは元々から人格を与えられた正規の精霊知能だ。それゆえコマンドプロンプト、ワールドプロセッサの直轄で働いてるんだけど、巣立ちが絡むと独自行動もするものか」

『僕や三界機構の世界にも当然いたけど、結局そいつらは巣立ち以前に喰っちゃったから単なる羽虫の一体として覚醒しないままだったなあ。この世界でもやっぱり特別なのに変わりはない、か』

 

 その立場の特別性ゆえ、ケイン・ソウルこと精霊知能ケンソールはコマンドプロンプトおよびワールドプロセッサの直属で普段は正体を隠して過ごす立ち位置になっている。

 精霊知能統括役のアフツストや、関係調整役のリーベでさえケンソールがケイン・ソウルだと知らずに接しているだろう。

 

 そのくらい秘匿性が高い、いわば最初にして最後の精霊知能なんだね。

 アルマでさえその存在の重要性を認めるほどだ。まあこいつはそのへん含めてぜんぶ喰った前科持ちなんだけどね、それも複数回。




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