攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
ずるずるとインスタントラーメンの、麺と汁を食べながら脳内のアルマと語り合う、精霊知能ケンソール──その真の姿、巣立ちにおける終盤の試験官ケイン・ソウル。
委員会同様、そもそも現時点で覚醒して活動し始めているなんてあってはならない存在なんだが、ワールドプロセッサが言うにはどうも独自に行動しているらしい。
んー、微妙だな。問題になりそうでなんだかんだならなさそうな、絶妙にグレーなところをひた走られている。
あの子が覚醒した理由は間違いなく委員会がトリガーだろう。厳密にはアドラメレクの取り調べから、彼らが巣立ちの試練である可能性を示唆されたことを受けての連鎖覚醒ってところかな。
連動してるわけじゃないにしろ、勘違いで起きちゃっても仕方ない程度には規模の大きいエラーだしな。この調子だと他の試練も目覚め始めていてもおかしくないし、なんならもうすでに動いているかもしれない。
覚醒前のケンソールはともかく、覚醒したケイン・ソウルはスタンドアロンだ。精霊知能の情報共有とは別口に独立しているため、知るべきでないところまで他の精霊知能に知られるようなことはないから、そこは不幸中の幸いってところか。
……まあそもそも、だとしても彼らが表立って何かできることもないんだけれどね。
そういう意味では、どこまでいっても外野ではあるか。
「委員会と巣立ちに絡んで起きたんなら、彼らの行動原理は基本的に"エラーの確認と分析、修正についての検討"が主になるはずだ。ただ、その過程でどうしても委員会の正体に踏み込むことになるわけで、その瞬間彼らも現世介入の余地を失う」
『例外処理に例外処理が重なった末の、意味不明極まる挙動だね。何が起きてるか、何をすれば解決できるかを調べるために覚醒したのに、その詳細とリスクに気付いた時点で自力での解決も介入も干渉も不可能になると来た。精々が君や羽虫どもに接触するくらいが関の山だろ』
「たぶんケンソールもそのつもりで動いてるとは思うよ。システム領域内でもある種、独立しているとはいえそれでも精霊知能だからな。ワールドプロセッサとコマンドプロンプトに対して利のない行動は取らない」
『それを承知で、君んところのワールドプロセッサもあえて見逃してるみたいだね? ははは、いよいよ状況の混沌とした様子が見えてきたねえ』
楽しげに笑うアルマだけれど、こちらとしてはあんまり笑えないのが実情だ。委員会だけでも大概なものを、何を連鎖して動き出してるんだか。フライングにもほどがあるだろうに。
とはいえ結局、すべてのトリガーは大ダンジョン時代到来による現世地球文明の異常進化に端を発するため、元を糺すとシステム領域になるためとやかく言いづらいのが本音だ。
幸い、今しがた話したとおりケイン・ソウルだろうが他の何がしかだろうが、現世外の存在である以上迂闊にことの真相を辿ればその時点で身動きできなくなるのは変わらない。
独自に調査に乗り出しているらしいケンソールも、そのへん込みでそれでも調べているんだろう……どこかのタイミングで俺達に接触して、問題ない範囲での情報を渡してくることはすでに演算できている。
「それがいつ頃になるかは知らんけど、委員会との決戦はそれがトリガーになると見ていいかもな、と──はふう、ごちそうさまでした! 久しぶりのインスタントラーメン、美味かったなあ」
『んー、美味かった! なかなか興味深い話も聞けたし僕もまあそこそこ満足だよ。でも分かってるよな、本番は晩の焼肉だぞ。寝ぼけて早起きした木偶の坊どものことなんかどうでもいいから、しっかりコンディション整えて行くんだぞ!』
「別に、向こうも起きたくて起きたわけじゃないだろうに……まあ今のところは気にすることでなし、焼肉が優先なのはそれはそうだが」
一言で"寝ぼけた早起きさん"と切って捨てるアルマは相変わらずだ。正直うなずけなくもないところが、そもそもすべての元凶たるお前に言えたことかって話なんだけどね。
今、すぐにどうこうなる話じゃないから放置して焼肉に専念したほうがなんぼかマシってのは正論だ。ケンソールの立場と動き方を考えるに、どうせそのうち向こうから何かしら報告しに来るだろうし。
そしてその時こそがおそらくは、委員会との決戦の合図と見ていいだろう。
向こうに触発されてケイン・ソウルが覚醒したのと同じに、あの子に気取られることで委員会もいよいよ動くことになるだろうしな。
せめて冬休みの間は勘弁してほしいなあ。ていうかここに至るまで忙しすぎたし、ちょっと1年くらい大人しくしといてほしいなあ、などと考えつつも食後の片付けや歯磨きやらをこなす。
ここからは気持ちを切り替えてまたぞろお家を出るよ。今度は焼肉店の近くにある商業施設にみんなで集まって、時間になるまで遊び倒すんだ。
「ケンソールについては一旦保留だな。よし、切り替え切り替え」
『……とかなんとか言ってたら、なんとケイン・ソウルだけじゃなくてソラのトバリやらセブンスヘブンやらまで起き出してきてさあ大変、みたいなことにならないかなあ。ここまでめちゃくちゃならもういっそ、そのくらいになったほうが見てる側としては楽しいんだけどね』
「お前もう黙って焼肉を心待ちにしてろバーカ!!」
完全に他人事なんだこいつ、最悪なんだこいつ!
もはやエンターテイメントか何かくらいにしか、委員会絡みのてんやわんやを見ていない脳内のバカを叱責する。
こんなやつは放っておいてもういいよ、遊びに行っちゃうもんね! と、とりあえず俺は冬休みに突入した浮かれ気分を楽しみつつ再び外へと出向いたのであった。
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